缶コーヒー(ドリップ式)
休憩で立ち寄ったサービスエリア。
コーヒーでも飲もうと自販機コーナーへ向かう。
すると……なんかすごくでかいマシーンが置いてある。
どうやらドリップ式の缶コーヒーを販売しているらしい。
値段も一桁違うことに気づく。
一個2000円から3000円もする。
誰が買うんだよ、こんなの。
俺はコーヒーを諦めて出発しようとしたが……ふとSNSでの評判が気になり検索をかけてみた。
『この世の物とは思えない味だった』
『一度でいいから味わった方がいい』
『貴重な体験になる』
ありえないほど褒められている。
話題作りにはなるかなと思い、思い切って買ってみることにした。
自販機コーナーへと戻り、千円札を二枚挿入。
缶コーヒーの販売ボタンを押す。
すると軽快な音楽と共に、コーヒーがドリップされる様子が映し出される。
なんだ、案外普通じゃないかと思っていたら、仮面をつけたオジサンが現れた。
オジサンはコーヒーが注がれたアルミかなんかの器に蓋をかぶせ、なんかの機械で溶接していく。
バチバチと飛び散る火花。
ものの数分で溶接を完了したおっさんは、出来上がった缶コーヒーを手に取り、おもむろにナイフを取り出した。
そして……。
きぃ――
自販機の扉が開いた。
「お買い上げありがとうございます」
「え? あっ、はい」
野太いおっさんの声が聞こえたので、返事をする。
缶には飲み口などはなく、なんのプリントもされていない。
ただの缶である。
先ほどのナイフで開けたであろう小さな穴が二つ。
どうやらここから口を付けて飲めと言うことらしい。
外へ出て、一口含む。
味はいたって普通。
缶コーヒーよりは香りが強いくらい。
特に美味しい物でもなかった。
飲み終わった後で空き缶を捨てようとしたが、そこそこ値段がしたのでためらってしまう。
これを捨てたら金が無駄になるような気がした。
仕方ないので家に持って帰り、写真を撮ってSNSに投稿することに。
『別に味は普通でした』
そう書き込もうとしたが……ちょっとまて。
まるで俺がバカみたいじゃないか。
SNSの評判を真に受けてバカ高い缶コーヒーを買わされるとは。
いい笑いものだ。
だから……書き込む内容を変えることにした。
『忘れられない体験ができました^^』
写真付きでSNSに投稿。
すると沢山のいいねが貰えた。
この書き込みを見て、また他のバカが騙されてあの缶コーヒーを買うのだ。
SNSって怖いなと、改めて思う出来事だった。
お読みいただきありがとうございました!
感想を頂けますと、大変うれしいです。