使用人だって買い物くらいするのさ
「買い出しにきました。」
「うぉっ、いきなりきたな。」
さっきまで着ていたドレスを脱ぎここに来た時の服装に戻ったロゼリアが知りたかったことを簡潔に、且つこれほど分かりやすい言葉がないくらいに口に出す。
「別に隠す必要ないですし知りたい事は早めに知っておきたいでしょ?」
「ま…まあ…、そうだけど。」
「それに隠すならそもそも貴方をここにつれて行きませんし嘘をついて勝手にきますよ。」
「ちょっと待って、嘘をついてって今まで私に嘘ついたことあるの!?」
「さぁ?」
その時のロゼリアはいつも通りだった、だけど長年一緒にいる私は見逃さなかったんだ、彼女が少しだけ私から視線を反らしたことを。
これは嘘ついてるな、絶対。
「ここはですね、昔から護衛隊の変装に使う衣装を調達する王族御用達のお店なんです。」
「王族御用達って私知らないけど???」
「そりゃそうです、王族と言っても知ってるのは国王様と女王様だけですので。」
「私も一応王族なんですけど…。」
「ではアリス様は今まで王族としてなにかやりましたか?
アイドル活動やるから全てご両親にぶん投げてませんでした?
なにかやったというなら是非私に教えて下さい。」
「あー!あー!分かった分かったから〜!!!」
とても耳が痛い、痛すぎるよ。
これがブーメランというもの…、よく心に刻んでおこう…!
「ごめんなさい、これからは王族の責務を果たしてちゃんと働きます…。なのでここのお店のことを教えて下さい。」
「はい、分かりました。」
ロゼリアは満足そうな顔をしながら言った。
あれ、もしかしてその言葉を出すためにワザと煽った?
まさか…、私ハメられた!?
「私も先代の護衛隊長から聞いただけなので詳しくは知らないのですが先代がたまたまこの街を訪れた時ここを見つけたようです。
その時からここには様々な土地の衣装を置いてあったことから先代その時の店主、マリアのお父様と意気投合しここと取り引きをするようになったのです。
私も幼い時に先代に案内され同じく幼いマリアと出会いそのままここまでズルズルと。」
「ああ、いわゆる幼馴染ってわけね。」
「そう思って頂いても構いません。私は思ってないですけど。」
「じゃあここは元々マリアのお父さんの店なんでしょ?でもさっきからマリアがずっと一人で切り盛りしてるように見えたけどお父さんはどこ行ったの?
一応王族の務めとして挨拶はしとかないといけないと思うんだけど…。」
「残念ながらそれはできません。」
「なっ…。」
私はそこで言葉を止めた。私も馬鹿じゃない、ここまで聞けばマリアのお父さんがどうなってるか察することはできる。
でもよかった、ここにマリアがいたらそれこそ関係修復不可能なことになりかねなかった。
にしてもいつまでマリアは紅茶を淹れに行ってるだ?
「脱線が過ぎましたね、では後もう1つアリス様が気になってることをお話しましょう。」
ロゼリアは再び紅茶を口に含んだ後静かにそう呟く





