7話 ナイトメア本拠地、シャルマーレ城 【キャロム視点】
◆ナイトメア本拠地・シャルマーレ城◆
霧が濃く、先の見えない黒海に浮かぶ小さな孤島。周りは嵐のように激しい風や波が吹き荒れ、雷が至る所に轟音を立て落ちている。そんな荒れた場所の中心に位置する孤島の中央には、全体に黒を基調とした中世のお城を連想させるような巨大な建造物が存在感を放つように建っていた。孤島の中は魔法による結界で守られており、外部から侵入が出来ないような構造となっている。
「ふぅ……」
この地はナイトメアの最高幹部クラス、又は盟主様に認められた者しか入れない特別な場所じゃ。ナイトメア創設者であり、いと尊き至高の御方、レオノーラ様がお住いになられている神聖で特別な聖域である。
幹部達はそれぞれに転移の効果が付いたリングを指に嵌めているので、この最果ての海まで一瞬で移動して来れるようになっているのだ。しかし、この魔道具は盟主様が作られた特別製の物で、転移の効果が発揮するのは1日3回までと言う制限付きであり、転移の効果もシャルマーレ城の場所のみと限定されておる。他の場所へと好き勝手に転移が出来る訳では無いので、決して万能では無いのじゃ。
「もう他の仲間は集まっているのかの?」
キャロムは床が白い大理石で出来たお城の廊下を進む。天井や壁には豪華な装飾品やシャンデリアが並び、その価値は如何程になるのか計り知れない物ばかりだ。キャロムの目的地は、シャルマーレ城の10階にある円卓の間。主に幹部会等に使われる大きな会議室である。
「しかし、何時見ても本当に壮大な城じゃ……」
何度か来ているけど、毎度圧倒されてしまう。盟主様の財力はどれ程の物なのか、妾には全く想像がつかぬ。
「はぅ……ソフィア様は今頃、街に入ってレティ達とご飯でも食べてる頃かの……」
レティが居れば問題は無かろう。ただ、別の意味でちと不安はあるがな。
「ほう? あれは……」
廊下を抜けた先のエントランスに見覚えのある人物が立っていた。
「おお! ルーナ! 久しぶりじゃのぉ!」
「その声は……キャロムちゃん? お久しぶりでして〜♪」
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執行者No.IV 【月影の剣聖】
ルーナ・ユースティア
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艶のある腰まで届く長い髪に、服装は上は白、下は赤の巫女服を華麗に着こなしている。身長は約170cm、穏やかで優しそうな雰囲気の和風美人の女性だ。
「そっちの方はどうじゃ? 上手く事は進んでおるか?」
「うふふ……♡ 滞りなく♪」
ルーナの主要武器は剣。腕前は剣聖の領域にも達している。独自の月影流と言う流派を編み出し、魔法と上手く組み合わせて戦う戦闘スタイルで数多くの強敵を打ちのめして来ている猛者だ。面倒見も良く、女の子が大好きでドSな性格の持ち主でもある。
「キャロムちゃん、元気にしていましたか?」
「妾は相変わらずじゃよ」
「くすくす……なら良かったです。円卓の間まで御一緒しても?」
「勿論じゃ! え、ルーナ……その手は一体」
「ん!」
ルーナが手を繋ごうと言わんばかりに無言で笑みを浮かべている。ルーナは優しくて、妾も憧れている女性だけど、怒らせると物凄く怖い女性でもある。
執行者達の中でも実力は上位に入っており、あの生意気な変態糞ピエロ……ラクリマ・オペランディでさえ唯一逆らう事が出来ないくらいじゃ。執行者の地位は皆等しく同等ではあるが、執行者の中で誰もルーナに逆らおうとする命知らずの者はおらぬ。
「ルーナ? 妾はもう23歳だぞ?」
「あらあら、私から見たらまだまだ可愛い妹です♡ おてて繋ぎましょう♪」
「え、じゃが……」
「繋ぎましょう♡」
「…………」
個室ならともかく、他の仲間に見られるのはちと……恥ずかしいのじゃ。
「キャロムちゃん少し胸大きくなった?」
「え、どうじゃろか……ルーナと同じくらいの大きさじゃぞ?」
「うふふ……前に会った時よりも一段と更に可愛くなりましたね♪ みんなと会うのは1年振りくらいかしらね?」
「妾が可愛いじゃと……ごほんっ……そ、そうじゃな。皆、他の国で動いているから中々集まる機会は少ないからのぉ」
くっ……! ルーナからめちゃくちゃ良い匂いがする。何で女の妾がこうもドキドキしているのだ……手も柔らかくて……妾は一体何を考えているのじゃ!? そうだ、意識するから行けないのじゃ!
