表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺、吸血鬼になったってマジ?  作者: 紅茄子
水上の楽園編
12/64

第7話 日常の始まり

 


 登校初日。

 俺は寮のみんなに案内されながら通学路を歩いていた。


「そうか、空蝉さんと西宮さんは学年1つ下なのか」


「はると、さみしい?」


「そりゃあみんな一緒って訳じゃないと思ってたさ。玲奈と鏑矢さんが一緒なのが逆にびっくりだ」


「なんだ、わたしはさみしかったのにな…」



 登校初日までの数日間で分かったことの1つに、空蝉さんはあざといという事がある。

 わざとなのか、過剰なスキンシップや気をひくような発言が多いのだ。

 もちろん俺に一目惚れとかそういう訳でもなく、寮生には全体的にそんな感じである。



「そもそも学生が少ないからね。クラス数も限定されてきちゃうんだよ」


「さすが鏑矢さんは物知りだなあ」


「子供扱いはやめてよーー!」



 鏑矢さんはマスコットみたいな愛嬌がある、というか寮の内外でマスコット扱いされていた。

 何かの拍子で妹にするように頭を撫でてしまったのだが、声は荒げるのに絶対にやめさせようとしない事に気付いてしまった。

 …というわけで事あるごとに撫でたりしてホッコリさせてもらっている。



「夜来さん、碧渚さんが嫌がってますよ!いくら可愛いからってあんまり撫でない方が…」


「違うんだよ、西宮さん。鏑矢さんはこういうの結構気に入ってるみたいだから」


「そ、そんな事ないよ!」


「じゃあやめてほしいのか?」


「や、やめてほしいのは子供扱いだから…」



 西宮さんは純粋で、思いやりがあって、しかも家事全般ができるという非の打ち所がない美少女だ。

 だが、純粋過ぎて言葉の裏が読み取れなかったりすぐに心配してしまうという一緒にいるこっちが不安になりそうなところがある。



「遥斗、その辺にしときなさい。碧渚がクセになっちゃったらどうするの」


「はいよ。頭撫でられにくる鏑矢さんってのも見てみたいけど」


「もーー!!ほら、クラスこっちでしょ!行くよ!」



 怒っている鏑矢さんだが、撫でるのをやめた時に一瞬目が追いかけていたのを俺は見逃さなかった。

 空蝉さんや西宮さんに手を振りながら小さな同級生を追いかける。

 どうやら玲奈の冗談は俺だけじゃなく鏑矢さんにも向けられることがあるらしい。

 乗ってしまう俺も俺なんだけどな、と苦笑しながら教室に入った。










「眠い」


「寝たらダメだよ。ほら、先生もこっち見てる」



 授業が退屈なのは本島もガーデンも変わらないらしい。

 鏑矢さんにつんつく突かれながら何とか乗り切ることに成功した。

 ようやく最後のホームルームが終わり、突っ伏したところにクラス担当の高橋チーフがやってきた。



「おい、夜来。前にも言ったがこの後出勤だ。沖田、鏑矢、寝てようと叩き起こして引っ張ってこい」


「承りました」


「了解なのですよ」



 物騒な会話が頭の上を通っていく。

 返事をする間も無く高橋チーフは去っていった。


 授業とは不思議なもので終わると目が覚めるものだ。

 何とか元の調子を取り戻した俺は玲奈や鏑矢さんと共に公安局へと向かった。






「ここが公安局。特別公安理事局よ」


「思ったより普通のオフィスビルって感じのとこだな」


「そんなに目立つわけにもいかないからよ。あと、正式な警察組織じゃないから大っぴらに活動できないのもあるかな」



 道中で聞いた話によると、公安局は警察とは別の組織で所謂自警団のような体裁をとっているらしい。

 給金もガーデンの政府から出ているものの細かい手順を取って公務員にならないようになっている。

 なんでも、吸血鬼を擁する組織が警察を名乗る事に本島の上層部が渋ったのだとか。

 人間感覚としては分からなくもないが、だからと言って吸血鬼を人間の警察部隊が抑えられるとも思えないのだが。



「じゃあ、制服に着替えてまた後でね!」


「遥斗の制服姿、楽しみにしてるから」


「何で急にハードル上げるんだよ。また後でな」



 制服はブレザーとスーツの合いの子みたいなものだ。

 それこそ警察というよりはコスプレをしている感がある。

 これも、ガーデンという観光都市のイメージを損なわずにある程度の威圧感を保つ為の工夫だそうだ。



「さて、着替え終えたが」


「お待たせ。あら、案外似合ってるじゃない。期待はずれね」


「かっこいいよ、夜来くん!」


「ありがとう。2人とも似合ってるな。なんか服が馴染んでる感じがする」



 玲奈や鏑矢さんも俺と同じようにブレザーとスーツを合わせたような制服だ。スカートになっているが戦闘中とか邪魔にならないのだろうか。



「来たか、夜来」



 奥のデスクから高橋チーフに呼ばれる。

 他にもデスクはあるものの座っている人は少ない。

 恐らく捜査や巡回に出ているのだろう。



「ようこそ、公安局へ。改めて俺が実務班長の高橋一馬だ。取り敢えずはここに所属だが、他にも工作班と総務班がある。希望があったら後で言え」


「夜来遥斗です。よろしくお願いします」


「さて、じゃあ今日は巡回に出てもらう。沖田、鏑矢と共に繁華街をまわってくれ」


「早速ですね。分かりました」



 俺の公安局での初仕事は、繁華街の一部区域のパトロールになった。

 玲奈も鏑矢さんも付けてくれるそうなので割と心持ちは軽い。

 だが、初日で局員として外で活動するには制服の袖に着けた公安局という腕章が思ったよりも重いような気がした。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