ところ違えば使用人も違う
「ところでシュバルツ様、私が家出している間何をされてたのですか?」
「うん?家出?僕は前のライブの反響が凄かったから急遽触れ合いの場を設けたと聞いたけど?」
「!」
私は隣にいたロゼリアをしゃがませると耳打ちをする。
「ちょっと、私が家出したって伝えてなかったの!」
「言えるわけありませんよ、ただでさえ国王の娘が家出したってこと事態恥じることでらっしゃるのに、それをその原因を作ったシュバルツ様なんかにとても口が裂けても喋りませんよ。」
「でもでも何触れ合いの場って、アイドルと応援する人は適切な距離ってものが大切なんだよ。あまり近すぎると後々厄介になるから今までやってこなかったのにこれだとホントにやることになっちゃうじゃない。」
「いいじゃないですか、応援してくれる人達を大切にすることは国のためにもなります。今後は真面目に企画計画をしましょう。はい決まり。」
「ダメダメ、私は休みの時間を大切にする人なの、そんなことをやったら休めなくなるじゃない。」
「それが本音ですか。」
あっ。
「アリス様はただでさえアイドルの立場をいいことに国政をことをご両親に任せてるんですしそれならアイドルをちゃんとやってもらわなければ。」
「でもでも」
「あの〜、もういいかな?」
その声に私とロゼリアはハッと正面を向くと微笑ましい笑顔をしているシュバルツと相変わらず無表情のマシューが私達を見つめていた。
一瞬焦ったロゼリアだったが「申し訳ございませんでした」と深々と彼らにお辞儀をした後さっきより一歩下がった位置についた。
「僕達もこうなりたいね。」
そうシュバルツはマシューにいうが御主人様の言葉だというのにやはり彼女は何も反応しない。
「前から思ってたんですけどいいんですか?」
「いいって何が?」
「私が言える立場ではないんですが…、マシューは私どころかシュバルツ様の問い掛けにも何も反応しないのは流石にちょっと…。」
「ああ、いいんだよ。マシューはこれで。」
「でもちゃんと伝わってるか心配になりません?それに…。」
「それに…何かな?」
この言葉を口にしたシュバルツは明らかに今までとの雰囲気は変わった。
表情は今まで通りの笑顔のままだけど声のトーンが低くなりその瞬間鳥肌と寒気が私を包み込んだ。
まるで冷たいオーラをシュバルツが放ったように感じた。
こんな彼を私は見たことがない。きっとこれ以上彼女に触れると間違いなく取り返しのつかないことになると私の本能がやめろやめろと訴えてる。
「いえ…、申し訳ございませんでした。」
「そう、それは良かった。」
彼は一度深呼吸をすると同時に冷たいオーラは消えさり鳥肌をおさまる。
いやいや、この人物理的に本当にオーラ出してるんじゃないの???
私知らないよ??そんなことができるなんて???
「マシューはこれでいいんだよ。今もこれからもね。僕の忠実で自慢の使用人だよ。」
「そうですか…。」
私は彼女に一瞬視線を向けてもやはり無表情のまま。
仮に褒められてるのに笑顔一つしない彼女に向けてまだいい足りないことがあるけどここは胸の内にしまっておこう。
「すいません、脱線がすぎました。」
「いやいや、僕は案外楽しかったよ。じゃあ改めて。
何かな、君が僕を呼び寄せて話したいことって?」