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君を愛している  作者: シロガネ
EP4 出来ること出来ないこと
34/84

4-4

 試験が終わった翌週の週明け。本日から先週行われた期末試験がチラホラと帰ってくる。そのためか朝から教室が少し緊張に包まれていた。

 といっても話する余裕がないほどに緊張していると言うわけではなく、話す内容がテスト返却についてのことになっている。人によっては余裕か諦めかは分からないがいつも通りの人もいる。


 そんな試験が帰ってくる朝独特の空気に包まれた教室に、いつもの時間に担任の先生が来てホームルームが行われる。その後、期末試験返却のための特別時間割に沿って授業が進んでいく。その特別な時間割と言うのが短縮授業のこと。

 そのため普段より早く授業が終わった。

 


 短縮授業とはいえ何かしらの部活に入っている人は部活動がある。そのためすでにクラスの半分以上はすでに教室を出て帰宅する人もすでに帰ったあと。そんなこともあり教室に残っているのは総司たち3人を含め10人もいない。


「ソウ君。テストどうだった?」

「ん? まあそれなりに? 教科が多くて大変だったがテスト勉強に誘ってくれたから助かったところもあってなんとかなった。レーちゃんは?」

「私はいつも通りかな」

「ということは、いい点取れたってことか」


 そんなことないよ、とはにかむ玲奈。

 転校してきてもうすでにかなりたつため分かったが――というより体育や休み時間などで話していたが、このクラスにも玲奈のことが好きな男子生徒はいる。そんな男子が思うのはただ1つの感情で。


「テスト勉強を一緒にやっただと! くそ! 総司の奴羨ましすぎる! やっぱり幼馴染補正か! 幼馴染補正なのか!!」

「バーカ、止めとけ。俺らのようなモブに幼馴染がいたとしてもそんな補正かかるわけないだろ。小学校上がるときに親の都合で幼馴染が別の小学校に通うことになったり、近所に住むお姉さんは引っ越しでいなくなったりするんだって」

「全員離れていくのかよ! それどんだけクソな設定だよ!」

「ちなみに中学高校大学ではさらに悲惨になるが聞くか? あとこれ知人から聞いた実際にあった話だぞ」


 そんな会話を男子生徒達はしつつ、2人のやりとりを羨ましそうに見ていた。だが玲奈と話していた総司は気が付かなかった。気になったので隣の席で帰る用意がひと段落した衣里に尋ねる総司。


