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君を愛している  作者: シロガネ
EP1 出会いは突然に
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1-7

 転校して最初の休みの土曜日。

 前日の夜に突然、玲奈に家に遊びに来ないかとLENEで誘われたため、総司は午後を少し回ってから公園に来ていた。


 直接行ってもよかった総司だが、いない間に玲奈は母親の再婚再婚相手の家に引っ越しした。そのため今の家の場所が分からない。

 それを相談した結果、近くの公園で合流してから玲奈の家に向かうことになった。


 予定時刻より少し早くについた総司の右手には紙袋がある。遅くはなったが、引っ越しの御挨拶用のクッキー。


 昔はよく玲奈の家へ遊びに行っていた総司。昔と言うだけあって、かなり久しぶりだ。なんなら女の子の家自体に行くのは、転校してから一度もなかったため、何年ぶりだろうと考えるぐらい。

 しかも相手は玲奈。前日の夜から緊張しっぱなしである。


「大丈夫だ、俺。いつも通りに」


 自分に言い聞かせて落ち付くよう呟く。そして大きく深呼吸をする。

 都会と比べるとここは田舎。綺麗な空気が肺いっぱいに入ってくるのを感じる。まるで浄化されるようだ。


「やっぱ田舎って空気綺麗だよな!」


 気持ちよさのあまりなぜか叫びたくなり、つい大声で叫ぶ総司。

 その時ちょうど近くにいた、公園に遊びに来たらしい母と娘の会話が聞こえてきた。


「ねぇママ。あそこに叫んでいる人がいるよ!」

「そうね。きっと都会から遊びに来たか引っ越してきた人ね。都会から離れた土地を遠郊って言うのよ。ここは遠郊だから空気が綺麗で気持ちいいの」

「そうなんだ! パパも言っていたよ。えんこうって気持ちよくていいぞって」


 田舎にいると分からなくなると思っていたが、どうやら田舎の空気の良さはわかるんだなと思いつつ総司は2人の会話に耳を傾ける。


「あら、パパも言っていたの?」

「うん。学生の女の子と交際するために、お金をいっぱい貯めないとって」

「援交しているの!? あの人を止めないと!!」


 どうやら()()()()違いだったようだ。

 きっと今晩にもあの家族は家族会議をするだろう。そう思った総司は聞かなかったことにして、玲奈を再び待つ。




「ソウくん!」


 声が聞こえたためにその方向を見ると私服姿の玲奈が総司の方へと少し駆け足気味で近づいてきていた。


 黒のプルオーバーに白のサーキュラースカートを履いている。また上にはGジャンを前を開けた状態で羽織っている。玲奈にすごく似合っている服装。

 記憶にある子供っぽい服装とは違って大人びた服装の玲奈に総司はドキッとしたが、それを表情に出すことはなかった。


「ごめん。待った?」

「いや。ついさっき来たばかり」

「そう。よかった」


 少し会話をすると玲奈が行こうかと切り出してきたので、2人で現在住んでいる玲奈の家へと向かった。その間も総司が数年離れている間に変わった街の様子については無しながら足を進めた。


 しばらくするとちょっとした住宅街が見えてきた。

 話ながらのためか、公園から栗生家まではあまり遠く感じなかった総司。実際そこまで遠いというわけでもなく、総司の住んでいるところから公園までと栗生家の住んでいるところから公園まではほぼ同じ距離であった。


 道中、現在の玲奈が住んでいる家が一軒家であると聞いていた総司だが、実際に見るとそこそこ大きくてびっくりしている。


「お、お邪魔します」

「いらっしゃい、ソウ君」


 玄関を開けて玲奈に続いて総司が家の中に入る。年月も経ち共に大人に近づいた総司と玲奈。そのため幼馴染が住む家に入ることに総司は少し緊張していた。

 その気持ちに追い打ちをかけるかのように玲奈が話す。


「お父さんもお母さんも今日は仕事。だから家にいるのは私とお姉ちゃんだけなんだよ」

「そ、そうか」


 やましい気持ちはないが、それを聞いてしまうとどうしても緊張してしまう。


 それとはまた別に、できれば玲奈の母親に引っ越しの御挨拶をしたいと考えていたが、いないのなら仕方がない。昔よくお世話になっていたと言うことで挨拶をしたかったが、また機会があるときにでもしよう。

 そう思いつつ、総司は手に持っていた紙袋を玲奈に渡す。


「遅くなったけれど……つまらない物ですけど、これよかったら。久々のご挨拶と言うことで」

「あ、これ近くにあるケーキ屋のクッキー。私、ここのクッキー大好きなんだー!」


 ここの地域ではそれなりに有名な店のため食べ飽きたのではないかと心配していた総司。だが玲奈の反応を見る限り喜んでもらえたのでほっとした。


「置いてくるからちょっと待ってて」


 そういうと玲奈は奥の部屋に向かった。その時に何やら会話が聞こえてくる。2人分の声。

 先ほど玲奈が話していたが、1人は玲奈本人としてもう1人は玲奈の姉のようである。会話を終えたらしく、しばらくすると戻ってきた玲奈と総司は階段を上り2階に上がっていく。


