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君を愛している  作者: シロガネ
EP1 出会いは突然に
5/84

1-5

 おはようという声が各教室から、廊下から、外の自転車置き場から聞こえてくる。そんな中、数ある教室の1つに総司が入る。総司のクラスの教室。

 教室に入った瞬間、後ろから声がかかった。


「おはようソウ君」


 総司が振り返ると、玲奈もちょうど教室に入ってくるところだった。入り口で足を止めると他の人が出入りできないので少し離れたところまで移動しつつ話す。


「おはよう。栗生さんも今来たところ?」

「うん、ちょうどね。いつもはもうちょっと早く来ていたんだけど、昨日寝るのが少し遅くなっちゃって寝坊しちゃった」

「時々あるよな、そういうこと」

「ソウ君もそういうことあるんだ」


 少しだけ驚いた玲奈に総司は頷いた。

 寝る前に面白そうな番組を見つけてしまってもう少しだけもう少しだけと見ている間に、大幅に寝る時間が遅くなったりしてしまう。しょっちゅうと言うわけではないが、月2ぐらいでそう言うことがある。よりにもよって翌日が平日にもかかわらず。


 総司と玲奈の席は離れていると言うこともあって、一度分かれると自分の席で荷物を机に移動したり授業の準備をする。


 その間、次々と登校してくるクラスメイトたち。その中には浩太もいた。どうやら遅刻するようなことはないようだ。だんだんと騒がしくなっていく教室。見ればクラスメイトじゃない生徒もいる。どうやら総司のいるクラスメイトの友達のようで楽しそうに会話をしている。

 しばらくすると先生が挨拶をしながら教室へ入ってきた。


「はーい。おはよう」

「おはようございまーす」

「そろそろホームルームを始めるから席に戻りなさい」


 その声にクラス全員が「はーい」と返事を返し、それぞれの席に座った。他のクラスの生徒は話していた友達に別れを告げると自分の教室へと戻っていく。


 クラス委員の号令から朝のホームルームが開始。先生が連絡を終えてしばらくすると授業が始まる。総司が前にいた学園と何ら変わりない光景。

 出席を取って先生が授業を進めていると、不意に教室の扉が開いた。


「おはようございまーす」


 突然やる気のない声であいさつをしながら1人の女子生徒が教室に入ってきた。授業はすでに始まっているため遅刻である。黒板を見ていた人はそのまま、ノートに視線を落としていた生徒は顔を上げてその入ってきた女子生徒へと視線を向ける。


 総司もそのうちの1人だった。だがその顔を見た瞬間、内心驚く。背が低く顔は整っているが、髪は女性で言うところのショートヘア。

 それだけならどこにでもいるような女性だったが、その女性を見た瞬間、思い出す。総司が転校手続きをした晩に会った人であった。どうやら同じ学園生だったようだ。


「なんだ蘇摩。お前、また遅刻か」

「さーせん」

「さっさと席に座れ。それじゃあ授業進めるぞ」

「はーい」


 遅刻の常習犯らしきその女子生徒はやる気のない返事をすると唯一開いている席へと向かう。その席は――


 ここの席か。

 そう内心で思いながら隣の席をちらりと見た総司。

 先生は慣れているらしく、授業の続きを始めていた。


 その間にも女子生徒は総司の方に――正しくはその女子生徒の座席へとやってくる。


 前の学園でも寝坊などで授業中に遅れてやってくる生徒は時々ではあったがいた。その場合、男子ならクラスの男子が笑い、入ってきたのが女子ならクラスの女子が心配して声をかけていた。

 ただ――


「ん??」


 小さくではあるが思わず声が出てしまった総司。

 女子生徒が自分の座席へ移動してくるちょうど通り道にいる両サイドの生徒は目を合わせないようにするかのように顔を俯かせた。また遅れて分かったがクラスの空気が変わっている。総司の知っている雰囲気とはかけ離れている。いうなれば、どこか緊張感や何かを恐れているとかそんな感じ。


 転校してきたばかりと言うことで付いて行けない総司は誰かに尋ねようとしたが、今は授業中。そのため聞けない。


 そんなことをしている間に女子生徒はついに総司のすぐ近くまでやってきた。

 こちらが一方的に覚えているだけのため総司は反応したが、隣の席に見知らぬ男子生徒がいたからだろう。女子生徒も一瞬立ち止まって総司の顔を確認する。そのままじっと見つめてきながら尋ねた。


「転校生か?」

「あ、ああ。間宮総司だ。よろしくな」

「あ、そう」


 無愛想にただ尋ねただけだった。少女はそれだけいうと自分の席に座って授業の準備を始めた。

 クラスメイト全員は先生の説明を熱心に聞いているいたが、それは真似であり、実際は総司と女子生徒に集中していたのだった。






 午前中最後の授業が終わり昼休みに突入する。今日も惣菜パンを買った総司と浩太は天気がいいと言うことで中庭で昼食を取っていた。


 中庭は教室棟側が建物の1階部分だけ高くなっており、職員室がある管理棟の方は低くなっている。形としてはホールの座席配置に似ている。総司と浩太はそのうちの教室棟側にあるベンチに座っていた。


