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君を愛している  作者: シロガネ
EP5 意識と魅力と告白と
44/84

5-3

 読書感想文を書くための本を図書館出借りた4人は、総司の提案で喫茶店に向かった。実はと言うと終業式が終わった後に立ち寄った店でもある。図書館と目的の喫茶店は歩いて1分も経たないすぐ近く。


「いらっしゃいませ!」


 客の来店を伝えるベルが鳴ったためか店員の声が挨拶をする。

 相変わらずレトロな雰囲気な喫茶店。ただそんな落ち着いた雰囲気な店だからなのか、訪れた人にも落ち着きを与えるような感じがする。


「席は空いているみたいですが、意外と混んでいますね」


 総司の言う通り、昼というこもあり、店内は賑わっている。それで夏休みの上に近くに図書館があると言うことも重なってか、学生でにぎわっている。見れば別の学校であろう制服も見受けられる。

 されど幸いなことに、いくつか席は空いているので待つようなことはない。


「いらっしゃいませ。何名様でしょうか?」

「4人です」

「テーブル席になりますが、よろしいでしょうか?」

「はい」

「それではご案内させていただきます」


 店員が案内するのに続いて4人はついていく。何食べようか迷っていたからなのか自然と他の人が食べている物が目に入る。


 「それではこちらの席をどうぞ」


 角に置かれているテーブル席まで案内した店員はそういうとお冷を取りに行くためか離れていく。隣には男女のカップルらしき学生がいる。

 イチャイチャされるとすごく何とも言えない雰囲気になりそうだがそうなったらその時。そう諦めると稚奈と衣里、総司と玲奈と言う風に分かれて座った。


「ここに来るのは終業式以来ね」

「つい最近来ましたが良かったのですか?」

「ええ。ここすごくおいしい店だから、ついつい友達と来ちゃうのよね」


 そういった稚奈に玲奈が苦笑いを浮かべつつメニュー表を開く。どうやら玲奈も同じらしい。

 数週間しかたっていないと言うこともあり、メニューには大きな変化はない。ただA4の紙を薄い2枚のプラスチックの板で挟んだようなメニュー表が追加されており、そこには期間限定のメニューが書かれていた。


「パンケーキか。食べたいけれど、これお昼ご飯なんだよね」

「別にそれでもいいと思うぞ?」

「変じゃないかな?」

「少なくとも俺は変だとは思わないぞ? 何なら稚奈先輩も蘇摩も興味はあるみたいだし」


 総司がそういうと稚奈はニコニコと笑い、衣里はスゥーッと視線を逸らした。なんだかんだ2人も甘いものに興味があるらしい。


 つい最近来たばかりだからと言うわけではなく、どれもおいしそうなため迷う総司。だがなんとか選び終えた。どうやら他の3人も決め終えたようだ。

 タイミングがぴったりだったのか、ボタンを押すと店員がすぐにやってくる。注文を伝えると店員が去っていった。


 ようやく落ち着いたため再度店内を見渡す。喫茶店と言うこともあるのか客は女性が多く、男女2人の組もある。


 先ほどまで図書館で読書感想文の本を探していたうえに、共通の話題になりそうだったと言うことで話は自然と宿題の話に移った。


「2人とも進み具合が良くてよかった」

「そういうレーちゃんもそろそろ終わる感じみたいだけど」

「そうなんだけど、どうも読書感想文だけは苦手で」


 ここにいる4人は学年でもそれなりにできる人が集まっているためか、ほとんどの課題を終わらせている。なんならそのうちの2人は学年でもトップクラスの成績。


「にしても本当意外だよな。蘇摩って課題なんてやらずに新学期向かえそうなのに」

「アハハ! 喧嘩売ってるのか! 買うぞ? いくらだ?」


 周りも学生だということでおしゃべりしており、そこまで邪魔にならない声の衣里。楽しそうに言うが、右手で作った握りこぶしが怖い。横ではなく距離のある対角線上に座っていたのが総司にとって幸いである。


「お待たせいたしました」


 ちょうどそこで衣里の気を逸らすかのように店員がそれぞれが注文したものを運んできた。

 こういうときぐらい別にいいだろうと思った総司は、少し値段は張るがそこそこボリュウームのあるハンバーグを選んでいた。ハンバーグにかかっているソースがいい匂いで腹が空腹を訴えてくる。


 稚奈と玲奈、なんやかんや迷っていた衣里はパンケーキを注文していた。

 ハンバーグを注文したが、3人の注文したパンケーキからいい匂いが立ち上り、自分もパンケーキを注文するべきだったかと迷った総司だった。




 美味しい昼食の後、食後の紅茶を注文して少し話した。その後いい時間になったと言うことで店を後にする4人。食べる前に少しだけパンケーキにしたらよかったと後悔した総司だが、その後悔を撤回するぐらいにはハンバーグがおいしかった。

 ただ――


「なぁに? まだ納得できない?」

「……はい」


 稚奈の質問に総司が頷いた。

 総司が納得出来ていないことというのは、昼食の代金の支払いについて。総司の支払いになったのであれば良かったのだが、支払いは稚奈になった。


 別に総司が押し付けたわけではなく、海で助けてくれたお礼と言いくるめられた。ちなみにだが衣里もなんやかんや言いくるめられていた。


「もし本当に納得してくれないのなら……それじゃあ、先払いということで」

「え?」

「もし私が何か困るようなことがあったら、その時に助けてくれるかしら?」

「そのぐらいでしたらお安い御用ですが……そんなのでいいのですか?」


 それはそれで納得できなかった総司だったが、稚奈が頷いたので渋々納得した。




 結局そのままそれぞれの家へ帰宅することになった4人。

 稚奈の借りた参考書は少し重たいと言うことで家まで持って行こうか尋ねたところ、大丈夫というので喫茶店の前で返し、それぞれの家へ帰宅していった。

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