「顔が赤いですよ? 大丈夫?」
「問題無いのじゃ!」
「何か考え事でして〜?」
ふむ、ソフィア姫の事をルーナにもやはり言うべきじゃよな? 姫様には内緒にしておいて欲しいとは言われたが……でも、ここで言ったら姫様に「キャロムは口が軽いから、秘密事はもう話さないからね!」とか言われるのも嫌じゃし……でも、もし盟主様や他の皆に言わなかったら、幹部連中やマリア様から責め立てられてしまう。
「もしも〜し。キャロムちゃん?」
「ルーナよ、実は報告する事があるのじゃ……」
「うんうん♪ ルーナお姉さんに何でも話すのです♪」
妾も覚悟を決めるのじゃ。それに盟主様や他の幹部連中もソフィア様の身を案じておる。やはり、ここは報告する他あるまいて。
「ルーナよ、実は盟主様からの命令で、山賊達の根城を全て根絶やしにしろと仰せつかったのじゃ」
「うん、して……何か問題がお有りでして〜?」
「落ち着いて聞いてくれ……何と、山賊のアジトでソフィア姫様が囚われて居たのじゃ」
「な、何ですって……!? して、姫様はご無事なの!?」
「姫様はご無事です……ただ、山賊達に犯され弄ばれたせいなのか、記憶喪失の状態に……おいたわしや」
思い出すだけで、涙が出て来てしまう。姫様が気の毒で仕方がない……
「キャロムちゃん、山賊達はちゃんと一人残らず根絶やしにしたの?」
「あぁ、妾が全て始末したぞ」
「なら良いけど、ソフィア様は何処へ?」
「今は妾の配下、レティがレアルカリアの街で面倒を見ておる」
「ふむ、それなら安心かな。後は盟主様の判断に任せましょう」
そして、キャロムとルーナは目的の場所へと到着する。
「着きましたね♪」
「あぁ、円卓の間……」
キャロムはルーナと手を繋ぐのを止めて、扉を開き重々しい雰囲気の円卓の間へと入った。部屋の中に入ると室内は赤い絨毯が敷かれており、中央には巨大なテーブルと十七の席が設けられている。一番上の上座には盟主様が座られる玉座があるが、盟主様はまだお見えにはなって居ないようだ。
「来ましタカ。キャロム、ルーナ」
部屋に入ると執行者達が席に座っていた。キャロムとルーナが来た事により、ほとんどの執行者達が円卓の間にて集結する。
「おっと? 貧乳小娘、パッドがずれてマスヨ?」
「あぁん? パッド何てしてねーよ! 変態ロリコンピエロ、あたいに喧嘩売ってるのか? そのキモイ赤っ鼻へし折ったろか?」
「イヒヒ……雑魚は良く吠えると言いマス。私とやると言うのデスカ? 貧乳小娘……おっと、これは失礼。貧乳じゃなくて絶壁でしタネ! おおぉ……立派な壁だコト」
「ラクリマ………てめぇ、もう許さねぇ……ぶち殺す!」
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◆執行者No.Ⅴ 【 笑う道化師⠀】
ラクリマ・オペランディ
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身長は196cm、鮮やかな水玉模様のヨレヨレの服を着たピエロみたいな格好をした男性だ。特徴的な丸い赤っ鼻にヘビメタのような化粧をしており、悪魔を連想させる容姿をしている。ラクリマの種族は【妖魔種】と言う珍しい種族で、主に闇魔法を得意とする。性癖は幼女が三度の飯より大好きで、良く奴隷の女の子を買っては弄んで楽しむという救いようの無いクズだ。ノウェムとは昔から犬猿の仲である。
「久しぶりに遊んでやりマスヨ。貧乳小娘!」
「ゴミの分際で……どちらが上か分からせてやる!」
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◆執行者No.Ⅱ 【 血濡れ姫⠀】
ノウェム・カルデリア
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オレンジ色に白のメッシュが入った長いロングヘアーに綺麗な白い素肌。顔も整っており、勝気で活発そうな印象が強い女の子だ。服装は盗賊のように露出度が高く、おへそ丸出しの茶色の服にミニスカートを穿いている。身長は約160に満たないくらいで小柄だ。本人は自分の胸の発育が宜しくなくて、内心かなり気にしている。
