仕事は急にやってくる
「で、どういう理由であんな似合わない格好を?」
「ドレス似合わなかったですか?」
「あっ…いやそういう意味じゃなくて…いつも使用人服を着てるからそれに慣れて…だから…。」
そういえばロゼリアはいつもその使用人服ばっか着ててその他の服は全然見てたことないな。
今着てる変装してる格好すらいまでも違和感がバリバリあるもん。
「分かってますよそんなこと、ちょっと言ってみただけです。」
あの…、私をなんだと思ってるのでしょうか…?
と思わず口に出して質問しようと思ったけど拳を握りぐっと抑える。
「さっきも言いましたここにはあらゆる土地に適した衣装が置いてあります。」
「まあそうだね、聞いた聞いた。」
「この国はとても広いですが土地によって言葉や肌の色などが特に違うってことはないんです。」
私が元いた世界とは違ってここにはそういう争いや差別など人間同士醜い闘いをする「違い」はない。
みんな同じ言葉を喋り同じ肌の色をしている。
だからと言って争いがないわけじゃない。
もしなかったら私は誘拐されてないし護衛隊なんて必要ないんだから。
「つまり私がある土地の服を着て赴けば簡単にその土地の人間と同じになれるんです。」
「ん、じゃああのドレスも?」
「はい、あのドレス自体は一般的なものですがシャメーラヌ伝統の装飾が数多くつけられています。」
シャメーラヌはここシュリガレからすぐ近くの南東にある温暖な気候に包まれた土地、主に観光を資源として古くから独特の文化を持ってるとされる。
されるっていっても私もロゼリアのスパルタ勉強で知っただけだから実際に行ったこともないし見たこともない。
観光が盛んといいましても私は暑いのが苦手だから多分行くことはないと思うけど。
「ロゼリアはあのドレスを買いに来たってこと…?」
「それだけではないですけどまあ主な目的はそうですね。」
「じゃあロゼリアは今度シャメーラヌに行くんだー!って…あれ?」
その時私の頭の中で何かが繋がった。シャメーラヌの装飾がしてあるとしてもそこの人達がみんながみんなドレスのようなおめかしをしているわけじゃない。
むしろ温暖な気候でそんな暑苦しくて動きづらい格好なんかしたら生命の危機に関わる。だからあそこの土地の人達は動きやすく涼しい格好を好んで着てると何でもないロゼリアに教えて貰った。
つまりロゼリアはシャメーラヌでやる高貴なパーティかなんかに出席する為にあのドレスを手に入れた事になる。
「一応聞くけどロゼリアはシャメーラヌのパーティか何かに招待されてないんだよね…?」
「はい、「私」は招待されてません。」
「じゃあロゼリア以外の誰がパーティーに招待された…と。」
「そういうことになりますね。」
「でもそのパーティーにロゼリアは出席すると…?」
「はい。」
「ロゼリア、貴方の職業は?」
「使用人長及びアリス様専属の使用人及び護衛隊長です。」
「じゃあシャメーラヌに招待されたのって…。」
「気づきましたか、流石アリス様。」
ロゼリアはワザとらしく私を褒め称えた。
「アリス様、貴方にはシャメーラヌ領主主催のパーティーに出席してもらい臨時のアイドル活動を
していただきます。」
その時ドカドカと愉快な音を鳴らしマリアが部屋に戻ってきた。
「遅れでごめーん!美味しい茶葉がなかなか見つからなくて買いに行っ…ん?アイドルさん?なんで固まってるの?」





