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君を愛している  作者: シロガネ
EP1 出会いは突然に
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1-1

 桜が完全に散り切った5月初旬。

 春を象徴する花として日本人にはなじみが深く、春本番を告げる役割を担っている。そんな桜も5月所人日は散り切り、葉が生い茂っている。


 もう少し早ければ桜吹雪の中を歩けたかもしれない長い坂道を制服を着た男子生徒が歩いていた。


 学校から家までの距離が近いのか、来るまで送ってきてもらったのかは分からないが男子生徒は徒歩である。

 ただ現在は10時を少し回った所。普段なら遅刻確定だが今日は土曜日。学園の敷地内から聞こえてくる声は部活動に精を出している生徒のものだろう。


「ソフトボール部! ファイトー!」

「「「オー!」」」


 方向からして運動場。この学園は進学校ではあるがそれと同時に部活動にも力を入れているようで各部員の声が聞終えてくる。


「おいお前ら! 女子バレー部に負けてるぞ! 柔道部の意地を見せるぞ!」

「それじゃあもう1周いっちゃう?」

「あったりめーよ!」

「うぉぉおぉぉ! 筋肉が! 俺の大腿四頭筋やハムストリングが喜んでいるぞ!」


 部活動に励む生徒のそんな元気な声を聴きつつ、長い坂を上り終えると男子生徒――間宮総司(まみやそうじ)は一息つく。そのままいままで登ってきた長い下り坂を振り返った。坂の途中には校舎と体育館をつなぐ屋根付きのしっかりとした渡り廊下が橋のようにかかっている。


 本来なら学園の1年生としてこの門をくぐることになっていたはずではあるが、両親の都合により中学に入る前に転校。

 転校先で約4年間過ごし、これまた両親の都合によって再び戻ってきた。


 その都合と言うのが、父親の海外への転勤。料理洗濯などの家事が全くできないとうことで、母親は面倒を見るためについていった。そこそこ家事ができる間宮を放って置いて。


 叔父が伎根多摩(ぎねたま)市にいるため何かあったら頼れるようにと戻ってきた。だが総司もすでに大きくなっており、大丈夫だと言い切って1人暮らしをすることとなった。




 息を整え終えた転入手続きを終わらせるために、坂を上り切った右側に見える私立伎根多摩学園の校舎へと足を進めていく総司。


 ここの校舎は独特で、真上から見れば5角形に見える。かなり独特なつくりである。

 事前にパンフレットを見ていたがその際、校舎の形を見てその独特なつくりから若干苦笑いしていた。


 建物は生徒の教室がある教室棟。職員室、保健室、校長室などがある管理棟。家庭科室、実験室などがある特別棟。美術室、音楽室、コンピューター室などがある芸術棟に分かれている。

 配置としては時計で言う12時の所から時計回りに、教室棟、芸術棟、管理棟、特別棟、教室棟となる。


 それぞれの棟は小さな橋のような物で繋がっているが、2つの教室棟は普通の高校の校舎が真ん中で少し折れ曲がった物と想像してもらうと分かりやすい。

 そのためぱっと見は5つの建物からなっているというより、4つの建物からなっていると言った方が正しい。



 そんな高校だが、坂に近い方に管理棟があり、その建物内に職員室がある。それはすでに把握済み。

 そこへまっすぐと向かうと、間宮は前の時にいた学校と同様、ノックして職員室へ入った。近くにいた男性の先生が顔を上げる。


「失礼いたします。転校してきた間宮です」


 そういった総司だが、次にどういって良いのか分からなくなってしまった。中学の時は入学に間に合っていた。そのためこのような状態は初めて。

 先にどのように言うか考えておけばよかったと焦っていたが、幸いにもすぐに近くにいた男性の先生が声を掛けてきた。


「君が間宮だね。担任の本堂先生はあっちの机にいる。ほら、あそこにいる先生」


 そういって男性の先生が見る方向を見る間宮。そこには手を上げて総司の方を見ていた女性教師がいた。


「ありがとうございます」


 声をかけてきた男性の先生に頭を下げつつお礼を言うと、手をあげた女性教師の元に間宮は向かった。


「間宮総司君ですね? キミの担任になる本堂(ほんどう)です」

「間宮総司です。お世話になります」


 軽くそう会話を交わし、間宮は転校手続きを始めた。

 出された用紙に記入を行い、捺印を済ませる。手続きは思ったよりも簡単に済んだ。


「これで転入手続きは終了です。何か気になることはありますか?」

「いえ。大丈夫です。校舎を少し見て回りたいのですがいいでしょうか?」

「そうですか。いいですよ。校舎の作りが独特ですがそこまで複雑ではないので迷子にはならないと思いますが、部活動をしているところもあるので気を付けて下さいね」


 笑顔で担任の先生が了承したため間宮はお礼を言い職員室を後にした。

 この後の予定は特になかったので、校舎を十分に見て回れそうだった。


 さっそく校舎を見て回る総司。

 現在いるのが管理棟。その両サイドに特別棟と芸術棟が存在する。そして職員室から見えていた向かいの建物が教室棟。

 どの棟も気になるが、1番気になるのはやはり教室棟。移動教室以外は大半の時間を過ごすことになるだろう場所だ。


 さっそく移動する。土曜日ということで人はおらず、遠くの方から聞こえてくる吹奏楽部の演奏を耳にしながら教室棟に。


 教室棟は幸いにしてカギはかかっておらず、中に入ることが出来た。

 内部はいたって普通。総司が前にいた時と大差ない。

 唯一違うのは校舎の形ぐらいである。


 ついでに教室内も見るが、いたって普通であった。


 建物が曲がっている中央部分には階段があり、3階までつながっている。1階は3年の札があったので、2階へ上がる。2階には2年の教室があった。そのことから3階は1年の教室だろう。そう予想を立てた総司は2年のクラスの教室を見て回ることにした。