「そういえば蘇摩はどうだった?」

「ん? オレか? いつも通りだな」

「ということは学年全体で1桁台の順位か」


 さすがに学年順位1桁台を否定することも肯定することもしなかった衣里は苦笑いを浮かべただけ。そこに浩太がやってきた。


「やっぱ蘇摩さんは凄いな」

「止めてくれ」

「謙遜することないよ。本当にすごいと思ってるから」

「玲奈まで」


 困った表情をしながら玲奈を見てくる衣里。あんまり困らせるのも可愛そうなので助け舟を出す。


「話は変わるが1つ確認したいことがあって、今日は短縮授業で解答用紙の返却だったが、明日からの短縮授業は終業式まで普通に授業を進めていくんだよな?」

「そうなるな。ただ返却されていない教科のうち帰ってくるのはものによるが、今日と同じように明日の短縮授業中に返却されるぞ。前の学校では違ったのか?」

「いや、同じだ。前の学校とは違うところがチラホラあって気になってな」


 総司が答えると浩太は「なるほど」と頷いた。

 ちなみにだが総司が通っていた前の学園では、短縮授業とはいえ、人権映画を見たり球技大会が行われたりと授業とは程遠いことが行われたりしていた。


「まあ、まだ残っている試験の解答用紙の返却は少し憂鬱だが、これが終われば残るは終業式!」

「八重柱君。海岸清掃を忘れてるよ」

「そういえばそんなのもあったな。総司と栗生さんは参加するだろ? 蘇摩さんはどうするんだ?」


 浩太が尋ねると尋ねられた衣里は少し考え始めた。以前、熱いところにあまり出たくないと言っていたことを思い出す総司。

 俺達に合わせなくてもいいと言おうとするより衣里が先に口を開く。


「いや、オレも参加するわ。言っておくが間宮。無理にじゃないぞ?」

「……何で分かった」

「お前、何気にその辺り気を使うよな? ここ2か月ぐらい見てて分かってきた」

「「おおぉっ!」」


 衣里の洞察力に驚いたのか浩太と玲奈が同時に驚く。総司は総司で何とも言えない顔を浮かべた。俺はそんなに分かりやすいのだろうかと。

 そんな総司を見て笑いつつ浩太が頷く。


「蘇摩さんのいう通り、こいつ何気に気を使ったりするんだよな。人の心を読んでその人が言いやすいように先回りする感じ?」

「分かるような分からないような……」

「どっちかって言うと間宮は面倒見がいいんじゃね?」

「あれ? 違った?」


 玲奈と衣里が賛同してくれず浩太が若干焦る。

 そんな3人とは対して、自分のことについて話されているということでどこか恥ずかしく感じた総司は話を戻す。人間観察なんてされたくない。


「それよりも海岸清掃は明後日だよな? 今から参加するってなってもできるのか?」

「露骨な話題変更か。まあ担任に言えばどうにかなるんじゃね? 参加人数が減るのは残念がると思うが、増えることに関しては喜ぶだろうな。班の割り当てもわりとすんなりいくんじゃね?」

「ほんじゃ、今から言ってくるわ。さすがに前日に言われても困るだろ。先生に言ったらそのまま帰るから。またな」

「うんまたね!」


 荷物をまとめたカバンを持つと手を振りながら衣里は教室を後にした。

 衣里と入れ違うように教室の入り口に1人の少女が来る。見たことあるなと一瞬思った総司だが、すぐに浩太の彼女と言うことに気が付いた。

 もちろんその本人は真っ先に気が付いて当たり前。


「あれ? ヒナ、先生に言われてた頼み事は終わったのか?」

「うん。だから呼びに来たんだけど……」


 頷いた陽菜乃だがどこか心配そうな、申し訳なさそうな表情をしている。

 肩からはカバンを下げている。これから帰るつもりだということぐらいわかった。


「大丈夫だよヒナちゃん。さっき友達が帰ったから私達も帰ろっかって話になって」


 確かに衣里は帰った。だが総司たち3人も帰ろうという話はしていなかった。一瞬なぜそう言ったのか分からなかった総司だがすぐに気が付いた。

 もし1人で帰るのであればそのまま帰ったはずだが、総司たちのクラスに顔を覗かせた。それに呼びに来たと言っている。つまり――


「ああ。だから浩太。さっさと行ってこい」

「悪いな。そんじゃまた明日」

「ああ。また明日」


 荷物はすでにまとめていたようでカバンを持つと浩太は陽菜乃のもとへ向かった。陽菜乃が入り口から総司と玲奈に向かって会釈すると、浩太と共に姿を消した。


「なんだかんだ言って、レーちゃんも気遣い出来るよね」

「ソ、ソウ君ほどじゃないよ」

「そんなことないと思うんだが……まあいいや。2人とも帰ったし、俺達も帰るか」

「そうだね、帰ろっか」


 気が付けば教室には2人だけ。試験明けぐらいゆっくりしたい総司と玲奈は荷物を持つとさっさと教室を後にした。もちろんせっかく気を使って送り出した前の2人においつかないように気を付けながら。



 2人並んで廊下を歩いていると前を歩いている人の後ろ姿に見覚えがあった総司。先ほど別れた浩太と陽菜乃ではない別の人物。その人物の後姿は玲奈が1番知っている人。嬉しそうな表情を見せた玲奈は前を歩く人へと声をかけた。


「お姉ちゃん!」


 前を歩いていたのは稚奈。

 玲奈が声をかけたからなのか稚奈が振り返る。総司にとってはよく生徒会の仕事で何かしら持っているイメージの強い稚奈。ただ生徒会はすでに交代しているということもあり、今はただ通学用のカバンを持っているだけである。


「あら、玲奈。それに間宮君。お疲れ様。2人ともまだ帰っていなかったの?」

「お疲れ様です、稚奈先輩」


 相変わらずいい笑顔を見せる稚奈。玲奈と並んで学園で人気を誇る2人なんてなんだかすごいなと思っていると、隣にいた玲奈と稚奈が会話を続ける。


「お姉ちゃん今から帰るところだよね?」

「ええそうよ。どうして?」

「良かったら一緒に帰らない?」

「「え?」」


 玲奈の提案に驚く総司。総司と同じく一緒に驚いた稚奈だがすぐに申し訳なさそうな表情をする。


「私はいいのだけれど、玲奈はいいの? せっかくの機会なのに」

「もうお姉ちゃん。確かにそうだけど、いつでもあるし、今は3人で帰りたいな。ソウ君もいいよね?」

「俺はいいけど、稚奈先輩は……」


 願ってもない提案に少しうれしくなった総司だが、稚奈が少し乗り気ではないことが気になった。もしかしたら俺嫌われているのではないか。そんな風に思ってしまった。


「私はいいのよ。でも玲奈は」

「だからいいよ私は。3人で帰ろ!」

「分かったわ。それじゃあ3人で帰りましょ」


 なぜ稚奈ではなく玲奈の意志が関係してくるか分からなかった総司。そんなことを考えていると玲奈と稚奈が会話を振ってきたためその考えを頭の隅に寄せて会話をしながら帰る。


