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君を愛している  作者: シロガネ
EP8 君を愛している
82/84

8-3

 稚奈に説教された翌日から総司はさっそく学校に登校することとなった。朝登校して教室に入った際には無茶苦茶心配された。一部のクラスメイトは座っていた椅子から転げ落ちるほど。


 総司が休んでいた理由はなんとなくだが分かっていたようで、そのことに変に触れようとしなかったが、総司がしっかり解決したと伝えると、適度に触れてくるなど、冬休み前とは変わらず接してくれるクラスメイト達。

 そんなクラスメイト達に助けられてばかりの総司だった。


「あ、そうだ総司! 来週から修学旅行だから準備しとけよ。ありがたいことに玲奈班だぞ」

「……は?」


 まあ浩太からとんでもない情報を伝えられて戸惑ったりもしたが。




 授業は授業で、休んでいる間のことは何とかなったらしい。優しい先生たちでよかったと思った総司だが――


「じゃあ、間宮。しっかり復習しておくように」

「はい」


 休んでいたからといって依怙贔屓されるわけではない。まさしくあれは、あれ。これは、これである。

 遅れているからと言って手を抜いてくれるわけではない。例え分からなくても授業中に先生から当てられることはある。


「ありがとうレーちゃん」

「どういたしまして。ここもしっかり復習だね」


 どうやら新学期早々席替えが行われたようで、近くに座っていた玲奈や浩太、そのほかのクラスメイトに助けられている。




「皆さん、今日から修学旅行です。修学旅行では――」


 総司が登校したのは水曜。その翌週月曜から修学旅行だったと言うことで超ギリギリで修学旅行の準備を行った総司。間に合ったのはひとえに玲奈の協力があったからだろう。


「――ですが、スキースノーボード実習では怪我のないように、また観光の際には他の方に迷惑をかけないよう――」


 総司たちの高校ではスキースノーボード実習が行われ、また近くにある観光地もめぐることになっている。冬ならではの修学旅行である。


 もし衣里が一緒にいれば。そう思ってしまうが、そう思った分だけまた周りに迷惑をかけてしまうのは目に見えていた。完全には払えなかったが、その考えを意識から遠ざけると、2年生および引率の先生たち全員前で挨拶をしている生徒に目を向けた。




 帰ってきたら帰ってきたらで今度は学年末テストがやってくる。


「やっべぇ。授業聞いてないから全然わかんねぇ」

「総司。それは自業自得だ。諦めて来年も2年を過ごせ」

「八重柱くんそんなこと言っちゃだめだよ。ソウ君、いっしょに勉強しようか」


 ある程度は自分でやりつつ、それでも分からない時は玲奈を含むクラスメイトに教えてもらう。

 嫌がることなく、むしろ自分たちがしっかり理解しているかの実験台――練習台になってくれるとよろこんで教えてくれた。なんなら、全員で教室に残って勉強会をするしまつ。

 そんなクラスメイトを失望させないためにも、勉強に集中する総司だった。




「それではきりーつ! 礼!」

「「「ありがとうございました!」」」


 気が付けば日にちは飛ぶように過ぎ、テスト最終日を終えていた。クラスメイトのほとんどが総司に引っ張られて残ってテスト勉強していたためか全員がやり切った感に満ち溢れていた。


「ねぇ、ソウ君。もしよければ……一緒にどこかに食べに行かない?」

「うーん、そうだな……レーちゃんはいいの?」

「大丈夫だよ」


 やりきった感があるなか、それぞれが思い思いに過ごしていく。

 玲奈に誘われて少し躊躇した総司。例え断ったとしても玲奈ならなんとなく察して嫌な顔しなかっただろう。そんなことをふと思ったが、なんとなく衣里に「行ってこい」と言われた気がした総司


「……それじゃあ、行くか」

「ありがと、ソウ君」

「俺の方こそありがとうだよ」




「なあ総司」

「なんだ浩太?」

「春休みはどうするつもりだ?」


 気が付けば3学期も終わりを迎えていた。2年生として登校するのも最後の日となった終業式。クラスメイト全員がテストをなんなく終え、明日からは優雅に春休みとなる。彼女持ちの浩太はすでに決まっているのは総司でも分かった。


