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君を愛している  作者: シロガネ
EP5 意識と魅力と告白と
50/84

5-9

「なあ」

「ん?」

「お前ここ数日無警戒すぎでは?」


 総司を信用しているためか、そもそも男と見ていないためなのかは分からないが、朝から晩まで1日のほとんどをずっと総司のベッドの上で寝転がっている衣里。寝転がっているために服がはだけているなんてことはない。そのあたり衣里も気を付けているようで時々確認をしている。


「え、なに? お前、オレに欲情して獣になるの?」

「そ、そういうことじゃねぇ!!」


 総司の怒っている顔が面白いのか、衣里が冗談であることを伝えつつ腹を抱えて笑う。ただ総司の方は冗談じゃすまなかった。


 衣里が泊った翌日以降、布団を干せていない日が続いており、そのくせ衣里は朝から晩までほどんど寝転んでいるため、衣里の匂いが毎日のように付く。そのため夜寝る際には嫌でも衣里を意識してしまっている。


 そしてつい先日、読書感想文用の原稿用紙を買いに行ったときは布団を干したとはいえ、その翌日からは再び衣里がこうしてベッドの上でゴロゴロし始めた。つまり1日しか衣里の匂いがしないベッドでしか眠れていない。

 匂いが付いて意識してしまうからとはさすがに言えず、どうしていいか分からなかった総司。


「てか、ベッドじゃなくてソファーで横になれよ」

「ソファー硬いじゃん。それに、こう……なんか落ち着くから?」

「落ち着くってなんだよ」

「いや……あれ? ん?」


 何か考えているのか首をひねる衣里。しばらくしたとき、何かに気が付いたらしくはっとした表情をする。と思ったら次の瞬間には顔を真っ赤にしてベッドに突っ伏した。


「~~~~~――ッ!!」

「おいちょっと待て! 何している!!」


 変な声を出しながら顔をこすりつけ始めた衣里を全力で止めようとする総司。ただでさえ毎日衣里の匂いがして落ち着かない。なんなら1周回って衣里の匂いがないと眠れなくなるのでと言うところまで来ている。だからどうしても止めなければならなかった。


 そんな総司の気持ちとは裏腹に、今度は総司のベッドの上をゴロゴロと転げまわり始めた。何なら枕を顔に押し付けながら。布団どころ今度は枕から衣里の匂いがしそうで――


「ぎゃぁぁぁぁぁあああ!!」


 嬉しいと言えば変態的に見えるが、年頃の男子としてはそんな恐ろしいことが起きそうで総司が悲鳴を上げた。




 なんとか衣里を止めることにした総司。


 総司のベッドの上でゴロゴロとしていた本人は反省するかのように、先ほどまで転がっていたベッドを背もたれにするように座り込んでいる。

 なんなら恥ずかしさのあまりか端っこのようで体育座りをしてしゅんとしている。


 そんな衣里を見てため息をつきつつ総司が衣里からスマホに視線を移した瞬間、LENEに連絡が来たことを告げる通知が表示される。

 ちなみにだがすでに読書感想文は書き終え、残りの課題を次々と消化していっているところ。


『総司。前話していた花火大会に行かないか?』

『お前彼女と行かないのか?』


 送り主は浩太。そう言えば花火大会あったなと思いつつ疑問に感じたことを尋ねる。こういう花火大会とかは恋人がいた場合友達を誘わずに恋人優先で行くというイメージがあった。