「イヒヒ……! 派手に踊り狂いなさい! 行けお前達!【 操り人形達の舞踏⠀】!」
ラクリマの周囲に継ぎ接ぎだらけの人形が複数体浮かび上がった。人形達はそれぞれに意思があるかのように動き出しノウェムを襲う。
「相変わらず趣味の悪い人形だな! キツイのお見舞いしてやんよ! 空間魔法【 湾曲次元の特異点⠀】!」
ノウェムが見えない壁を右手でトントンと叩くと、そこを起点にパキパキと空間に悍ましいヒビが入って行く。
【 月影の太刀 壱ノ型 月光乱舞⠀】
ラクリマの召喚した人形達が、ルーナの剣技により一瞬で消滅した。ルーナが二人の戦いを仲裁しようと動いたのである。
「ねぇ、ラクリマ? 私の可愛い妹分のノウェムちゃんに意地悪したら……殺しますよ♡」
ルーナがラクリマにヤンデレのような目付きをして、凄まじい殺気を解き放つ。
「げっ!?」
「ラクリマ、何ですかその反応は? 死にたいのですか?」
「い、いえ……な、何でも無いデス……」
「うんうん♪ 仲良くしないとメッ!ですよ?」
ノウェムとラクリマは犬猿の仲ではあるけど、お互い本当に嫌いと言う訳では無い。こんな救いようの無い変態じゃが、ラクリマは仲間や配下の者を凄く大切にしておる。妾が任務でしくじって、敵に追い詰められた時も真っ先に駆け付けて来てくれたのが、意外にもこの変態糞ロリコンピエロだったのじゃ。
「お前達は相変わらずだな」
「ガッハッハッ! 良いじゃねぇかウェンクトゥーラ! 喧嘩する程仲が良いと言うしな!」
「ウェンクトゥーラ! アイゼンベルク! 久しぶりじゃのぉ!」
「あぁ、息災だったかね? キャロム嬢」
「いつぶりだろうな。しかしまあ、ノウェムとラクリマの喧嘩は最早恒例行事だな」
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◆執行者No.Ⅶ 【 死神 】
ウェンクトゥーラ・ベートリ
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身長は185cm、全身に包帯を巻きその上から黒いロングコートにシルクハットを被っている。年齢は40代後半の壮年の男性だ。表の顔は、偽名を使いオーロット商会の会長等を務めており、聡明で文武両道に秀でた人物だ。ナイトメアの初期メンバーの一人で配下からの信頼は厚い。大きな葉巻を愛用している。
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◆執行者No.Ⅷ 【 幽冥の支配者 】
ネクティオ・アイゼンベルク
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温厚な性格の熊型の獣人族。身長は230cmの大男だ。片目に眼帯をして、全身フルプレートの装備を着用している。アイゼンベルクは歴戦の戦士と言った風格で、黄金に輝くハルバードを片手に敵を蹂躙する戦闘スタイルだ。アイゼンベルクには最愛の幼い一人娘がおり、名をシュナと言う。クマっ娘で人懐っこい性格をしていて、父のアイゼンベルクはもう強面顔も破顔する程にデレデレだ。
「ノウェムちゃん♡ 久しぶりに妾と〇〇〇しよ♡」
「キャロム姉、あれは絶対にしないからな!」
「遠慮しなくても良いのじゃぞ? ノウェムちゃん、妾は貧乳も大好きじゃぞ♡」
「うぅっ……あたいだって……まだまだ成長する筈なんだ!」
「うふふ♡」
ノウェムちゃんは相変わらず可愛いのぉ♡ 貧乳の女の子が、無い胸を隠しながら赤面して怒る姿は至高じゃ♡
「はぁ……眠い。早くお家に帰りたい」
「バードウェイちゃん♡ 相変わらず小さくて可愛ええのぉ♡」
「いちいち騒ぐな、キャロムやかましいぞ……私はこう見えても30歳、キャロムより歳上でお姉さんだけど?」
「よしよし♪ あ、飴ちゃん食べる?」
「だから子供扱いするなっ!」
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◆執行者No.Ⅹ 【 金色の観測者 】
オーロット・バードウェイ
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身長は135cm。男みたいな名前だが、見た目は小学生くらいの黒髪ツインテールの女の子だ。目は大きくぱっちりとしており歳相応のあどけなさを残し、庇護欲が唆られる様な愛らしさを兼ね備えている。
