長くて短い家出の終わり
こうしてとても長くてとても短い人生初めての家出は終わった。
帰りは外に待ち構えていたロゼリアの部下…護衛隊の皆さんに手厚く護られながら馬車に乗り街を出る。
お忍びできた筈なのにそれはもう凱旋パレードの如く私を見送る市民の皆さんが道を埋め尽くされ私の姿を一目見ようとしていた。
だけどあんなことがあったもんで勿論馬車は厳重すぎるほどガチガチに警備を固め中が見える僅かな窓もカーテンで2重に閉められ誰一人私の姿どころか本当に私がこの中にいるのかどうか分からない。
いつもだったらこんな過保護の塊みたいな文句の一つも言うんだけどあんなことが起きたんだ、とても言える立場じゃない。
馬車に乗っている間隣にはロゼリアがいた、その間私達は何も喋らず沈黙を貫いていたけど彼女はずっと私の手を握っていてくれた。
それだけで十分、何も言う必要もないのだ。
お城に帰るやいなやお父様が心配そうに私の元に駆け寄ってきた。
「怪我はないか?何もされなかったか?」
と慌てふためくお父様に私は「大丈夫、大丈夫だよ!」優しく声をかける。
これじゃあまるでどっちが子供でどっちが捕まっていたのか分からないよ。
この国を収める絶対的な王様もひとり娘の危機の前には彼もただの一人の父親に戻る。
そのことは国民誰も知らない、知っているのは私達家族だけ。
みんなには絶対に秘密なんだ。
で、遅れて私の元にやってきたお母様は何も言わず私の頬を叩いた後ギュッと抱きしめた。
私は一言「ごめんなさい」と呟くとお母様の胸に顔を埋める。
その時お母様の心臓の音が聞こえた、とても早い鼓動が私が改めて何をやらかしたのかを改めて実感させられる。
今回は全部私に否がある、だから怒られようが殴られようが全部受け入れる気でいたんだ。
だけど失礼ながらお母様、これだけは言わせてください。
お風呂入りたい。