 部屋は階段を上がるとT字になっており突き当りに1部屋。そしてそれぞれ左右に伸びる廊下の奥に扉が1つずつ。合計3部屋が存在していた。


 玲奈はそのまま左側にある部屋へ向かった。扉には『れいな』と平仮名で書かれた可愛らしいネームプレートがぶら下げられていた。このプレートは昔、総司が子供のころに引っ越し前の玲奈の家へ遊びに行った際にもあった。確か小学校で作ったものである。今住んでいる家にはないが、総司の作った物も両親の住んでいる方にあるはずである。

 懐かしいなと思っている総司の隣で玲奈が扉を開けた。


「どうぞ」

「おじゃま、します」


 昔と部屋の大きさはほとんど同じだが、部屋自体が変わり、何より年月が経ち、部屋に置かれている家具や装飾品が子供っぽい物ではなく少女の物になっている。そんな玲奈の部屋に総司はドキドキしながら足を踏み入れた。


 壁際にはベッドと勉強机それと衣装ケースが。部屋のほぼ真ん中に絨毯が敷かれ、丸テーブルとクッションが置かれている。家具やクッションの色味までまさに女の子の部屋と言った感じ。


「飲み物の用意してくるけれど、ソウ君は何がいいかな? 紅茶? ジュース?」

「紅茶でお願い、します」

「わかった。それじゃあ行ってくるから部屋に入って座って待っていて」


 緊張からなのか変に畏まっている総司だが、玲奈は特に気にした様子を見せずそのまま階段を下りていった。

 放置された総司はどうしようかさんざん迷った挙句テーブルの前に正座した。


 良くないと分かりつつも、つい部屋の中をキョロキョロしてしまう総司。ふと階段を上がる足音が聞こえてきた。

 もう用意できたのかと思って驚き廊下の方を見ていると玲奈――ではない人が姿を現した。


「いらっしゃい」

「え? あ、お、お邪魔しています」


 にっこりと天使のような笑顔を浮かべた稚奈が姿を表したためになぜいるのかと一瞬驚いた総司、だがすぐに玲奈の母親が再婚したために義理とはいえ、稚奈が玲奈の姉になったことを思い出した。


「玲奈から聞いたのだけれど、確か玲奈の部屋に入るのは数年ぶりよね?」

「そうですね」


 少し会話をしたために落ち着いた総司は改めて稚奈の服装を見る。

 稚奈の服装は薄ピンクのワンピースに、ピンク色で半袖の丈がヘソより上ぐらいの薄い羽織を来ていた。また胸元にはアクセントのリボンが付けられている。

 雰囲気でもそうだが、服装からも年上の女性であるとつい意識してします。


 無茶苦茶似合っているな。

 総司は気が付いていないが学園では誰もが見たいと思っている稚奈の私服姿。だが実際は数少ない人しか見たことのない。そんな稚奈の私服姿に姿に総司はドキドキしていた。

 だがそのドキドキは稚奈の質問によって別のドキドキへと変わる。


「じゃあやっぱり、成長した幼馴染の部屋は昔と違って、ちょっとドキドキするのかしら?」

「そ、そうですね」


 他人から言われることによって意識してしまったためか、総司の様子が変わった。それを見て稚奈が目を細めて微笑む。


「それじゃあ私は部屋に戻るけれど、玲奈があと3分は来ないからと言って、服や下着が入っているタンスを開けちゃダメだからね?」

「下――いや、開けませんから!」


 一瞬タンスへと視線が移ってしまった総司を確認すると、「楽しんで帰ってね」と言い残して自室へと戻っていった稚奈。


 下着のありかを言った後の言葉のため、玲奈との会話を楽しむこととは別のことを楽しむように言われたような気がしてならない総司であった。




 稚奈が言った通り、約3分後に玲奈が紅茶を持って部屋に戻ってきた。

「何か大きな声がしていたけれど大丈夫?」と心配する玲奈に、若干きょどりつつも総司は「何もなかった」と答えることが出来たのであった。


 ゆっくりと紅茶を飲みつつ、こちらに転校して来てからの話を行った。

 そこからご近所情報を交換し、いつしか自然と総司が引っ越しを行ったために数年間の開いていた穴を埋めるように、お互いのことについて話す。


 玲奈の過去の話がでた時に稚奈が混ざってきた。


 ただでさえ紅茶とは違ったいい香りがする部屋に別のいい香りが広がる。

 義理とはいえ美人な2人姉妹と同じ空間にいるためか総司はドキドキしっぱなしで変に疲れるのであった。




 ドキドキしつつも、それでも2人との会話を楽しむことが出来た総司だが、気が付けば窓から差し込む光が赤らむまで、思い出と近況報告をし合ってしまった。

 ついでだし夕飯も食べていかないかと提案された総司だが、いくらなんでも突然すぎるということで辞退。もし今後このような機会があればぜひ夕飯を御馳走になりたいといって栗生家を後にするのだった。


 学校からの帰り道の際に昔のように読んで欲しいと言われて以来、レーちゃんと呼んでいた総司だが、やはり慣れなくてこれまでどこか他人行儀だった。


 それも今日半日で、訪れた時に少し残っていた他人行儀は会話をしている間に次第に薄れて行き、離れて居た距離が近づいたような――昔に戻ったような。

 そのように総司は感じていた。


 それは自宅へ帰る総司の様子に出ており、どこか軽い足取りだった。

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