 ただ浩太からすれば総司がどのように過ごすのかが気になっているようだ。誰も何も言わなかったが、また総司が戻ってしまうのではないか。そんな気持ちがしていた。


「どうしようか悩んでる。1.2年の復習でもするかどうか」

「うわぁ……真面目かよ」


 一応することは決めていたと聞いて安心はしたが、別の意味で心配になる浩太。そんな気持ちを総司はつゆ知らず。


「俺としていろいろ思うことがあってな」

「……もしかして……進路か?」

「ああ」


 一瞬「蘇摩さん関連か?」と聞きそうになったが、言い直した。実際総司も浩太がそう言いたかったのだろうなとはある程度予想が付いていたが、触れなかった。


「別に総司がそうしたければ俺は何も言わない。何ならできることは手伝ってやる。だから絶対1人で抱え込むな。テスト前の時みたいに頼ってくれ」

「ああ。頼らせてもらうよ」

「それでいい」


 ふっと笑った総司につられるかのように浩太も笑った。だがすぐに浩太は真面目な表情になる。


「だが総司。その前に」

「なんだ?」

「せっかくだし、どこかに遊びに行くか?」

「突然だな」


 全く関係のない話になって驚く総司を放って浩太は続けた。総司は全く気が付いていないが、総司の後ろにはクラスメイト男子が3人ほどニヤニヤしながら立っていた。

 実は浩太が頼れと言ったあたりからいた。


「せっかく春休み始まるんだし、遊びに行かないと損だろ。な?」

「あったりめぇよ!」

「と言うことで総司。おめぇの拒否権ねぇから!」

「じゃあ早速行くか!」


 衣里に総司を取られっぱなしでろくに遊びに行く時間がなかったクラスメイト達。遊びに行くというよりテストの打ち上げと2年生、そして良きクラスメイト達との最後の時間なんてたいそうなことを掲げて総司が所属するクラス全員で遊びに行くこととなった。

 花見の季節である。




 そして季節は再び春に。


「また今年も同じクラスだね!」

「ああ。改めてよろしくな」

「よろしく、ソウ君」


 全員と言うわけではないが、2年に引き続きまた同じクラスにな人達もいる。だがほとんどは入れ替わっている。もちろん全く知らないやつばかりと言うわけではない。体育の時に話したことがあったりしたやつもいる。


「おいおい総司。俺も一緒ってこと忘れるなよ!」

「お前は一緒のクラスになった彼女といちゃついてろ、浩太!」

「ハーッハッハッハッ! ソージ! このオーサムなワタシが来たからには安心しろ!」

「ジョージは相変わらず元気そうで何よりだ」


 どうやらまたこのクラスは騒がしくなりそうであった。


「ソウ君はこのあとどうするの?」

「一度職員室によるかな」

「何かやらかしたのか?」

「浩太、てめぇといっしょにするんじゃねぇ!」


 始業式そうそうから職員室に行くということを聞いて少しだけ驚く玲奈とは正反対で、浩太とジョージがニヤニヤしてくる。いつのひかやったようにボディーブローを入れる真似をして2人を黙らせると、玲奈を安心させるために説明する総司。


「少し進路について相談したくてな」

「え、進路?」

「……やっぱりか?」

「ああ」


 この時期に進路をすでに決めている人は少ないとは言えないが、多くもない。そのためか玲奈は驚くが、浩太はなんとなくよそうが付いていたようだった。


「じゃあ、あんまり遅くならないようにさっさと行ってくるわ」


 そういうと総司はとりあえずメモ帳とペンを持つと職員室に向かった。




 そのまま季節は流れるように進み、気が付けば夏。去年も行った海岸清掃をしつつ、総司と浩太は話していた。

 すでにテストは返却されている。そのためか自然とテストの点の話になっていた。


「お前本当によくやるよな。3年になってまた難しくなったのに……」

「まあこれでも足らないんだけどな」

「あれで足らないって、これ以上上を目指すのは俺には想像できないな」


 自分のことにも拘わらず、浩太の呆れた感想に頷いて同意する総司。

 総司の進路は大学の医学部。そうなれば学力はかなりの物が要求される。今でも頑張っている総司だが、やはりもう一歩足りていない。


「夏休みは勉強漬けか……」

「ソージ、無茶はするなよ?」




「どう、ソウ君?」

「すごく似合ってるよ」

「お世辞でもうれしい。ありがとう」


 季節は夏真っ盛り。受験勉強もいいが、あまり詰めすぎるのは良くないと、玲奈に引っ張り出されて県でも有数のモールへと遊びに来ていた。

 ほとんど1日中勉強していると言うこともあって、いいリフレッシュになってはいる。


「ソウ君。今絶対、衣里ちゃんのこと考えてたでしょ」

「ああぁ……すまん」

「まあいいんだけど」

「本当にすまん」


 少し拗ねたような表情をする玲奈に申し訳なく感じる総司。ここ最近は心に余裕が出てきたとはいえ、ふと思い出してしまうことがある。


 総司としては顔に出していないつもりでも、周りから見れば一目領らしく、そのたびに少し呆れた表情をされる。


「申し訳なく思うのだったら、もう少しだけ付き合ってよね」

「それぐらいお安い御用だ」

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