地味な少女の願いは
『 魔法少女になりたい 』
小学生の頃の夢なんて、そんなものだった。
学校では『挨拶はする』程度が私の立ち位置で。
勉強でも、運動でも、何をしても『それなり』な私。
地味顔で髪型はボブ、制服が一番似合うとも言われた。
鏡を見た私だって、そう思うぐらいには模範的な地味さ。
アイドルにも憧れるけれど、目立つのが怖くて。
話すだけでも緊張するし、話題を広げるのも不得意で。
だからこそ、明るく元気で皆が自然と集まる存在に憧れた。
アニメだから、夢物語だから、そんな事は分かっているけれど。
その心の燻りは小学生どころか、中学生になっても変わらない。
あだ名も無い地味代表の私の名前は『沙智』。
何一つ変わらず、地味な中学二年生をしています。
最近の私はスマホでVTuberの動画配信を見るのが日課。
架空の姿で色々な事ができるのは、私の憧れそのもので。
私もなりたいけれど……始めるだけのお金はなくて。
稼ぐにも未成年の労働は好まれない。
貧困で未成年労働が常態化の国もあるけれど。
それは無知で反発せず安い子供という労働者だから。
勉強して社会を学ぶ時間も与えられないからこその存在。
日本なら『親の子供の育て方』を問題視されそう。
それでも初期費用を『お小遣い』で賄うのは無理がある。
「神様、何とかなりませんかぁ」
『いつかなってみたい』と天を仰いで夢をみる帰宅中の私。
魔法少女にはなれなくても、アイドルにはなれなくても。
誰かと、皆と、一緒に楽しくいられる存在になれたら。
……一つの『募集広告』が魂を貫く。
いつもなら気にもしない動画の宣伝広告だけど。
それは私の中の思いが爆発するのに十分なものだった。