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なろうラジオ大賞4

缶コーヒー(ドリップ式)

 休憩で立ち寄ったサービスエリア。

 コーヒーでも飲もうと自販機コーナーへ向かう。


 すると……なんかすごくでかいマシーンが置いてある。

 どうやらドリップ式の缶コーヒーを販売しているらしい。


 値段も一桁違うことに気づく。

 一個2000円から3000円もする。

 誰が買うんだよ、こんなの。


 俺はコーヒーを諦めて出発しようとしたが……ふとSNSでの評判が気になり検索をかけてみた。


『この世の物とは思えない味だった』


『一度でいいから味わった方がいい』


『貴重な体験になる』


 ありえないほど褒められている。

 話題作りにはなるかなと思い、思い切って買ってみることにした。


 自販機コーナーへと戻り、千円札を二枚挿入。

 缶コーヒーの販売ボタンを押す。


 すると軽快な音楽と共に、コーヒーがドリップされる様子が映し出される。

 なんだ、案外普通じゃないかと思っていたら、仮面をつけたオジサンが現れた。


 オジサンはコーヒーが注がれたアルミかなんかの器に蓋をかぶせ、なんかの機械で溶接していく。

 バチバチと飛び散る火花。


 ものの数分で溶接を完了したおっさんは、出来上がった缶コーヒーを手に取り、おもむろにナイフを取り出した。

 そして……。



 きぃ――



 自販機の扉が開いた。


「お買い上げありがとうございます」

「え? あっ、はい」


 野太いおっさんの声が聞こえたので、返事をする。

 缶には飲み口などはなく、なんのプリントもされていない。

 ただの缶である。


 先ほどのナイフで開けたであろう小さな穴が二つ。

 どうやらここから口を付けて飲めと言うことらしい。


 外へ出て、一口含む。


 味はいたって普通。

 缶コーヒーよりは香りが強いくらい。

 特に美味しい物でもなかった。


 飲み終わった後で空き缶を捨てようとしたが、そこそこ値段がしたのでためらってしまう。

 これを捨てたら金が無駄になるような気がした。


 仕方ないので家に持って帰り、写真を撮ってSNSに投稿することに。


『別に味は普通でした』


 そう書き込もうとしたが……ちょっとまて。

 まるで俺がバカみたいじゃないか。


 SNSの評判を真に受けてバカ高い缶コーヒーを買わされるとは。

 いい笑いものだ。


 だから……書き込む内容を変えることにした。


『忘れられない体験ができました^^』


 写真付きでSNSに投稿。

 すると沢山のいいねが貰えた。


 この書き込みを見て、また他のバカが騙されてあの缶コーヒーを買うのだ。

 SNSって怖いなと、改めて思う出来事だった。

お読みいただきありがとうございました!

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― 新着の感想 ―
[良い点] SNSの特徴を活かしてオチに持っていくところが良かったです。あとはおじさんが中身を淹れるのではなかったのが不意をつかれて良いと思います。 [気になる点]  おじさんがどこから現れて、どこで…
[一言] 缶コーヒーが2000円( ゜д゜)! 私は買わないが、旦那はこういうの買っちゃいそうだなと思いながら読みました。本当、情報があるっていい世の中だけど、情報に踊らされる世の中になってしまわない…
[良い点] 気になった時点で相手の術中だったというか、こうして大衆の声ができていくのかというか、この絶妙な味が好きです。 主人公の心情から口コミを書いた人の心情も推察できて、その連続性が面白かったです…
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