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君を愛している  作者: シロガネ
EP7 フクザツな気持ち
76/84

7-9

「よーし、それじゃ通知表は全員にわたったね。ちゃんと保護者に見せなさいよ。それと冬休みについては冊子を読んでおくように。クリスマスに正月に、いろいろあるけど羽目を外し過ぎないように」


 2学期最後のホームルームにて先生のあいさつが行われる。ほとんどの人は明日から何しようか考えているため半分ほどしか耳に入っていないだろう。


「一部の人達はもう数日顔を合わせることになるけれど、それ以外の人達は次会うのは新学期」


 それを聞いて、定期的に実施される“ある行事”と日常的な態度から割り出された“ある数字”が惜しくも足りなかった一部の人達が項垂れる。何の数字かは言わなくてもわかるだろう。

 その人達が集まってお勉強するのだ。


「それでは、新学期も元気で会えることを楽しみにしているから。じゃあ、号令!」

「きりーつ! 礼!」


 先生の言葉で学級委員長が号令をかける。全員が色々なトーンで「お疲れ様でした」といい、そんなわけで終業式もホームルームも無事に終了した。


 冬休みの予定を立てたりするためか残る生徒もいれば、そそくさと帰る生徒もいる。

 中には始まってすらいないのに「終わった、俺の冬休みが終わった」と嘆く生徒もいるが気のせいだろう。


 号令が終わるや否や総司の席のもとに浩太がやってくる。荷物は持ってきていないが、浩太の座っている席の上にはカバンが置かれていた。帰る準備はできている。


「お疲れ、総司。1年間どうだった?」

「お疲れ。転校してきてから色々あったが、なかなか面白かったな。なんならこっちの学園の方がおもしろかったぞ」

「そう言ってくれると最初から通っている俺としちゃなかなかうれしいな」

「それに――」


 そこでふと視線を前に向ける。

 そこには総司の大事なクラスメイトであり、よく話す男子生徒が頭を両手で押さえて上半身を大きく仰向けに反らせ、「うぉぉおぉぉお!」と唸っている生徒がいた。背骨が入っているか怪しいほどに折れ曲がって頭が床にくっ付いている。きっと少し前にあった定期的に行われる大事な行事で大事な数字が足らなかった人なのだろう。


 そんなクラスメイトを見て総司は笑みを浮かべた。


「面白い奴もいるしな」

「……無理、しなくていいんだぞ」


 残念ながら笑みというより若干苦笑い気味だったためか、浩太は何とも言えない表情をしていた。


「そういえば浩太は行かないんだな」

「え? どこへだ?」

「お前の彼女の所だよ」


 何となくだが行きそうだと思って尋ねると、ふっと浩太が笑った。


「出来る限り一緒にいたいって気持ちはあるが、あいつにも友達はいるんだよ。その友達関係を壊してまで俺と一緒にいろなんて言えるか。それは総司、お前も一緒だろ?」

「まあな」


 頷いた総司の視線は自然と衣里の方へ向いた。どうやら冬休み中に一緒に遊ぼうと誘われているらしい。ただ誘ったクラスメイト女子とは別のクラスメイト女子がどうせ彼氏といちゃつくから無理よと笑っている。

 そんな言葉で衣里が総司の方を向き、それにつられてか一緒にいた女子や玲奈も総司の方を向いてきた。


「あいつら仲いいな」

「いいことじゃね?」

「まあな。お前が転校してくるまでは見れなかった光景だな」


 総司が浩太の方を見ると、女子たちの方を微笑ましそうに見ていた。雰囲気はお父さんとかそんな感じ。


「もしかしたら誰か手を差し伸べたかったのかもしれない。でも周りの視線とかあるはずもなかった噂で俺達は誰も手を差し伸べなかった」


 見ている感じはお父さんだが、その声はどこか後悔しているような感じがしている。ふと衣里の父親もそんな感じだったなと思いだす総司。


「総司は凄いよな。昔から」

「……そりゃどうも」

「褒めてるんだから少しはうれしがれよ」


 苦笑いする浩太を見て、ふっと笑った総司。

 転校してきたばかりなら何も失う物無いからやった。そう言うか迷ったが、そう言ったら言ったで余計に褒められると思ったので言うのを総司はやめておいた。


 少し暗い話をしたためにお互い冬休みの話をした。したつもりだが、いつの間にか無駄にデートスポットを教えてきた浩太。そのため適当に対応した総司だった。






 結局浩太の無駄に多いデートスポット紹介から1時間ほど経って衣里から帰ろうと言ってきた。どうやら一緒に話していた女子たちは予定があったり部活があったりで解散したらしい。


 昼前には終業式もホームルームも無事に終了していたが、話していると昼を回っていた。2学期お疲れ様という意味も込めてプチデートと称し、近くの喫茶店によって少し遅めの昼食をとった総司と衣里は帰宅していた。


 いつも通り総司の部屋で並んでくっつくようにしてくつろいでいる2人。なんとなく流しているテレビでは明後日に訪れるクリスマスの特集をしていた。


「あ、総司」

「どうした?」

「その、明日のデートなんだけど……」


 テレビでやっていたクリスマスの特集がきっかけと言っていいのかは分からないが、衣里が総司に話しかけてきた。ただその表情は申し訳なさそうな表情。


「どうした? もしかして予定でも入ったか?」

「その……実は今日、一度実家に戻ることになって」

「今日?」

「うん。夕方には出発するつもり」


 今日は12月23日。本日の夕方出発となれば1泊はしてくるはず。そうなれば帰宅は早くても明日。もう1泊するとなれば帰宅は明後日となる。

 総司としてはクリスマスイブにデートをしようと思っていたが、それが難しそうである。


「本当にごめん」

「気にするな。俺とはいつでも顔合わせれるけど、離れて暮らす親とはなかなか会えないもんな。ちゃんと顔見せて来いよ」

「うん。帰ってくるのは明後日の午前中。だから明日のデートは無理になってしまった。だからクリスマスの日は予定ないからその日にデートして欲しい」

「ああ分かった。じゃあクリスマスの日にデートしよう。その代わりその日は絶対デートするからな?」


 総司のその言葉に頷いた衣里は少し立ち上がると胡坐をかく総司の間に座った。時々胡坐をかく総司の間に座ることはあるが、今日は少し違って向かい合うように座る。そのまま顔を総司の肩に埋めるようにして抱き着いた。


「突然どうした?」

「……なんとなく」

「そうか」


 別にこんなことをされて嫌ということはないので、総司は衣里の背中に腕を回して抱き締めた。




 ゆっくりとではあったが、確実に時間は過ぎていった。時刻が来たからか衣里は自分の部屋へ戻ったのち、実家へと帰っていった。

病気ものが嫌いな方は、ここが本当に読み終える時です。大丈夫って方は明日以降もよろしくお願いします。

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