オシャレとは我慢すること
「苦しい…苦しい…!!ギブギブギブアップ!!!」
「ギブアップとはなんですかアリス様?」
「あたしもよくわからないけどとりあえず苦しいらしいよアイドルさんは。あっ、少し我慢してね!」
そうマリアは笑顔で言うと私に巻かれているベルトを思いきり絞めた。
それにより「うっ!」と内臓が今にも飛び出しそうな声を私は思わず上げてしまう。
「ははっ!アイドルさんもそんな声出すんだね!!」
「あいにく私の人間だもんで…!」
「はい、ほらできたよ!」
黒い布を取り除かれた鏡の前には普段お城のいる時の服装でもアイドルとして民衆の前に立っている衣装とも違う純白のドレスを着た私がそこにいた。
私も頑張ればこんなに綺麗になれるんだと一瞬自分自身を惚れ惚れしてしまいそうになったけどそれはそれ、これはこれである。
「どう、綺麗になったでしょ?」
「お綺麗ですよアリス様。」
「はいはい、立派なお世辞ありがとね。」
「まだ気にしてるのですか?」
「そりゃそうだよ、私を騙すようにこっちに連れていてまさかの地方に行けだよ?しかもお父様お母様、そしてマリアも知ってたなんて知らないの私だけじゃん。」
「ではアリス様に教えたとして一切文句言わずシャメーラヌに行くと言いましたか?
大人しくここに来ましたか?」
「それは…。」
思わず言葉に詰まる、流石私の使用人、私の考えを完全に読んでる。
「でしょ?だから誰も言わなかったんです。」
「ハハハッ!アイドルさん押されてる!!!」
「そういうことなんで出発は明日の早朝6時になります。」
「ちょっと待って、明日の早朝ってもう夕方だよ?ほら!」
私が指差す窓の向こう側には綺麗な夕陽が輝いている。
「なので今晩はここで一泊させてもらい明日ここから出発します。」
「いやいや待って待って、いくらなんでも急展開過ぎでは!?」
「シャメーラヌはここから近いですし、それに。」
「あたしも行くからねー!!」
そういいマリアは元気よく手を上げでウサギのようにピョンピョンはねて自分をアピールする。
「えっ?なんで?」
「アイドルさんとロゼリアが着るドレスと装飾は繊細で一人じゃ着れないものだしあたしが手助けしなきゃ!!」
「そういうことですのでアリス様」
「明日からもよろしくねアイドルさん!」
こうして私のアイドル活動以外で、そして王族としての初めての地方遠征が決まった。いや、最初から決まっていたのだった。





