14話 元S級冒険者 カナエ・ブラウソラス
◆―――翌朝―――◆
「ルシアちゃん、少しの間ニーナちゃんとお留守番を頼めるかな?」
「おう、任せてくれ! ソフィア姉も気を付けてな」
「うん♪ では行ってきます〜」
今日は快晴のお出掛け日和だね。綺麗な景色を見ながらお酒が呑みたい気分だよ。でも、今日の目的はお仕事を見つける事だ。良い仕事を見付けて、一刻も早く安定した収入を得る必要がある。昨日寝る前に所持金の方を数えて見たら、残り1週間分の宿屋代くらいしかもう蓄えが無いのだ……これはやばいぞ。
「カナエさん、おはようございます! ちょっと出掛けて来ますね〜♪」
「あんらぁ〜♡ ソフィアちゃん、レティちゃんおはよぉ♡ 今日はお仕事を探しに行くんだったかしらぁん?」
「はい、まずは冒険者ギルドの方へ登録をしに行こうかと」
「あらあら、懐かしいわね〜冒険者ギルド♪ こう見えてあちしも昔は、それなりに名のある冒険者だったのよぉん♡ まあ、今は男の尻を追い掛けながら宿屋を経営するゲイだけどね♡」
「あはは……そうだったのですか」
うん、でもそんな感じがするな。カナエさんの肉体は物凄く鍛えてあるし、腕や足にも古傷があったりと歴戦の猛者と言った風格だ。
「やはり……只者では無いと思っておりました。貴方はあの伝説のS級冒険者……【レアルカリアの悪夢】と畏怖されたカナエ・ブラウソラスさんでしたか……」
「え、レティ知ってるの?」
「はい。カナエ様はこの国に5人しか居ない最高峰のS級冒険者……触らぬ神に祟りなし。数多の難関な依頼を単独で成功、人間族が未踏の地、精霊人の住む都ユグドラシルに到達、法国で起きた内乱【セイルダムの事変】を同じSランク冒険者の【旋律の歌姫】フランドール・エスメラルダと共に鎮圧。その他にもカナエさんの噂は何度か聞いた事があります」
え、カナエさんそんなに凄い人だったの!? しかし、異名が何だか酷過ぎる。レアルカリアの悪夢……
「あらぁやだぁん♡ あちしの事を知ってたのねん♡ でも、今は元S級冒険者になるわね。5年前に引退しちゃったからねぇ……」
「そうでしたか、機会があれば是非お手合わせをしてみたいものです」
「良いわよぉん〜でも、あちし手加減は苦手よぉん♡ レティちゃん覚悟してねぇ♡ んふ〜♡(悪魔のウインク)」
レティも確かに凄い人だけど、このカナエさんは色々な意味でやばい。もし手合わせをすると言うなら、全力で止めに入らなければ大変な事になりそうだ。
「ソフィアちゃん、お節介かもしれないけど、冒険者は危ない職業だからあんまりオススメ出来ないわよん」
「心配して下さりありがとうございます♪ ですが、私は争い事が嫌いなので、雑用系の仕事しか受けないですよ」
「あぁ、そういう事なのね。それなら一安心よぉ♪ 冒険者は荒くれ者が多いから、何かあったらあちしに遠慮なく相談してね♡ ソフィアちゃんは可愛いから目を付けられやすいと思うの。もし、ソフィアちゃんに意地悪するキャンディーちゃんが居たら……地獄の果まで追い詰めて、その身を持ってお尻の穴を掘って分からせてあげるからぁ♡」
確かに想像するだけで地獄かもしれない。カナエさんに追い掛けられたら、その日の夢の中にも出て来そうだ。でも、カナエさんにそう言って貰えるとこちらとしてもありがたい。カナエさんとは、今後とも良き関係を築きたいものだ。
「あ、ありがとうございます♪ カナエさん、私の娘達はお留守番させるので、もし時間に余裕があれば気にかけて下さると助かります♪」
「あんらぁ……! 任せてちょーだい! あちし子供の面倒を見るの得意なの♡」
「おお! 頼もしいです! すみません、ではお願いしますね」
申し訳無い気持ちもあるけど、何かカナエさんが困った時は私も出来る事はしてあげたい。winwinの関係を築きたいものだね。
「ソフィアちゃん、レティちゃん♪ お気を付けてぇん♡」
「はい、では行ってきます!」
「行ってまいります」
ソフィアとレティは宿屋を後にして、近くの冒険者ギルドへと足を運ぶのであった。
――――――
「ソフィア様、冒険者登録をするにもお金が掛かりますよ」
「え、まじ?」
「はい、まじです。ですがそんなに高くはありませんよ。銀貨3枚で30ガルムです」
