5-13-AnotherView
本日2/2話目となります。
(やっぱり告白していたんだ。ソウ君)
花火大会があった夜、帰る時に衣里と総司がはぐれたらしく遅れてやってきた。ただ2人ともどこか様子がおかしく気になっていた。その時は何とも思っていなかった玲奈だが、ひと晩経ってなんとなく理解できた。
あの時はぐれたのではなく、人の多さに乗じてはぐれたように装ってどちらかが告白したのではないか。
でもやはり、それは信じたくなかった玲奈。
それでも総司から送られてきた文――告白した。でも振られた――を見た瞬間、予想が当たったことを知った。それも書かれ方から総司の方から告白したのが分かってしまった。それとほぼ同時に玲奈は心の中で何かが崩れたのが分かった。
一瞬それが何か分からなかったが、自分の気持ちだ。すぐに何なのかが分かる。
(初恋……実らないってやっぱり本当なんだなぁ……)
総司に思いを寄せられた衣里が憎い。そんな気持ちはみじんもわかなかった。2人の性格の相性が良かったのか、最初こそそうでもなかったが夏休みに入るころにはすごく仲が良く見えていた。
もしソウ君が衣里ちゃんに告白して成功していれば祝ってあげよう。振られていたら……その時はその時。そんな風に考えていた玲奈だが、それでもやはり気持ちは――
「あ、れ?」
気が付けばスカートの上に雨に濡れた時のような染みが出来ていく。一瞬何で濡れていたのか分からなかったが、それもすぐに分かった。
「なん、で? なんで涙が……」
知らぬ間に自分が流した涙でスカートに濡れた跡が広がっていく。このあと姉の稚奈と買い物に行く約束があり、隣を歩く姉に見劣りしないよう精一杯おめかしをした。
それが涙でぐちゃぐちゃになっていく。必死に目元を拭って涙を懸命に止めようにも、一度流れ出した涙は止まらない。
その時、玲奈の部屋の扉がノックされる。両親は共に仕事。そのため誰がノックしたかなんて見当が付く。
「玲奈。準備は――どうしたの?」
扉を開けて顔を見せる稚奈。玲奈の泣き顔を見てすぐに異変に気が付く。隠すつもりがない玲奈は正直に話す。
「私……失恋しちゃった」
以前から稚奈には相談していた。というよりバレていた。そのためいろいろと話しており、稚奈も協力はするようにしていた。そういうこともあり驚いた。
今まで今の玲奈と同じように失恋した友達は何人もいたが、義理とは言え今では大事な妹である玲奈。そんな玲奈に何と言えばいいか稚奈は分からなかった。だから……
「そう」
ただそう言って抱き締めて頭を撫でてあげることしかできなかった。
しばらくするといつもの玲奈に戻ったため稚奈が離れる。泣いたばかりか目は赤くなってしまっている。だが先ほどまでの――これまでの玲奈とは違ったものを目の奥に見えた。それは玲奈の表情にも出ていた。稚奈は見たことなかったが、浩太が見ればこういっただろう。
総司が時々やる、誰かを助けようとするときの顔に見えるぞ。
「ねえ、お姉ちゃん」
「どうしたの?」
「少し手伝って欲しいことがあるの」
そういうと何を手伝って欲しいか説明する。それと同時に玲奈は総司が振られた予想を話した。話を聞いた稚奈は困惑する。
「別にいいわよ。でも成功するのかしら? 何よりあなたが幸せになれないと思うわ」
「別にいいよ。私は私でなんとかするから、今は2人の方を優先かな。それじゃあお姉ちゃん、お願いね」
「ええ」
そういうと玲奈はスマホでどこかに連絡をとり始めた。もちろんその相手は誰なのか先ほどの説明で告げられていたので予想はついていたが、稚奈はあまり納得できていなかった。というのも――
(蘇摩さんに本音を言わせて間宮君と恋人にさせるなんて)
玲奈の背中を見つめながらそんな風に思っていた。先ほどの説明で衣里が本音を隠しているのではないかと玲奈が思っているのはわかった。それでも確定ではなさそうで、失敗する可能性だってある。
そこで思考を打ち切る稚奈。今は玲奈を手伝う方を優先することにした稚奈は、自室に戻って総司に連絡を送った。