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体育祭の種目決めから数日たったある昼休み。
すでに第1回目の体育祭実行委員会があったりなどの動きを見せているが、それに参加していない総司には準備が進んでいる感覚がないまま過ごしていた。
総司は浩太と、その浩太といつもつるんでいるクラスメイトの男子とともに昼食をとる。衣里はクラスメイトの女子たちに取られてどこか別の場所で昼食をとっている。
それが原因と言うわけではないが、眉間に皺を寄せて購買で買った菓子パンを総司は食べている。
「どうした総司。眉間に皺が寄ってるぜ」
「まじそれな。なんでこんな皺くちゃな奴に彼女がいるのか不思議だぜ」
余計なことをいうクラスメイト男子を放っておき、浩太に質問をする。
「いや、蘇摩って体育祭って見てるだけだろ?」
「そういえばそんなこと言ってたな」
「運悪く女子と一緒に体育したことが2回しかしたことないが、女子の話ではいつも見学みたいだな」
運がいいのか悪いのか。雨が降ったために体育館にて合同体育となったのが2度しかなかった総司達。その2回とも衣里は体育を見学していたような記憶がよみがえる。
「で、衣里に聞いたんだけど、実際そうらしい」
「ずっと見学?」
「ああ。医者から止められているらしくてな。軽い運動だと良いんだけど、体育って日によっては激しいだろ?」
「確かに。特にバスケとかサッカーとか。あとはとりあえず体育館を20周とか」
総司の言葉に納得するクラスメイト男子。
バスケはコートが狭いが5対5と言うことで全員動く。それもほぼずっと。
サッカーはコートが広い分、大勢でやるため全員で1つのボールを全力で追いかけるなんてしない。第一、大まかな立ち位置が決まっているため。それでもボールが回ってきたらパスをつなぐために移動しなければならないし、全力で守備もしなければならない。そうなれば自然と激しく動く。
体育館20周は男女ともに準備が遅れ、罰として走らされたため、完全な自業自得だったりするが、それはまあ別の話だ。
医者も体育でどういうことをするかまではすべて把握しているというわけでもないため、ドクターストップを出すしかない。
「まあそれはそうとして、体育の授業が見学なら体育祭も出れるやつなんてほとんどないだろ? というより出れないみたいだけど」
「あ、やっぱり?」
「それで間宮は何をなやんでるんだ?」
納得する浩太と質問をするクラスメイト男子。一瞬だけ話すべきかどうか迷ったが、自分ひとりじゃ何もできないため相談する。
「いや、せっかくの体育祭だし蘇摩も出れるようにできないかなって思って」
「「ほうほう」」
2人してニヤニヤと総司を見てくる。そんな2人を見るとやっぱ相談したのは間違いだったのではないかと思ってしまう総司だった。それでも自分ひとりじゃアイデアに行き詰ってしまっていたので、相談するしかなかったが。
すぐに2人はニヤニヤ顔を納めると真剣な表情で考え始める。
「そもそも蘇摩さんは激しい運動ができないんだよな?」
「そこがネックだよな」
「お前ら」
思ったより真剣に考えてくれる2人の姿に総司はうれしく感じてしまう。そんな総司に真剣な表情で2人が断言した。
「勘違いするなよ総司。俺はお前ら2人がクラスの奴にいじられるのが見たいだけだ」
「勘違いするなよ間宮。俺はただクラス男子と一緒に、浮かれているお前で遊びたいだけだ」
「お前ら……」
理由がクソ過ぎて同じ言葉を言ったにもかかわらずイントネーションが変わってしまった総司。感情によってここまでイントネーションが変わるんだなと改めて実感してしまったが、それは置いておく。
ふざけた2人だが、それでも何か手はないかとなんやかんや考える姿を見ると、やはりうれしく感じてしまった。
「あ、あれなら。だが……」
ふと浩太が何かを思いついた表情をした。総司とクラスメイト男子が浩太を見るが、それに気が付いていないようで浩太がぶつぶつと呟いている。
「よし、まあやってみるか。ということで総司。俺が何とかしてみるから安心しろ」
「出来るのか?」
「出来る出来ないじゃないだろ。お前たち2人のためにやらないとだめなんだがな」
「分かった。頼む」
浩太が何とかしてくれるようだが、一切安心できないようにも思えなくもない。それでもとりあえず頼んでおく。
ただ心配なこともあるにはあり……
「いや、まあ頼むのは頼むが、どういうアイデアか教えてくれるのか?」
ある程度予想していたが、浩太は何も言わずにやりと笑っただけだった。
その笑みが何を示しているのか分からず、総司は嫌な予感がしつつもただ任せることしかできなかった。
ちなみにだがもう1人の男子生徒は「もういっそ2人とも学校休んでデートでも行ってこい」と言ったが、総司と浩太両名から却下されたのだった。