基本面倒くさがり屋でズボラな性格だけど、研究に打ち込む時だけは息を忘れたかのように物凄く熱心に励む。白衣を身に纏い、眠たげな顔でいつも気だるそうにしている大人びた幼女と言った所だ。見た目によらず、バードウェイは殲滅魔法、召喚魔法、回復魔法、防御魔法、補助魔法等を得意としている。
「バードウェイはホント癒し枠だよなぁ。あたいの膝の上に座っても良いんだぞ?」
「だからぁ、私は大人……ぐすんっ。ノウェムの馬鹿」
「あぁ、よしよし♪ バードウェイごめんな。今度、王都で【イチャイチャメモリアル】最新刊買って来てあげるから」
「もう、持ってる……」
何だかこの光景を見るだけで癒されるのぉ〜♪ ノウェムちゃんとバードウェイちゃんのやり取りが尊いのじゃ♡
「おい、貧乳小娘! 私の可愛いバードウェイちゃんにちょっかい出してるじゃないデスヨ!」
「おいおい、頭お花畑ロリコン生ゴミ糞変態ピエロ。薬でもキメてるのか? お前のじゃなくて、皆のバードウェイだろ?」
「2人ともやかましい……そして、ラクリマは死ね」
「なっ!? バードウェイちゃん!? 何故私ダケ!?」
「サンドバッグ風情が……大人しくサンドバッグは静かにしていろ、このゴミ虫が……死ね。後100回くらい死んどけ。変態ロリコンピエロ」
「なっ!? 何でショウカ……バードウェイちゃんに罵倒されると何だかゾクゾクしてしまいマス! はっ……!? これはまさか、恋なのデスカ!?」
バードウェイは基本的に毒舌だが、たまにデレる事もあるし意外と感情が豊かだ。表の顔はアルカナム研究所の最高責任者でもある優秀な研究者である。
「バードウェイちゃん、分かりますよぉ。ラクリマ見てると八つ裂きにしたくなる様な顔をしていますよねぇ♪」
「シャルロッテ! お前は黙らっシャイ! このイカれた聖女め……」
「あらあらぁ、ラクリマ、貴方の身体の断面を私に見せてくれると言うのかしらぁ? 切断しちゃいますよぉ♡」
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◆執行者No.IX 【 破滅の聖女 】
シャルロッテ・ランカスター
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身長169cm。常にニコニコしながら、争いとは無縁のような穏やかな笑みを浮かべている。長い金髪の艶のある髪の毛、うっとりとしたような目に口の右下に小さなホクロがある妖艶な爆乳美女だ。
修道女のような格好をしていて、胸元に十字架のネックレスを常に首から下げている。見た目からは想像はつかないが、かなり好戦的な性格で懺悔しながら敵を真っ二つにしたり、魔物や人間の切断した断面を見るのが趣味という狂気な一面もある。
シャルロッテの固有スキル【 災禍の狂乱⠀】は、血を浴びれば浴びる程狂気に満ちて行き、全ステータスが上がり続けると言うチート級の能力だ。他の執行者達も化け物級に強いが、その中でもシャルロッテは頭が一つ飛び抜けていると言っても過言では無い。
「静粛に、参加者は揃ったようですね。他の執行者は任務遂行中にて欠席です。さて、時間も有限ですので、これから幹部会を始めます」
「ほぉ! 全員ではあらへんが、けったいな面子が揃ってますなぁ〜盟主はん。ささ! こちらへ」
円卓の間に最後の執行者の2人と盟主様が到着なされた。盟主様の両隣りには、執行者のセプテム・ケレブレムとオクトー・ザレフキアが控えている。
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◆執行者No.Ⅰ 【 超越者 】
セプテム・ケレブレム
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身長は182cm。種族は龍人族で丸いメガネをしているインテリ風な優男だ。盟主様が不在の際には、執行者達のまとめ役も担っており、ナイトメアの知略の部分を主に担当している。盤上の一手に無数の策を張り巡らす稀代の謀略家だ。
