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浮気された令嬢、猫を飼う

作者: 下菊みこと

名付けのシーン追加しました

私はアリス・ベルナデット。公爵家の一人娘です。私には最近悩みがあります。婚約者のラファエル・アンブロワーズ様の浮気です。ラファエル様は侯爵家の次男で、学園の卒業後に私の元へ婿養子になるのが決まっているのですが…最近、男爵令嬢のリナ・シャンタル様とずっと一緒にいて、学園でも噂になっているのです。恋愛結婚でも無し、愛人を囲われるのは構わないのです。ただ、これ以上噂になるのはさすがに…せめて結婚して子供をもうけてからにしていただきたい。


そんな私の思いとは裏腹に、ラファエル様は今日もリナ様と昼食を仲良く食べています。私は居た堪れず、食堂から逃げるようにして学園の中庭に。するとそこには大型の猛禽類に攻撃され、今にも連れ去られそうな黒猫が。私は思わず突撃して黒猫を救出。まだ子猫の黒猫は、オッドアイの目をパチクリ。私は大型の鳥から猛攻撃を受けました。


「貴方、どうしてあんなところに一人でいたの?親御さんは?」


「にゃーん」


「…だめね。猫語はわからないわ」


とりあえず、どうせ学園の卒業に必要な単位は取得済みの私は思い切って黒猫と一緒に荷物を纏めてベルナデット家に帰りました。いきなり寮から出てきた私を見た両親はぎょっとしたものの、滅多にわがままを言わない私が猫を飼いたいと言ってボロボロの子猫を連れ帰ったのを見て受け入れてくれました。まあ、ラファエル様の噂が耳に入っていたのが大きかったのだろうけれども。


黒猫は、とりあえず動物に詳しい使用人に見てもらって薬を塗ってあげて美味しいご飯を用意しました。ガツガツ食べます。よほどお腹が空いていたようです。黒猫はトイレを用意すると、教えなくてもすぐに覚えました。飼われていた猫なんでしょうか…?だとしたら、飼っていた人には申し訳ないかもしれないですが…早くも黒猫が可愛くなった私は、黒猫を手放す気などありません。


「ねえ、貴方お名前は何がいい?」


「にゃあ」


黒猫は大人しく私の膝の上にいたのですが、名前を聞くと私の膝から降りて本棚の方に行きます。そして、昔懐かしいある絵本をトントンと前足で示します。


「…ルイの大冒険?」


「にゃあ」


「ルイって名前がいいの?」


「んなぁ!」


ご機嫌に返事をする黒猫。


「じゃあ、貴方は今日からルイよ」


「んにゃ!」


「ルイ」


「にゃーん」


「うふふ、可愛い子」


「んな?」


数時間前にはあれだけラファエル様のことで悩んでいたはずなのに、いつのまにかどうでも良くなりました。猫って凄い。


ー…


「すみませんでした!」


「シャー!」


「本当に申し訳ない!」


「シャー!」


「心を入れ替えます!もう一度やり直してください!」


「シャー!」


あれから半年が経ちました。私はルイとラブラブ生活を送り、悩みも忘れて幸せに過ごしていましたが、突然ラファエル様が屋敷に現れ私に土下座しています。どうもラファエル様のご両親が、とうとう私の両親から婚約はなかったことにして欲しいと言われたらしく…。


「ルイ、落ち着いて」


「シャー!」


そして何故か、私とラファエル様の間に起きたことなど知らないはずのルイがめちゃくちゃラファエル様に威嚇します。


「アリス、本当にリナとは縁を切ったんだ、信じてくれ!」


「シャー!」


「…えっと。とりあえず立ってください、ラファエル様」


「…本当に申し訳ない」


「…もういいんです。ただ、結婚は家同士の約束事。両親が婚約解消を決めた以上私としては…」


「そこをなんとか!アリスから説得してくれ!」


「シャー!」


「ていうかさっきからなんなんだその猫は!躾がなってないな!そんな猫放っておいて、僕の話に集中してくれないか!」


「…は?」


バシッ!


その瞬間、私はラファエル様の頬を思い切り叩いていました。


「…え?アリス?」


「…ラファエル様。これがお返事ですわ。さようなら」


「にゃーん」


ルイを馬鹿にするラファエル様なんて、もう知りません。そんな私にルイは満足そうな顔をして、私を先導して応接間を出て行きました。私ももちろんその後ろをついて行きます。


「ルイ、ありがとう。貴方のおかげで踏ん切りがついたわ」


「にゃーん」


ただ、不思議なのはルイは基本的に人懐っこい上に人に対して威嚇するなんて初めてなのです。


「ルイ、貴方は不思議な子ね」


「にゃーん」


ー…


その後、私は両親から勧められた相手と何度かお見合いをしたのですが、いずれのお相手もルイが激しく威嚇し、ルイ至上主義の私はそんなお相手と上手くやっていける自信が持てずお断り。そんな中で今日は五回目のお見合いです。


「ご機嫌よう、アリス嬢。今日からよろしく頼むよ」


「にゃーん」


「あら?」


ルイが威嚇しません。


「ヴィクトル様はルイから嫌われないのですね。よかった」


「うん?君、ルイっていうのか。僕は君の主人の未来の婿、ヴィクトル・エヴァリスト。公爵家の三男だよ。よろしくね」


「にゃーん」


すりすりと、ヴィクトル様の足に頬を寄せるルイ。なんとなくですが、ヴィクトル様とは上手くやっていける気がしました。


ー…


それからさらに半年。学園を卒業し、私はヴィクトル様と結婚しました。ヴィクトル様とはお互いを信頼し合い、とても充実した毎日を送っています。


ラファエル様は、両親から見捨てられ中央教会にて出家。しかも、何故かあの後猫に遭遇するたびに引っ掻かれたり噛みつかれたりと攻撃されるようになり、猫を神使として祀る中央教会にて迫害されている模様。


同じくリナ様も、ラファエル様から捨てられて後ろ盾を失うと最果ての修道院と呼ばれる戒律の厳しいと評判の修道院にて出家。そして猫から大いに嫌われて、修道院内で村八分状態らしい。


他にも、ルイが威嚇していた私の婚約者候補だった人達も酒癖が悪かったりギャンブルにハマっていたりと、学園を卒業後に問題が出るわ出るわ。ルイには感謝してもしきれません。


「ルイ、案外貴方が神様の御使だったりしてね」


「にゃおん」


「ふふ、なんてね」


そんなこんなで、今日も今日とてルイを可愛がる一日が過ぎるのでした。

敦君はいつだって楽しそう


という短編もよろしくお願いします٩( 'ω' )و

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 地の文が読みにくい。もう少し途中で適宜改行されると読みやすいかな。
[気になる点] ルイの正体
[一言] 可愛いは正義。 猫は正義。 可愛い猫は最強ですね。
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