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君を愛している  作者: シロガネ
EP3 気付きと意識
27/84

3-8

 翌日。ついに学園祭当日を迎えた。

 文化祭は全部で3日間。1日目は天候にも恵まれ快晴である。クラスによっては外に店を構えるところもあり助かっているようだ。天気予報通りであれば開催期間中の3日間とも晴れ。


 準備のためか気分がそうさせたのか。総司たちのクラスは普段よりも少し早めに登校してきた生徒によって最終準備――接客担当者の最終確認や着替え、調理による焼き菓子作りなどが進められていた。それはどこのクラスも同じようで、まだ少しだけ早い時間から校舎内はにぎわっていた。


 だが準備はすでに終わり、あとは生徒会による開会宣言を聞くだけとなっていた。

 開会宣言は放送を使って行われるため調理班などの役割を問わず生徒は基本的に教室で待機となっている。




 各階にある各クラスの教室からは、これから始まる学園祭への期待からざわめきが起きている。


 場所によっては何かしらのハプニングがあったようで、ドタバタと廊下を駆けている生徒も中にはいる。だがすぐに見回りの先生に見つかって怒られるなどがあったが、残念ながら階が違ったので総司たちは知らない。


 放送を使った生徒会による開会宣言が始まったると波が引くかのようにざわめきが収まり、全員がスピーカーに注目する。

 進み方はありふれたもの。長い校長先生の挨拶もテンプレート通り。

 

 生徒会長である稚奈も挨拶と諸注意を話すが、落ち着きのある優しい口調は接客をすることになった生徒の緊張する気持ちを落ち着かせる効果があるのではないかと思うような物だった。


 校長先生のあいさつがあり、生徒会長の稚奈からのあいさつと諸注意。そして最後に稚奈が諸注意のシメの言葉を――


「それでは、文化祭1日目を開始します。皆さん楽しんでくださいね」


 ――言ってついに待ちに待った学園祭が始まった。




「よし、それじゃあ皆」


 生徒会による開会宣言が終わるや否や壇上に立った浩太が教室内にいる全員に声を掛ける。さっそく調理室に行こうとしていた調理班のメンバーや、出店を見て回ろうとしていた生徒たちが足を止めて浩太の方に視線を向けた。


「生徒会長が言っていた通り、気を付けるところは気を付けつつ、全力で楽しみ、成功させるぞ!」

「「「おおぉぉーー!!」」」


 クラス内にいた総司達クラスの生徒の声が狭い教室内に響いた。


「あ、そうそう業務連絡……っていうより注意事項を言うの忘れてた」


 今じゃなくて先に言えよ。そんな声がクラスメイトから上がったため、悪い悪いと苦笑いをした浩太が数秒後には真剣な表情に戻る。


「学園内自体そうだが店内は特に撮影禁止だ。それだけは気を付けてくれ。一応、来校者向けの受付担当の奴が口頭で注意喚起したり、教室の入り口にいるやつが注意するが写真はアウト。お願いされてもそういうサービスは承っていませんで突っぱねろ。それでも言うことを聞いてくれないやつは本部行きだから巡回している先生に言ってくれ」


 都会にあるそういう専門の店とは違いここは学生の文化祭。そのため教室の前後の黒板には撮影禁止の貼り紙がされており、さらにはテーブルに設置されたメニュー表とは別で紙を用意し、文章で注意喚起を行っている。


 別に店内だけではなく、そもそも学園の敷地内での動画撮影は禁止となっている。ネット上で住所特定されたりストーカー被害にあった女子生徒が起こなどの被害を事前に防ぐことが目的にされているとか。

 これは総司がいた学園でも行われていたことなのであまり驚かない。


「もし先生が間に合いそうになければこの僕が脊柱起立筋にかけて皆を守ろう!」

「脊柱起立筋がどこか分からないが、脊柱起立筋にかけて守ってくれるのなら安心だな!」


 仁王立ちしつつ爽やかな笑顔の清司。そんな清司を見つつ浩太がため息をついた。


「言っておくが、客とのトラブルは絶対に自分たちだけで解決しようとするなよ。特に総司」

「おい。何で俺だ! テシの方がやりそうだろ! あの筋肉を見ろ! 脊柱起立筋を見ろ!」

「はっはっはっ!」

「それじゃあテシと総司、お前ら2人とも気を付けろよ!」


 投げやりな言い方で叫ぶ浩太。それを聞いて一部で笑い声が上がった。そんな姿を少し離れたところから玲奈が見ていた。その表情はどこかボーっとしている。


「玲奈、玲奈」

「ん?」

「間宮君の手綱しっかり握っておいてね!」

「握るのは手綱じゃなくて手じゃないの?」

「もう! ちょっと!」


 別の女子の言った言葉に玲奈が顔を赤くしながら言い返す。そんな玲奈の様子を見て仲のいいクラスメイトの女子がケラケラと笑った。




 そうこうしている間に、出来た焼き菓子や飲み物が運ばれてくる。すでに準備ができていたと言うことで、学園祭初日が始まった。


 初日は学生だけで、外からの来客は2日目と3日目のみとなっている。そのため総司は気になるお店や出し物は今日のうちにチェックを使用と考えていた。それは他の生徒も同じだったのか、朝からひっきりなしに客がやってくる。

 予想をはるかに上回る客の数に、この様子だと今日来れなかった生徒も含め、来校者もやってきて明日と明後日はずっと忙しくなるように思えた。


 ほとんど終わった後はどっと疲れることに。

 初日ならではの不手際やトラブルもあり、総司はあまり見て回ることが出来なかった。それはみんなも同じ。そのためあまり長いこと学校にとどまらず、明日の準備だけした総司たちのクラスは早々に帰宅し、明日に備えるのだった。

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