 送ってすぐに返事が帰ってくる。


『行くぞ?』

『じゃあなんで俺と行くんだよ。途中で1人になるとか勘弁してくれ』

『安心しろ。何人か誘うつもりだ。というより誘ってOKを貰った』

『俺が知ってるやつだよな? 知らないやつが一緒とか勘弁してくれよ?』


 今度は既読はすぐについたが返事が帰ってこない。まあいいかと思って課題に戻ろうとした瞬間返事が帰って来た。


『安心しろ。お前の知っている人だ』


 その言葉を見た瞬間、数人で遊びに行ったときのことを思い出す。その人達なのだろう。そう思っていた総司だが、続けてくる浩太の言葉に驚く。


『栗生家姉妹』

「マジかよ!」

「どうした?」

「いや、なんでもない」


 思わず声が出てしまった総司に衣里が視線を向けたが、総司の言葉に衣里は自分のスマホに視線を戻した。総司も自分のスマホへと視線を落として返事を打つ。


『なんでちゃっかりOK貰ってんだよ!』

『別にいいだろ。向こうもその気だったみたいだったし』

『そりゃ、大勢で行った方が楽しいだろうな』

『……鈍感野郎』


 思わず「はぁ!?」と言いそうになったが、なんとか口には出さずに心の中にとどめることが出来た総司。全く理由が分からない。ただ鈍感野郎と言われたため、なんとなくだが恋愛関係なのではないかと目星はつく。


 と言うのも別にアニメを全く見ないわけではない総司。学園物と呼ばれるアニメの中には鈍感系主人公が出てきて、よく男友達に鈍感と言われている。そんな場面を見ているため、確信はないが恋愛関係のことを言われているような気がした。


 総司だってなんとなくだが玲奈の好意には気が付いている。

 ただそれは中のいい男友達としてであり、気になる異性への好意ではないと認識している。異性への好意だと思っていたが男友達としての――なんてなればとんだ笑い話。

 そのため総司はあまり期待していなかった。


 それは横に避けておき今は祭りの話をと総司は思考を切り替える。どう話を戻そうか考えていると、ソファーに座る衣里がふと視線に入った。


「蘇摩。花火見に行くか? 浩太達と行くんだけど」

「唐突だな、オイ」

「行くのか? 行かないのか?」

「……いつ?」

「……いつだろ?」


 聞いてからオレに聞け。そう言いながらジト目を向ける衣里をよそに浩太に尋ねる総司。すぐに返事が帰ってきた。


「明々後日だってよ」

「明々後日……何時からだ?」

「祭り自体は5時からみたいだが、ちょっと待ってろ」

「いや、聞かなくていい。行ける」


 衣里の言い方に少し疑問を感じた総司は浩太に質問を打ち込んでいた手を止める。


「もしかして何か予定入っていたか?」

「入っていたが大丈夫だ。夕方には帰ってくる。だから行けるな」

「そうか。じゃあ行くって伝えるぞ?」


 そう言うと浩太に衣里も行くことを伝えるために文章を打つ総司。総司は画面を見ていたために分からなかったが、ふと衣里が何かに気が付いた表情をする。


「ああ。そう言えば浩太達って他に誰が行くんだ?」

「玲奈と稚奈先輩」

「え……あ、ちょっと待て! やっぱ――」

「え? すまん。もう送信したがやっぱり無理か? 今ならやめるって言えるが」


 ソファーに座ったまま総司の方に少し体を倒しているため右手で体を支えつつ、左手を伸ばして制止しようとしていた衣里。だが総司の言葉に脱力し、ソファーに突っ伏す。


「いや、大丈夫。こっちでなんとかする」

「予定があるんだったらそっち優先してもいいぞ?」

「予定はない。別の理由だが……うん。何とかする」


 完全に諦めたようで、力なくスマホを操作する衣里。

 不思議に思いつつ衣里を見ていた総司だが、自分のスマホが通知を知らせる。衣里からスマホに視線を戻した総司だが、頬をひきつらせた。


『総司のバーカ!! 察しろ!!』


 その文章の後に怒りを表すスタンプがいくつか送られて来ている。なぜだか分からないが、怒らせたのに違いはない。そのため総司はすまんとだけ送った。その後少しやり取りした後、グループに招待される。どうやら花火を見に行くメンバーで部屋を作ったらしく、総司も参加する。

 最終的にそれなりの人数が集まることとなった。


 そのグループで当日の集合予定や服装の話をしてお開きとなった。

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