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◆執行者No.Ⅲ 【 殲滅王 】
オクトー・ザレフキア
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身長183cm、爽やかでつり目が特徴な青年だ。白と黒の袴を羽織り、懐には様々な暗器を仕込んでいる。生物が絶命する瞬間と破壊や他人の絶望した表情に喜びを見い出しており、敵対勢力には一切の慈悲の欠片も無い男だ。ナイトメアの暗殺部隊の隊長でもあり、拷問官のまとめ役でもある。
《皆さん、お忙しい中集まって頂きありがとうございます》
。.。:+* ゜ ゜゜ *+:。.。:+* ゜ ゜
◆ナイトメア創設者・盟主 【 ???⠀】
レオノーラ・フォン・リアスルージュ・ステイシア
。.。:+* ゜ ゜゜ *+:。.。:+* ゜ ゜
ナイトメア創設者にして、マリア様とソフィア様のお母様であらせられる。この世の者とは思えない程美しく、儚げな印象を持った女性だ。普段は賢者が着るような純白のロープを羽織っている。絶対なる支配者としての器も持ち、我々一同は盟主様に絶対的な忠誠を誓っている。盟主様が黒と言えば黒、白と言えば白なのだ。
「盟主様の為ならば、我等一同! 何処へでも駆け付けます!」
「私達は、盟主様に絶対の忠誠を捧げておりマス!」
「ご命令とあれば即座に!」
「あぁ♡ 愛しの盟主レオノーラ様♡」
執行者達は全員その場で立ち、盟主に最大限の敬礼を尽くす。盟主様はそれらを手で制して、着席するように皆に促した。
《さてと、今回皆に集まってもらったのは他でも無い。ラクリマが担当するナイトメア支部が襲撃されたと言う件についてです》
盟主はため息をつきながら、重々しい雰囲気で事の内容を執行者達に伝える。
《ラクリマはもう知っているかと思いますが、先日マグリウス共和国、フロンターレの街にあるナイトメアの支部が何者かに襲撃されました。支部は全壊、死者は78名、重傷者100名を超える前代未聞の大事件です。ラクリマ直属の配下【光剣】アルファス・カラステア及び【暴風の舞姫】ミナス・メルクリアが重症……》
な、何じゃと!? あの【光剣】と【暴風の舞姫】がやられたと言うのか!? ラクリマ配下の両翼とも呼ばれる妾も認める強者だ。
「おいおい、アルファスとミナスが……あの二人が負けたのか!? 実力はAランク冒険者や国の騎士団長クラスにも匹敵する奴らじゃねーか!」
「ほう? 我等ナイトメアと知っての狼藉か?」
「ガッハッハッ! 売られた喧嘩は倍にして返してやろうぜ! 敵はこのアイゼンベルクが全て捻り潰してくれるわ!」
「みなはん、血の気が多くてお盛んですなぁ〜何処の誰だか分かりまへんが、わいが徹底的に潰したるやさかいな」
「ああぁん♡ ゾクゾクして来ちゃう♡ 敵さんの身体の断面が見たいわぁん♡」
これは、大きな戦争が始まる予感がするのじゃ……妾もしっかりと気を引き締めなければならぬな。ナイトメアの執行者の1人として、決して敗北は許されぬ!
《現在、執行者の【不死鳥】フラムベスタ・アレクトーと【絶対領域】私の娘、マリアにマグリウス共和国の支部の調査を命じております。現在その他の執行者、【死の軍勢】ヌーベルト・ファインリッヒは危険指定ランクSSS級の最難関ダンジョン【終焉の都】を配下の者達と共に攻略中、【深緑の女神】カグラ・シズネは精霊人の伝説の都、ユグドラシルにてナイトメアの支部を置かせてもらう為にリアスレーゼ女王陛下と交渉中、【破戒】レディオ・ボーゼスは麻薬組織【リッツカルテル】と配下の者を率いて全面抗争中、【海底の守護者】アクア・レンフィードはナイトメアの各支部を繋ぐ輸送経路の新規開拓中、【天界の守護者】ミリエール・オラシオンはS級冒険者オルテシア・ロゼリーとして各地の情報収集の為今回は欠席です。さて、今日の議題は今後の対策とナイトメア各支部の戦力強化、ナイトメアの傘下組織との連携の強化です》
盟主様の話しを聞いて、静観していたラクリマが重々しい声で言葉を発した。その声には怒りと悲しみに憎悪と言った様々な感情がラクリマの中で渦巻いている。
