98-無責任なリーダー
冒険者は、死亡すると遺品を立会ったものが持ち帰り、亡骸はその場に埋葬される。全滅した場合は当然放置されるが、見つけた冒険者が遺品回収と埋葬することになる。これは、冒険者組合のルールであり、自身を危険にさらしてまで行うことはないが、行った冒険者には、組合の基金よりわずかばかり金銭が支払われる。無論、金銭目的の冒険者もいるが、自身が死んだ時に放置される事を考えると進んで埋葬する冒険者も多い。当然、そういったルールを無視して、行動する冒険者も多い、実際に冒険者なのか野盗なのかわからない輩もいる。冒険者から野盗に落ちる者も少なくない、そういった者のほとんどは、冒険者資格を剥奪された者の末路だ。基本的に冒険者資格の登録は誰でもでき、組合の基金も報酬の中から差し引かれて支払われるので問題ない、だからこそ、いろいろな者が冒険者となる為、野盗や詐欺師のような者が冒険者を装うこともある。新人冒険者をだまし、報酬のピンハネや人の良い冒険者を討伐依頼などに誘い、かませ犬にされることもあるのだ。そして、ここにも冒険者資格剥奪寸前の男が拘束されている。
「俺が何したって言うんだよ~、島に無許可で入ったのは全員同罪だろ?」
「不法侵入はそうかもしれないが、お前とお前のパーティーが下位のパーティーをそそのかしたか、脅した可能性は高い、しかも、女性冒険者をオーガに当てるとか、リーダー失格だろ!」
「アインよー、お前は見てなかったから、そう言うが俺達は、ウェアウルフとウェアライガに、てこずっていたんだ。強敵を押さえなければ、全滅だったさ!」
「しかしだ!」
「しかしもクソもねーよ、犠牲はでたかもしれねーが、助かったヤツの方が多いだろ?」
「それは、白檀達が入ったからだろ」
「いや、わからね、俺達のパーティーは無傷だったさ、あのままでも、全部倒せたかもしれねー、それまで他の奴らが耐えきれねなら、俺達の責任ではないと思うけどな…」
「お前達がそう言って他のパーティーをそそのかして、噛ませ犬にしてるのは、わかってるんだよ!」
「しらね~な~、アインさんよ!なに、正義面してんだ?お前も変わったよな?冒険者になったばかりのお前は、他人の事なんて気にしてなかっただろう?」
「俺だって成長したんだよ!」
「ヘイヘイ、そうですか」
冒険者はアインの説教はどこ吹く風といわんばかりの態度でアインをあしらう、この冒険者の言っていることは一理ある。理由はどうであれ自身で選択、もしくは各パーティーで納得し、魔海島への不法侵入を決めたのだ。結局、身を守るのは自身でしかない。後ろで、その様子を見ていた葵達だが、マノーリアがつかつかと歩きだし、その冒険者に平手打ちし口を開く。
「確かに、今回の事は全員に責任があります。しかし、あなたが魔海島への不法侵入を提案し、リーダーとして進めた以上、あなたには他の方以上の責任があります!あなたは、他人の力を信じることなく、身を守る駒として見ていたように、わたしは感じました。仲間の力を信じてあてにしたのではなく、犠牲にすることを考えたのではないですか?」
その冒険者リーダーはマノーリアに噛みつく。
「なんだとテメー!女のクセに!」
葵がわって入る。
「あんたのその女のクセにとは?その発現が物語っていますよ、なんなら彼女と決闘でもしたらどうですか?」
「はぁ?」
「皇国騎士団騎士長に決闘を挑んだらどうですか?と言っているんです」
「決闘?なに言ってんだよ、俺は別にそんなつもりはねぇよ」
冒険者のリーダーはマノーリアの実力を理解したのか、決闘を避けようとする。白檀が口を開く。
「まぁ、決闘は良いとしてだ。お前ら今回は魔海島奪還作戦に賛同して参加しているんだよな? 」
「そうだが?それがどうした」
「じゃ、俺の命令は絶対だ! 」
「はぁ? 」
「俺は総指揮のひとりだが問題あるか? 国、冒険者関係なく協力するんだったよな! 」
「それがどうした」
「アインところのウイングスとうちの守星調査隊の一部で、この拠点を守れ! こいつらなら、お前にそそのかされる事はないからな」
「やなこった。俺達にメリットがねーな」
「この命令に従えば、情状酌量もできるんだけどな、どうせ、資格剥奪したところでそのまま悪行に手を染めるだろうしな、まあ、協力するかどうかは任せる。後、言っておくが、お前達も犠牲になった事にだってできるんだぜ」
「脅すきかよ!」
「どう、受けとるかはお前次第だ。さっきお前だって、アインに減らず口をたたいてたろ? このくらい言われればお前らがそそのかした連中の気持ちもわかるだろ? 」
「けっ!わかったよ!」
冒険者リーダーは白檀のプレッシャーに負けて白檀の提案を了承する。すると海上騎士団の船も到着し合流した。合流した船からデイトがこちらの船に来た。
「咲さんと花さんから聞いて、上陸もありえるかと思って来ました」
「一度上陸しましたよ」
「デイト様がいるならちょうどいい」
白檀がそう言うと、葵、マノーリア、梔子、デイト、咲、花が上陸拠点防衛の任務につくこととなった。葵達は船から再上陸して、防壁の中に陣を構える準備をする。デイトが口を開く。
「さらに、強固な拠点にしましょう」
デイトがそう言うと、石造りの砦を簡単に作り上げる。さらに、巨大なゴーレム2体を出現させる。そして、ハニワのような土の騎士を30体作り防衛任務につかせた。アイン達冒険者達は、その光景に目を丸くして驚いている。いよいよ、本格的な魔海島上陸することとなった。
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