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君を愛している  作者: シロガネ
EP6 コイビトとして
59/84

6-3

 付き合い始めたばかりのころはやはり少しでも一緒にいたいという気持ちは誰にでもある。それは総司と衣里も言えた。


 登校時や昼休み、放課後はほとんど一緒。だがそれでも授業やその他理由によって別々で移動することだってある。代表的な例が体育の時の移動時間。


 体育は基本的に男女別ということで夏休みが空けてまだ数日しかたっていないため、どうしても話題は夏休みの話になる。


 その体育へと向かう移動中、総司はクラスメイトの浩太を含む男子たちと話しをしながら更衣室へと向かって行っていた。こういう時間はきちんと友達と過ごす総司。それは衣里も同じ。

 お互い相手のことと過ごすのはいいが友達も大切にしよう。そう話し合った。そのため移動教室の時は友達と話しながら移動したりする。


「お前は夏休み何してたんだ?」

「俺か? ナンパだ」


 そういってドヤ顔をするクラスメイト。そこで総司は少し心配になった。ふととある母子の会話を思い出す。


「お前、大丈夫だったのか?」

「いや、まぁ?」

「だからあれほど船の扱いには気を付けろと言っているだろ」

「いやそっちじゃねぇよ! 同じ読み方だけどそうじゃねぇよ! てかお前にそんなこと言われた覚えないよ! 女に声かけて回る方のナンパだよ!」


 総司のボケに対し的確にツッコミを入れるクラスメイト。


 総司と衣里の関係がバレて――というより総司がばらしたのだが、それで羨ましく思ったクラスメイト男子たち。最初は暴動を起こしそうな雰囲気だったが、落ち着いた後は2人に気を使ってくれたりしたが、だからといって友情関係が壊れたりなどはない。むしろネタが出来たとより一層関わりが増えた。


「でな? プールでナンパしてきたんだが、1つ勉強になったことがあるな」

「お前夏休み中にプール行ってきたのか?」

「ああ。ドタキャンとかいろいろあって1人でだけどな」

「お前よく1人で行けたよな」


 ともかくだ、と言ってプールで難破――ナンパしてきた男子生徒が続ける。


「その勉強してきたってことが、街でするのとは違ってプールとかレジャー施設系ではナンパするときは男は2人1組で行動した方がいいってことだ。カッコよく言うとツーマンセルだな」

「え? なぜだ? どういうことだ?」


 別の男子生徒が食い気味に尋ねた。彼女持ちではあるがマメ知識とかそういう方向で気にはなる総司。この場にいるほとんどのやつが思ったのか静かに続きを待つ。


「考えてみろ。そもそもプールって遊びに行くところだろ? そんなところに女1人で遊びに行くか? 誰かと一緒に来ているだろ」

「まあな。ってあれ? 時々女1人で歩いているのを見るがあれは?」

「お前その女の向かった先を見たか? 彼氏っぽい男がいるんだぞ?」


 確かにと誰かがつぶやいた。それが聞こえたのか続ける男子生徒。


「女1人だったとしても大体はどこかに男がいる。そんなやつに声かけてもまあ無理だ」

「まあそうだろうな。1人で行ったお前とは違うだろうな」

「そうなれば標的は友達同士で来ている女2人組だ。だがこれは成功したとしてもそのあとが正直きついだろうな」

「どういうことだ?」


 ナンパに成功したらいいんじゃないのか?

 さすがにそう聞かなかったが、この話を聞いている奴らのほとんどが思った。それは話している奴も感じたようで続ける。


「考えろ。相手2人にこっちは1人だろ? 知らないやつとずっとそんな状態で話したり遊んだりするのってぶっちゃけきついと思わないか?」

「ナンパしているくせにその考えはどうかと思うが、まあ人によるだろうな。話続けられないってこともあるかもしれない」

「だからだ。合計人数は4人になったとしても1対1を作れる男2人でのナンパが楽なんだよ。さっきも話したが、女側は女2人で遊びに来ているからな」


 何人かがなるほどと納得した。話の内容がないようだからなのか、気が付けば最初の人数より増えている。見れば別クラスの男子生徒も混ざっていた。合同体育と言うことで仕方ないと言えば仕方ない。


「場合によっては、男2人で1人に声をかけることってあるだろ? あれは2対1という状況で男側が有利だからだ。必ず相手との比率を1対同数もしくはそれ以下にできるよう考えて声を掛けているんじゃないかって予想を立てた」

「ちょっとまて。男2人で女3人に声かける場合ってあるよな? あれってどうなんだ?」


 総司の後ろの方から質問が飛んでくる。それに対して話している男がいい質問だと言って回答し始めた。


「これはあくまでも俺の予想だが、あれは『一緒にいる男に女2人を押し付けて俺は1人に専念しよう』とお互い考えているからじゃね? もしくはまだ対応できると判断しているってところだな。1対2になったとしても、状態をずっと続けるわけじゃないだろ?」


 ウムウムと頷く男たち。一部の男はメモ帳を取り出してメモをとり始める。少し遠くから見ればテレビで見てる、歩きつつも記者の質問に答えているような、そんな状況に見える。


「ただ女慣れしている男は例えこちらが1人で女が2人だったとしても声をかけるかもしれないな。というよりかけるな」


 ただこれはあくまでも俺の考えだぞ。

 最後にそう言って間違いがいるかもしれないということを伝えたうえでそう締めくくる。それでもかなり興味深い話が聞けたらか、話を聞いている男共がなるほどと納得していた。


 更衣室まではまだ距離があり時間もまだ多少なら余裕がある。そのためなのか今度は別の男が挙手して話し始めた。


「じゃあ、今度は俺の話でもするか」

「どんな話だ? さっきの話と同等かそれ以上の面白さが欲しいところだが」

「合コンの話なんだけど、どうだ?」

「え、何? お前合コン行ったの? いつ? いつだ! 俺も呼べよ!」


 よっぽど羨ましかったのか話し始めた男の襟首を近くにいた男がつかんだ。腕をタップしながら苦笑いの表情で話す。


「いや、夏休みなんだけどな? 男側はまあ普通で、女側が凄かったな」

「そんな高レベルだったのか!?」


 男の言い方に興味津々の男共。彼女持ちの総司とは言えやはり少し気にはなる。浮気じゃないよな? と内心疑問に思いながら歩みを進める。

 そんな総司を置いて場の空気は難破――ナンパ話と同じぐらい面白そうな話によって最高潮になる。


「すごいってレベルじゃないぞ。左からオーク、ジェネラルオーク、オーク、オーク、ジェネラルオーク、オーク、ジェネラルオークの超タンク編成でな?」

「「「どんな合コンだよ!?」」」


 その場にいた男達の叫びが校舎に響き渡った。

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