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episode17.第一皇孫

 ぜっっったい理解不能長文が出てきて頭がパッパラパッパ―(゜∀゜)アヒャになると思うので、お気を付けください。

 彼女を見て、セレネは慇懃に挨拶をする。


「これはリュミナス姉様。お久しぶりで御座います」


 そこにいたのは目の下にクマをくっきりと付けた少女。彼女の名はリュミナス・H・ルオンノタル。神聖帝国の第一皇孫だ。容姿は少し幼児体形でセレネよりも背が低く一見年下のようにも見えてしまう。しかしこれでもセレネよりも130歳は年上だったりする。


 確か、180歳だったか。


 まあ、この帝国では普通にある年齢である。


 彼女は帝立ルアシェイア中央大学を全ての学部で学び、卒業した変人とよく言われる。もっと言えば学部ができる度に入学しては卒業しているらしい。完全に暇つぶし感覚なのだろう。おかげで彼女はあらゆる分野で博士号を持っている天才だ。


 そして何より違う分野でも関係ないとばかりに首席を維持し続けた天才でもある。噂によれば彼女が入った学部で同じ学年で通えば主席は絶対に取れないとかなんとか。そんな秀才さを見せつけられてしまうそうだ。


 私が大学行く時には来ないでほしいな……。


 今現在は皇族の公務をほぼ全て放り出して色々な発明や設計を大学の研究室を渡り歩いて生み出しているそうだ。おかげで本来は繋がりのなかった研究が化学反応を起こして世界にはない発明をしているというのだから、きっと良いことなのだろう。


 皇族の立場を考えれば公務をすっぽかすなど許されることではない。しかし彼女の実績と実力ゆえに黙認されてしまっている。皇位継承権も本来セレネよりも上のはずだが、振る舞いが相応しくないとして剥奪されている。


 まあ、本人も気楽でいいと言っているのだけど。


 因みにリュミナスとセレネはあんまり仲が良いわけではない。人間種(ロイテ)で言うと最早時代の異なる人物だ。話がどうにも合わないこともままある。お互い本来いとこ同士だが、皇族の間では姉妹と見なす文化があるためセレネは姉様と呼ばせて頂いている。


「ひさしぶり~。どう? わたしの自信作は~」


 リュミナスは手をひらひらと振って挨拶し、件の艦艇を見上げた。そして退屈そうに自分の天色の髪を弄っている。セレネはそれにどう答えて良いものか困り果ててしまった。


「え、えっと……その……実験兵器にしては量産性も良いのではないでしょうか……?」


 とりあえず褒め言葉を探しておく。結局薄っぺらいものになってしまったが。


「あらあら、わたしが実験兵器なんてものを量産すると思って?」


「いや、しかし、これは流石に予算の無駄遣いでしょう?!」


 船を空に飛ばす。なるほど、ロマンに溢れた空想だ。


 しかし現実に飛ばすとなると用途が意味不明すぎる。


 まず空を飛ぶくらいなら戦闘機の大量投入で済むし、コストが安い。神聖帝国の戦闘機一機で小国を滅ぼせるだけ火力を出せるのだから。


 それに、海に浮かべるよりも莫大なエネルギーを食う。船なら何もしなくても浮けるが、これは常にエネルギーを消費しなければ使えない。浮かぶだけで精一杯になりそうだ。


 そして何より危険性が高い。海の上ならば被弾しても浮力を物理的に維持できるが、空中ではすぐさま自由落下。からの強烈な衝突による圧死だ。


 他にも色々あるが、造るだけ無駄な兵器としか言いようがない。


 しかしリュミナスは自信満々に続ける。


「海洋も大陸も関係なく機動打撃群を展開できる。これは相当な優位よ。それに今の兵器は直撃すれば一撃で相手を轟沈できるわ。空も海上も関係ない。そして何より想像生命体(エスヴィータ)の脅威がかなり減る」


「屁理屈にしか聞こえません」


 まさに屁理屈だ。ハイリスクローリターンの意味不明兵器でしかない。


 世に言う、トンデモ珍兵器……。


「それに諸々の問題はわたしが解決したわ。深層量子理論……あ、これはわたしが長年専門にやってる深量子力学の理論ね~。この理論から対生成の際に生じる対称性の崩れの頻度を加速器の中で意図的に、かつ電気的に偏らせられることに成功したのよ。もちろん実験でも同様の結果を得られたわ。これで何ができるか、あなたなら分かるでしょう? そう! これはある種のビックバンの再現を連続としか思えない断続性で発生させることができているの。そしてそれはわたしたちに多大な恩恵をもたらしてくれたわ。真空がある限り、宇宙がある限りエネルギーを生み出し続けることが可能になったのよぉ~。あ、もちろんエネルギー保存則はちゃんと保ってるわ。おかげで船の周りは大気中で放射線まみれになってしまったけど……まあ、些末なことね。これを使えばあと半世紀以内にはブラックホールのハードディスク化が可能かもしれないわ。それに特定条件下で時間の経過をマイナス方向にして実質的なワープ航行もいつか実現するわよ。深層量子理論さまさまね~。まあ、それでもこのエンジンはまだまだ成熟してない技術だから我が神聖帝国の核融合炉には今のところちょっと及ばないんだけど、それはすぐにわたしが解決させるわぁ~」