「oh......地味にお財布に響くお値段だね。まあ、仕方ないね」
異世界の冒険者ギルドかぁ。昔読んでたライトノベルでは、酒場とかも併設してある冒険者ギルドがあると読んだ事がある。お金に余裕が出来たら呑みに……ごくりっ。
「ソフィア様、冒険者ギルドには変な輩や素行の悪いゴミ虫共も居ます。入ったら、私の傍から離れないで下さいませ」
「分かったよ。レティ、でも殺しや暴力は禁止だからね! 争い事はなるべく避けて欲しいの!」
「善処します」
「本当に大人しくしててよね! 後、下ネタも禁止だから!」
「下ネタ?」
「だから……レティのいつものあれ」
「あぁ……〇〇〇〇〇〇〇〇〇ですね」
「だから真顔で言わないの!!!」
全く、レティは歩くR-18禁だからね。口を開けば下ネタトークの連発で、その発言一つ一つに修正が入りそうな程に危険だ。
「ソフィア様! あそこの屋台から何やらエロい匂いがします!」
「エロい匂いって何!? あ、あれはソーセージかな? 何かの腸詰めじゃないの?」
「あぁ……あの食べ物はしゃぶるようにして食べるのですよね♡」
「おい、変態」
「あんっ♡ ソフィア様のゲンコツ……気持ち良いです♡」
レティの脳内は一体どうなってるの? ここまでレベルの高い変態さんになって来ると最早1周回って清々しいよ……はぁ。レティの頭の中のネジは、恐らく100本くらい抜けてるのかもしれないね。
「ほら、行くよ!」
「はい♡ 何処へでもお供致します♡」
「レティ、何かキャラ変わって来てない?」
「気の所為ですよ。私はいつだって、クールビューティーな女です。さあ、共にイキましょう」
「レティ、宿屋でお留守番する?」
「すみませんでした……今から純潔の乙女に戻るのでお許しくださいませ」
「純潔とは……」
まだ冒険者ギルドに辿り着いて無いのにもう疲れた……レティの相手は本当に疲れちゃうよ……おじさんには荷が重い。
「レティ、あそこの建物が冒険者ギルド?」
「はい、あちらがこの街の冒険者ギルドで御座います」
「おけ、レティはなるべく黙っててね。それと手を出すのは禁止だから!」
「…………了解致しました」
「今の間は何……!?」
あぁ……不安だ。神様どうかお願い致します。何事も無く無事に終わりますように……私は目立ちたくも無いし、怖いお兄さん達に絡まれたくも無いぞ。新人冒険者に絡んでくると言う定番のシュチュエーションがあるけど、私はただの一般人だ。異能、魔法、チートも何も無い、46歳の中身おじさんな美少女だ。
「あら、ソフィア様……お胸のボタンが弾けそうですね」
「うん……私にはこの服ちとキツイかな。でも、洋服屋さんで売ってる服はどれも窮屈に感じたよ」
「それはソフィア様の胸が爆乳だからです」
「うん……こんだけお胸があると肩凝るんだね。下を見る時も足元が胸のせいで見えないし……以外とデメリット多くてさ……」
それに服のサイズも特注品じゃ無いとキツいし、女性はブラジャー等も付けないと行けないので色々と面倒だ。美少女は好きだけど、私自身は別に美少女になりたい訳では無いからね。それにこの姿はもうどうしようも無いのだ……
「あ、あれ? レティ、冒険者ギルドの入口は反対側かな?」
「ふむふむ」
「レティ?」
どうやら冒険者ギルドの入口は表側のようだ。どうやら私達が歩いて来た道は、大通りから少し外れた裏の道だったようだ。
「やれやれですね。ソフィア様、私にお任せくださいませ。危ないので少し離れていて下さい」
「え、何が危ないの?」
「ふんっ……!」
ええ……レティ、マジか!? 何故壁を斬ったの!? 別に私達が入口の方へ移動するだけで済んだよね!?
「ちょっとレティ! 何してるの!?」
「目の前の壁を斬っただけですが?」
「普通に入ると言う選択肢は無かったの!?」
「目の前に立ちはだかる壁は、全て切り捨てるのが私のモットーです」
「もう、まじか……勘弁してよぉ」
え、これ弁償しないと行けないやつだよね? 建物の一部とは言え、これかなりの修復費用が掛かりそうじゃ……
「一体何事だ……!?」
うわ、どうやって弁明すれば良いのだろうか。中から職員らしき人が出て来ちゃったよ……とりあえず素直に頭を下げて謝るしか無いなこれ……とほほ。