「何処の馬の骨か分からない奴に……私のアルファスとミナスは、やられたのデスネ……手塩にかけて育てて来た……私の配下達ガッ! 許せマセン……この世のありとあらゆる苦痛を与えて全員殺してやりマス! 盟主様、どうかこのラクリマ・オペランディに敵の調査と討伐をお命じ下さいマセ! 必ずや良き吉報を持って帰りマスヨ!」
《ラクリマ、気持ちは分かりますが少し落ち着きなさい。敵は【光剣】と【暴風の舞姫】を倒した者です。決して油断はなりません。相手は強大な組織の可能性もあります。それに……最近では西の大陸からキナ臭い動きが漂ってると言う報告も受けております》
良し、少し会話に割り込む用で心苦しいが、妾も言うぞ……ソフィア様の件
「盟主様、会話の途中に入る事をお許し下さいませ。実は妾の方からも大切な報告があります」
《ん? キャロム、何でしょうか?》
「妾は盟主様から命じられていた、山賊根絶やしの任を受け、レアルカリアの街へと赴いて居た時でした。偶然近くの森にて、山賊のアジトを見付けて滅ぼしたのですが、牢屋の中から何と半年前から行方不明になって、皆で血眼になって捜索をした盟主様の御息女、ソフィア様が囚われていたのですじゃ!」
《嘘……そ、それは本当なの? ソフィアが……生きて居た……》
「盟主様!? 大丈夫ですか!?」
「ソフィア様……無事でしたのね!」
「何と……ソフィア様が」
「おい! 誰か盟主様の涙を拭う綺麗な布を持って来い!」
「ソフィア様はいずこへ!?」
やはり、妾同様に皆も心配していたのだな。他のみんなもソフィア様の事は、娘同然に大切に接して来ていたからな……無理も無い。マリア様が、この場でもし見つかったと言う話しを聞いたら、きっと直ぐにでもレアルカリアの街へ飛んで行ったに違い無い。
「ソフィア様は現在レアルカリアの街で、妾の配下達が護衛に付いております。ですが、ソフィア様は山賊達に弄ばれたのか、はたまた辛い思いをされたせいなのか……ボロボロの衣服を身にまとって記憶喪失に……本当はこの場に連れて来たかったのですが、ソフィア様が自分の事は秘密にして欲しいと仰っておりました」
ソフィア様……申し訳ございません。ですが、妾の決断は間違いでは無いと思っております。
《そうですか……ソフィアが落ち着いたら私が会いに行きましょう。しかし、問題は記憶喪失でボロボロの衣服を身にまとっていたと言う事。私の大切な娘が奴隷になっていたと言う可能性があります。徹底的に経緯を調べあげる必要がありますね》
盟主様が静かにお怒りになっている……普段温厚な方が怒るとこうも怖いものなのか……それと同様に他の執行者達も怒りを顕にしている。
《ごほんっ……ソフィアの件はキャロムに後で詳しく聞くとしましょうか。さて、良き知らせもあったのは不幸中の中の幸いでした。まずは目の前の問題を片付けるとしましょうか。今回のナイトメア支部襲撃の事件……嫌な予感がします。もしかしたら、敵方との全面戦争になるかもしれません。皆様、覚悟はお有りでしょうか?》
執行者達は、全員無言で同調の意を示した。
◆執行者No.Ⅰ 【 超越者 】
セプテム・ケレブレム
◆執行者No.Ⅱ 【 血濡れ姫 】
ノウェム・カルデリア⠀
◆執行者No.Ⅲ 【 殲滅王⠀】
オクトー・ザレフキア
◆執行者No.Ⅳ 【 月影の剣聖⠀】
ルーナ・ユースティア⠀
◆執行者No.Ⅴ 【 笑う道化師⠀】
ラクリマ・オペランディ
◆執行者No.Ⅵ 【 常闇の女帝⠀】
キャロム・ベルマーレ⠀
◆執行者No.Ⅶ 【 死神⠀】
ウェンクトゥーラ・ベートリ
◆執行者No.Ⅷ 【 幽冥の支配者⠀】
ネクティオ・アイゼンベルク⠀
◆執行者No.Ⅸ 【 破滅の聖女⠀】
シャルロッテ・ランカスター
◆執行者No.Ⅹ 【 金色の観測者⠀】
オーロット・バードウェイ
◆執行者No.XXⅠ 【 絶対領域⠀】
マリア・フォン・リアス・ルージュ・ステイシア
◆執行者No.XXⅡ 【 不死鳥⠀】
フラムベスタ・アレクトー
◆執行者No.XXIII 【 死の軍勢⠀】
ヌーベルト・ファインリッヒ
◆執行者No.XIV 【 破戒⠀】
レディオ・ボーゼス
◆執行者No.XV 【 深緑の女神⠀】
カグラ・シズネ
◆執行者No.XVI 【 海底の支配者⠀】
アクア・レンフィード
◆執行者No.XVII 【 天界の守護者⠀】
ミリエール・オラシオン