 自信満々に語る彼女だが、セレネには彼女が何を言っているのか全くわからない。


「深量子力学の基礎となる方程式、カレンツォア方程式を紐解くのは大変だったわぁ~。かか様でさえ頭を捻ったのよ? 最適解を見つけられたのも奇跡に近かったわ。でもそのあとは、その解を応用して――」


 それでもリュミナスは止まってくれない。もうセレネはパンク状態だった。リュミナスの言葉が右から左に流れ出て行ってしまう。


「あとは、わたしの専門と関係のある量子重力理論を用いて、電気的に空間を歪ませることもどうにか実現させたわ。まあ、あの船を浮かばせてノロノロ動かすのが現状ではいっぱいいっぱいね。大体30ノット出せれば御の字かしら。そんなことをしたらエンジンが対消滅反応を起こして壊れかねないけども」


 なんか、聞いてるだけで疲れてきた。どうしようか……。


 どう終わらせようかと悩むセレネだったが、その願いはすぐに叶うことになる。リュミナスが唐突にあくびをしたのだ。


「ふわぁ~……。……まあ、専門的なことを言われてもあなたにはつまらないものね。理解できなくても構わないわ。どちらにしても、あなたがこの船に乗ることは決定事項よ」


 なるほど。配属命令の意図はそういうことか。


 つまり、固定概念なしで実地試験を行い、戦訓を積めと。


 ……このへんてこ兵器の??


「じゃあ、わたしはまた寝るわ……。報告書楽しみにしてる……」


 そう言ってそそくさとリュミナスは退散して行ってしまった。


 相変わらず眠そうなのはどうにかならないのだろうか?

 一応、ここは仕事場だろうに。


「姉様がおかしくなったのか、私が理解できていないのか……」


 きっと製造されているということは神聖帝国として内閣も主上陛下もお認めになられているのだろう。

この役に立つのかわからない兵器を。


「では、艦内をご案内いたします」


 リムエルが歩きだし、セレネもあとに続く。


 そんな時、けたたましいサイレンが基地に鳴り響いた。

 専門的な話はチンプンカンプン(*'ω'*)――。


【用語解説】

・リュミナス

『やわらかい光で明るく輝く』という意味。現実世界の日本ではルミナスと表記されるが、神聖帝国では方言のように少々異なる発音で伝えられた言葉。もしくは意図的にそのような発音を用いられた結果。

180年前に彼女が誕生した際、世界が絶望的な状況の中にあって明るい希望となることを願われて母親に名付けられた名前。そして実際彼女と彼女の母親の発明によって神聖帝国の技術躍進は進み続けている。


・かか様

小さい子供が母親を敬って使う呼び方。

まあ、つまり、リュミナスって結構可愛い呼び方してるんですよね。容姿も相まって本当に子供みたいに見られることもあったりします。


【解釈について】

この世界の小国は他の国の庇護を常に受けなければ滅びてしまう国のことです。大国は他の国も庇護する国力を有する国家です。それ以外は中堅国家みたいな呼ばれ方をしていると思います。例を挙げれば神聖帝国は大国ですが、その帝国内に存在している国は全て小国です。


現実世界には、流体力学の基礎方程式というものがありまして、それはかなり浅い階層の流体についての方程式です。そして深さのある、深海のような深層の流体力学は基礎方程式では説明ができず別の方程式が必要となってきます。しかしこの深い階層の方程式を発散させないように解いていくとなんと浅層の流体力学の方程式が導かれるのです。しかし浅い階層の方程式からは深い階層の方程式は導くことがかな――――――り大変。(できないかもしれないけど専門的すぎて知らない)

(こっからは妄想と思ってください(*'ω'*))

そして量子力学にも浅層と深層の概念があり、本作世界では浅層の量子力学を『量子力学』、深層の量子力学を『深量子力学』や『深層量子理論』などと呼んでいます。ただしインターネットや人の繋がりもほとんどないため、このような概念は神聖帝国と少数の組織しか知りません。今現在現実世界の人類が取り組んでいる量子力学は全て浅層に当たります。深層があることすら発想はなく、流体力学と同様に深層の方程式(カレンツォア方程式(2250年前後発表だった世界))が発見されればさらなる科学の発展は、この小説のようになるかもしれませんね(調べた範囲だと、この世界にカレンツォアさんはいないみたい?)。浅い方の方程式から深い方の方程式を導出するのは流体力学と同じように難しすぎますからそもそも見つけられるかどうかは、運よく天才が生まれて運よくその分野を研究して運よく時間があって運よく人々に受け入れられるかどうかです。

まあ、私はその時代が来るまでのんびりSFを眺めて過去の未来を思い出していましょう。いつかは誰かが論文出すと思うので( *´艸`)ワクワク。


 ブラックホールのハードディスク化、時間経過のマイナス方向変化によるワープ航法。これができても私の想定する世界が生まれない……ほんとに遠い未来だ。

こういう話をするとカルダシェフスケールの話が出てくるけど、あれって省エネについて考慮してないから正しいのか???と私は思ってるのでもっと正確にしたものを作ってみたいですね。省エネを考えると技術発展的には絶対熱電球よりLEDの方が上なのにエネルギー消費量は熱電球の方が多いのですから。

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