 端から準備に教室をのぞいてみるが、どこも大差なかった。最後に自分のクラスになる1組の教室を見ようと向かっていると、その1組の教室内から女子の声が聞こえた。


「それじゃあ、私飲み物買ってくるね」

「それじゃあ私のもお願い! お金は後で払うから玲奈のやつとおんなじでいいよ!」

「それじゃあ私コーヒーにしようかな」

「待って玲奈! 私コーヒー飲めないんだけど!」


 そんな声と共に笑い声が聞こえる。

 部活動で使うといっていたが、まさか教室に人がいるなんて思ってもいなかった総司。しかも雰囲気的に教室から出てくる。


 別に不法侵入しているわけでもなく、なんなら来週から世話になる学校。それでも総司は今着ている制服が前の学校の物ということで動揺していた。


 その時、隣の教室に目が行く。人がいる雰囲気はない。そのためその教室へと隠れようとする総司だったがだがわずかに遅かった。

 先に教室の扉が開き女子生徒が出てくる。しかもばっちりと目が合った。


 間宮の視線がゆっくりと女子生徒の下に向く。

 当たり前だが、制服のデザインはパンフレットに乗っていた私立伎根多摩学園のモノ。


 思わず、鼻の穴が開いてしまうくらいの美少女であった。

 だが総司はすぐに気が付く。現在の総司の服装ではここの学園生からは他校の生徒に見える。下手すれば悲鳴をあげられかねない。もしそれを聞いた他の生徒が来れば捕まる。そのことに僅かに遅れて気が付いたがすでに遅い。


 別に捕まってもすでに担任の先生に転入手続きをしている。何よりここの学園生になる。なんら問題ないがなぜか焦る総司。すぐに逃げるべきかどうかを先に考える。


「……えっ?」


 少女が目を見開いて総司の方を見ていた。

 まずい。叫ばれる。

 半分パニックになっていた総司は足を踏み出して走ろうとする。だがそれよりも早く少女は声を出した。


「ソウ……くん……!? ソウくんだよね!?」

「へ?」


 不意を突くように、少女の口から出たのは忘れかけていた、実に懐かしい、数年ぶりの総司の呼び方だった。


「ひ、人違いじゃないよね? ま、間宮総司くんだよね!?」

「あ、あ、う、うんっ……間宮、総司、だけど……キミは?」


 少女の大きめの瞳がやけにキラキラと輝いて見えたのは潤んでいるせい。


 え……な、なんで? この子、泣いているのか? 俺が泣かせてしまったのか? 嘘? どうして? それにこんなかわいい子、知り合いにいたか?


 時間が経つごとに混乱していく総司。女の子の知り合いは片手で足りるほどしかいない。その知り合いの顔を思い出すが、女の子は成長すれば変わるものとはよく言ったものだ。目の前の女の子が誰なのかが全然分からなかった。


「私っ……うぅんと、その、ずいぶん前だもんね。いきなりいわれても、困っちゃうよね……」


 少女の方も混乱からなのか言葉がうまくまとまっていない感じである。だが先に自分が誰であるかを言った方がいいと判断したのだろう。自己紹介をする少女。


「覚えていないかもしれないけど……そ、その、私、玲奈(れいな)です」

「玲奈……」


 繰り返すように名前を呼ぶ総司。その瞬間、総司が知りうるその名前の女の子の顔を思い出した。


「も、もしかして、れーちゃん……?」

「うんっ! そう、れーちゃん! 栗生玲奈(くりゅうれいな)! 久しぶりだねっ、ソウくんっ!」


 見目麗しい変貌を遂げていたために幼馴染である少女であると見抜けなかった総司に対し、それなりの成長を遂げたはずの間宮を一瞬で看破したのだった。

読んでいただきありがとうございます。


本作品は読む前にイラッとしないよう需要な連絡以外、前書きには何も書きません。後書きに関しては気分次第です。

感想及び評価は読者側が面倒だと思うので結構です。ぶっちゃけ作者自身返すのが面倒に感じるので。


本作品について。

先に言いますと執筆はすべて終えています。ですので毎日18時投稿となります。基本的に1話/日となりますが、話の都合上1日に2話投稿する日がございますので、そのあたりは連絡させていただきます。


最後になりますが、本作品は『病気もの』です。

そのような場面が近づいた際は後書きにて告知させていただきますが、苦手な方は今このタイミングでブラウザバックよろしくお願いいたします。

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