「なあ浩太」

「なんだ?」

「聞くタイミングがなかったんだが、蘇摩さん……だったかな? クラスの人と何かあったのか?」


 先生が呼んでいた名前を思い出しつつ浩太に尋ねる総司。

 遅刻するように登校し、昼休みを含む休み時間中はどこかに消える。前の学園の別のクラスで似たようなことがあった。そこから虐めがあるのではないかと総司は気にしていた。

 浩太は聞くなりそういえば知らなかったなと1人で納得する。


「彼女の名前は蘇摩衣里(そうまえり)。ここだけの話だが、ちょっと噂があってな」

「噂?」

「出所は分からないが、前の学校で喧嘩をしまくってたって言う噂だ。それと同時に学校をさぼって留年したからこっちの学校に移ってきたって言う噂もあるな」 

「そんな噂が?」

「見た目が見た目だからな。濃厚じゃないかって言われている。先生だってよく分かっていないからな」


  あとそれに、と言って続ける浩太。


「近くにモールあるのは知ってるよな? そこで他校生と喧嘩して警備員が止めに入ったって話もある。それに関しては他のクラスのやつが実際に見たらしい」


 そう締めくくった浩太は惣菜パンにかじりついた。

 その時ちょうど同じクラスの女子が通った。名前は分からないが、なんとなく顔は覚えていた総司。女子の方ではどのような噂が立っているのか。総司は聞いた。


 転校してきたばかりと言うこともあってか、すんなり教えてくれるクラスメイトの女子。返事は浩太から聞いた話もほとんど同じ。ただ一部では妊娠しておろしたのではないか。そんな生々しい話も女子生徒の間では出ているとかいないとか。


 確証はないらしいが、蘇摩と言う少女にはいろいろなうわさ話が流れているようだった。




 昼休みが終わり暖かい日差しの中午後の授業を受ける。


「そのためこの時代のヨーロッパは――」


 ゆっくりと話すおじいちゃん先生が教える歴史は淡々と教科書を読むところが多く、まるで子守歌に聞こえる。そのためいつの間にか眠っている生徒がちらほらと見えた。

 そんな中、総司は必死に頑張って授業についていっていた。


 ふと前の方の席を見ると舟をこいでいる玲奈の綺麗な後ろ髪が目に入った。朝、寝る時間が遅かったと話していたため、睡魔がやってきたらしい。

 今度は隣の席に視線を移す。隣では衣里という名の少女がノートと黒板を交互に見てノートを取っていた。

 ただ授業に真剣に取り組むその姿からは問題児には見えず、たった1人の女の子に見えた。




 放課後、ホームルームが終わると同時にすぐさま女子生徒――衣里は教室から出ていった。まだ担任の先生が教室から出ていっていないほど。

 衣里が教室を出ていくと同時に教室内のピリピリした空気は拡散する。それと安堵のような物がわずかにだが広がったような感じを総司は感じ取った。


 そんな雰囲気を内心あまりよく思えなかった総司。それと同時に脳裏を横切るのはさきほどの真剣な表情。態度こそ不良のような感じだが――。


「ほら行っちゃえ行っちゃえ!」

「もう、押さないで!」


 そんな言葉が隣から聞こえてきたため見ると、玲奈が隣に立っていた。後ろでは女子生徒がニヤニヤ笑っている。なんとなくだが玲奈に何かを吹き込んだような気がしてならなかった。

 何かを言うか迷っているようで、視線を左右に動かす玲奈。言いやすいように総司が尋ねる。


「どうしたの、栗生さん」

「え、えっと、ソウ君って徒歩だよね? 良かったら途中まで一緒に帰らない?」


 玲奈から少し離れた背後に立っているクラスの女子生徒がサムズアップした。背後に立たれていると言うことで玲奈は分かっていないようだ。

 当たり前だがどんな話をしたのかはわからない。それでも総司としては一緒に帰ることが恥ずかしいとかそんな気持ちはなかったため特に問題を感じはしなかった。そのため了承する。


「ああ。いいよ」

「ありがとう。少し準備するから待ってて」


 そう言うと玲奈は一度席に戻った。その間に総司も帰る準備をする。その時には玲奈と一緒に帰るという考えが脳内を占めており、先ほどまで考えていた衣里のことは消えていた。




 校門からでた2人は並んで歩く。当たり前だが男性である総司の方が歩幅が広い。総司のペースで歩いていると玲奈が追いつかない可能性があったため、総司は玲奈に歩調を合わせて一緒に歩く。

 日はまだ沈む様子を見せないが、それでも低くなっているため2つ並んだ長い影が歩道に伸びていた。


「ねえ。その……」

「ん?」

「私はソウ君のことをソウ君って呼んでいるけれど、ソウ君は私のことを昔みたいに呼んでくれないの?」

「昔って……レーちゃん?」

「うん、そう。できればこれからもそう呼んで欲しい」


 頷きながら玲奈は笑顔を浮かべる。昔とは違い魅力ある女性に成長した玲奈の見せる笑顔に総司は少しドキッとした。

 総司がそんなことを感じているとはしらない玲奈は続ける。


「教室でも『レーちゃん』でいいからね? 全員じゃないけれど、私達が幼馴染だってことは知ってるんだし、遠慮はしないで欲しいな」

「あ、ああ。ちょっと照れくさいけど……わかったよ、レーちゃん」


 教室で幼馴染だと言った。そのため特に問題はない。そう感じた総司は了承する。まだ転校してきて2日。それでも少しだけ離れていた距離が近づいたように総司は感じていた。

 その後たわいのない話をしつつ2人は帰っていく。




 途中で玲奈と別れ自分の部屋がある廊下に着いた瞬間、総司の部屋の隣に誰かが入って行くところだった。顔は角度が悪く見えなかったが女子にしては短い髪。また服は総司が通っている学園と同じ制服が見えたような気がした総司。


 少し遅れてまだ挨拶が出来ていなかったことを思い出した総司は一度荷物を置いて着替えると隣の部屋のインターホンを押した。

 しばらくするが返事はない。もう一度押すがやはり返事はなかった。


 俺が部屋で着替えている間に出かけたのか?

 そう思って総司は部屋に戻った。



 夕食後、再び総司は隣の部屋のインターホンを押したがやはり人は出てこなかった。

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