よくありがちなとある事件
「え〜とあの…、これは?」
「決まってるだろ、誘拐だよ。」
ですよねー。
「自分から言うのはとても恥ずかしいのですが…、私が誰だが分かっていらっしゃいます?」
「勿論ですよ、このアナスタシア王国女王の娘、そしてこの世界で唯一歌える存在でいらっしゃるアリス様。」
ですよねー、じゃなかったら誘拐なんてしませんよねー。
「あのー、なんで誘拐したか目的をお聞きしても?」
「そんなの金だよ金、お姫様の娘で国一番の人気者だぜ?そりゃもうここが埋まるくらいの金でも足りないくらいの価値があるんだよお前さんには。」
そんなこと私が一番良く知ってますよーだ。
とりあえず私の質問に答えた三人が幹部的なやつで残りの有象無象が一般社員みたいなやつ、その中でも最初に答えた残念イケメンがリーダー、眼鏡ををかけたインテリ風が参謀、明らかに脳筋な大型の男が実行部隊の隊長ってとこかな。
まあ私がこんな予想したとこで全く意味をなさないんだけど。
でもこんなゴテゴテの誘拐にまさか私が巻き込まれるとは思わなかったな。
これも異世界あるあるなのかな…。
うーん、やっぱり大人の言うことは聞いといたほうが良かったかな…。
「おいおい、なにそんな小難しい顔してるんだよ。」
「そりゃそうでしょう、誘拐されてるんですから、そんなことも分からないのですか?」
「あぁ?なんだ喧嘩売ってるのかテメェ!?」
私の心情を知らないでなにを夫婦漫才をしてるのだか…。
いや、どうやら幹部の皆さんも夫婦漫才もするほど仲良しってではなさそうだ。
だいたいは脳筋の男が場を乱しているのが見え見えだけど。
「ほらほら喧嘩するなよ、お姫様の娘さんの前だぞ。もう少し敬意を払ってな。」
そういいリーダー格の男が白々しく私に頭を下げる。
「それで私をどうするおつもりで?貴方達もご存知の通り護衛を巻いてきた身なので私が誘拐されたことは貴方達以外誰もご存知ではないと思うのですが?」
「そんなの簡単だよ、知らないんだったら教えたらいい。」
「もしかしてこの場所もですか?」
「ええ、勿論です。」
「教えねーと金受け取れないからな。」
あっ、バカだこの人達、残念イケメンはもうちょいいけると思ってたけどバカだ。
「えっと…あの、念の為別の場所を教えてそこでお金を受け取りまた別の場所で私を解放するとは考えなかったのですか…?」
「なんでそんな回りくどいことしなきゃいけねーだよ。」
「貴方を支柱に納めた時点で私達の勝ちなんですよ。」
「まあまあ娘さんも必死に逃げる方法を考えてるんだから許してやれよ!」
部屋中に私を馬鹿にするような笑い声が響き渡る。
どうぞ好きなだけ馬鹿にしてくださいよ、こんな馬鹿達に捕まった私を。
「えっと、整理しますとつまりお城には私が誘拐されてここにいることは知ってるってことですよね?」
「だからそう言ってるではありませんか。」
「そうですか、なら良かった!」
「あぁ?なにが良かっただ!?」
「だってこのままだとアリスちゃんが汚れて可哀想ですもん。」
「はっ?アリスはお前だろ?」
「そんなことより気をつけたほうがいいよ。」
「なにがだよ?」
その瞬間私の後ろにあった窓がバリーンと割れた。
そこから入り込む眩い夕日が笑顔の私を照らし光の先から現れるとある一人の少女
「遅いよロゼリア」
「おまたせしました、アリス様」