「あ、そうだ。せっかくだし昼食食べて行かない?」

「え? あ、ああ。いいよ」


 総司は気が付かなかったが、一緒に昼食をとろうかという話になったようだった。昼食は自宅で取る予定だったが下ごしらえなどはしていない。そのためせっかく誘ってくれたと言うことで一緒に昼食をとることにした。

 近くに喫茶店があるようで、そこへ向かう。




 平日のためか人の少ない店内からは、チェーン店のコーヒーショップやメイド喫茶とは明らかに違う雰囲気を感じた。

 個人経営なのか店内は狭く、オレンジ色の照明がテラス室内はレトロな雰囲気を醸し出している。


 内装にこだわりを入れているようで、レトロな雰囲気を壊さないよう、椅子や机も洋館にあるような古い、されど汚さを感じさせない物が取り揃えられている。


 またカウンター席に座った際に正面に来る壁にはガラス扉付きの棚が設置されており、クリーム色の陶器に厚塗りの金彩がほどこされたものや、更紗調の模様の施されたティーカップなど、ブランド物であろう物飾られている。


「ソウ君ってここのお店来たことあったっけ?」

「いやない。今日が初めて。良い店だな」

「そうだよね。前にお姉ちゃんと来たことがあるんだけど、ここのお店って雰囲気あるよね」


 そんなたわいもない話をする。注文した後も話をするが、自然と話しは明後日の海岸清掃の話へと移り変わっていった。



 しばらくすれば、3人の前に注文した料理が並ぶ。

 総司と玲奈はオムライスセット。オムライスとオニオンスープ、そしてサラダがついている。稚奈はミートローフのセット。ミートローフに目玉焼き、ライスにオニオンスープ。そしてサラダがついている。スープとサラダは全く同じものだった。

 食べようとした時、稚奈の動きが止まる。少し頬が引きつっていた。


「どうしました?」

「えっと……」

「あ、お姉ちゃん」


 総司は分からなかったが、言いよどむ稚奈の視線の先にある物を玲奈は理解したようだった。何かを諦めたのか、稚奈はため息を吐くと口を開く。


「その、私……ピーマンが苦手で」

「え?」


 意外な発言に総司の視線は稚奈の料理へと視線を落とした。確かにサラダにはピーマンが入っている。


「稚奈先輩ってピーマン苦手なんですか?」

「苦いのがどうも苦手で。いつも料理を注文するときはピーマンが入っていないか写真を確認しているのだけれど。やっぱり子供っぽいかしら?」

「いや、そんなことはないと思いますよ?」


 成績優秀で生徒会長を務める稚奈。そのうえ人望もありどの方向から見ても完璧に見えたが、案外子供っぽい弱点があった。


「はいお姉ちゃん。ピーマン移して」

「いつもごめんね」

「気にしなくていいよ」


 少しお行儀悪いが、細切りにされたピーマンだけを器用に玲奈のお皿に移していく稚奈。完璧な人という印象があったが、なんだかんだ弱点もあることに気が付かされた。

 小学校上がるときに幼馴染の親の都合で幼馴染が別の小学校に通うことになったり、仲が良く手紙のやり取りをしていた近所に住むお姉さん2人は引っ越しでいなくなる。


 中学で好きになった子は同じ高校に通うもクラスが別で接点がなくなって話すことがなくなり、高校で弱小部ではあるが同じ部活に入った唯一1人の女子とLINEを交換することに成功するが2か月ほどで転部される。


 専門学校ではサークル繋がりで仲良くなったOBの女性と仲良くなることに成功し、学園祭に来たら一緒に見て回ろうと思っていたが仕事らしく2日とも来ず。


 挙句の果てに卒業パーティーで適当にかわいい子に声かけてナンパしようとしたらコロナ直撃!

 社会人になってBARに行こうとするもよさそうなところはどこも閉まっている。

 そのため結局、彼女いない歴=年齢更新中!


 誰のことかって? 作者のことですが!? 何か!?(半ギレ)

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