97-惨い死への覚悟
守星大戦時に、この世界の生物の一部が魔族に取り込まれた。ほとんどの生物はオス、メス共に獣人化され繁殖機能を維持させた。人間を魔物化させたオーガは、意図的に男のみをオーガとした。それは、人間が感情と思考する生き物であるがゆえに、もっとも残虐で精神的にも人間を苦しめる為に、魔族はそうした。オーガとなった人間は、男は殺し女を犯す化物と化す。人間の恐怖心を増長させる魔物となる。更に、はらんだ女性は、母性をもって愛情を注ぎ育てるはずの子に、腹の中から食い殺されるという残酷な結末を1カ月後に迎える。その為、オーガに犯された女性は、自身で命を落とすか、周りの人に殺されることが、この世界では少なくない。また、生物の中には、巨大化された魔獣がいる。魔族の中にもテイマーのような存在がおり、調教して魔獣を飼いならす魔族がいる。しかし、現代では、守星大戦後に、獣人・魔獣の中には野生化したのもおり、一部の魔獣はモンスターと繁殖できるのもおり、亜種や雑種が存在しているケースもあるが、テリトリーに関係なく、人を襲う事が目的となっている生物が魔族として認識されている。魔海島は守星大戦時の原種か独自の進化をしている魔族の宝庫である。葵達の目の前で土の中から現れ、冒険者とゴブリンが丸呑みされた。巨大化したミミズのような魔獣のジャイアントダークブルーワームだった。魔獣は黒っぽい色が多い。
「ワームだ!お前ら下がれ!」
アインが冒険者達に叫びながら、ジャイアントダークブルーワームに突進する。アインに気づき口を開き襲いかかるが、アインは身をそらして交わし、自身の右側をすり抜けざまに、剣で切り裂く。アインは腰が抜けた冒険者を1度ひっぱたき抱えて走る。他のウイングスのメンバーがそれをフォローする。ジャイアントダークブルーワームは、そこまで強敵ではない。Aランクのウイングスの手にかかれば、簡単に倒せる相手だ。その場にいた不法侵入した冒険者は6人しかいなかった。アインが冒険者に尋ねる。
「他の奴らはどうした?」
「ほ、他の奴らは先に行ったよ、俺達が1番ランクと経験値が低いから、ゴブリンを相手にしてから来いって言われて…」
冒険者がそう答える。アインが冒険者達を怒鳴る。
「お前らのやった行為は、政治問題になりかねない案件だ!この島の管轄は守星連盟なのはわかってるよな!冒険者全体に迷惑になりかねないだぞ!わかってんのか!ランクダウンは当然だろうが厳罰覚悟しろよ!冒険者資格剥奪だっておかしくないからな!」
冒険者は、冒険者組合と守星連盟の協定により、各国での優遇措置されている。入出国による免税や武器・魔法具の持込みも冒険者は数量の上限がない、冒険者は皆下を向きアインの言葉には返答しない。白檀が口を挟む。
「アイン、それくらいにしておけ…本人達だってわかってるだろう。こいつらは、お前たちが浜辺まで連れて、船に回収してもらえ、葵、マニーここまで防壁つくれ、それと土の中にもワームを近づけさせないようにできるか?」
白檀は、アインに指示を出した後、葵とマノーリアに指示を出す。葵が返答する。
「了解。地中にもやれそうなことやってみます。マニーじゃはじめよう」
「わかったわ」
葵が正面に10メートル程度の岩壁を出現させて、マノーリアが浜辺までの周辺に5メートル程度の岩壁を出現させ、浜辺まで岩壁で覆われた。更に葵が地面に手を当てて、地中にも硬い岩盤を垂直に作り、地中内にクラッシュロックの岩を作り、ワーム用の迎撃システムのように仕掛けておく。
「これで、いきなり襲われることはないと思います」
「よし、葵、マニー行くぞ!」
「白檀!3人で大丈夫か?」
白檀が先に進もうとするとアインが声をかける。白檀が軽く言う。
「俺たちを誰だと思ってんだよ!お前に心配されるほど弱くねーよ!俺たちの心配より自分たちの心配しろよ!」
「そ、そうだったな…加護持ちの心配してもな…」
アインは苦笑をして軽く手を振り砂浜の方へむかう。葵達は、石壁に一部開けておいた出口から石壁の外側にでる。腰丈ほどある草原が広がりが勾配があり、先は500メートルほど先しか確認できない。冒険者がかき分けた倒れた草を目印に後を追う、歩くと声が聞こえてきた。
「戦っているな!」
「はい!急ぎましょう!」
葵とマノーリアの支獣のエールとアリスを先にいかせる。葵達も走って草をかき分け、戦いの状況を視認する。冒険者と獣人が戦っている。冒険者のリーダーらしき人物の張り上げた声が聞こえる。
「おめーらは右に回れ!そっちはオーガ押さえろ!後衛もっと援護しろよ!オークぐらいひきつけろ!たっく使えね」
「リーダー!オーガに女は危険だ!すでに1人連れ去られてんだぞ!」
「倒せばいいんだよ!ウェアウルフとウェアライガがツエーのわかってるよな!そっちにまで手を貸せねーよ!」
リーダーっぽい冒険者は指示というより、文句を言っている。焦っているのか、度量が低いのかリーダーとしては失格の対応している。獣人はウェアライガ1匹、ウェアウルフ2匹、オーガ1匹、オーク2匹の計6匹いる。倒れたオークが2匹いるので元は8匹いたようだ。
「イヤあ!ふ、ふざけるな!クソ!」
そうしているうちに、オーガに女性戦士が捕まり、バタバタと女性はオーガに蹴りを食らわすが、ビクともしない、オーガはよだれを垂らしながら発情している。そして、オーガは茂みに姿を消す。
「ちっ!使えね。男戦士のパーティー連れてくるべきだったな…」
「使えねーのはテメーだ!」
白檀はそのリーダーを殴り飛ばす。
「オーガに女を当てるなんて、テメーはゴミだ!テメーには太刀を使うまでもねえな!」
「は、はあ?」
いきなり殴られたリーダーは何が起きてるか状況を理解できずに倒れこんでいる。
「テメーは後だ。葵、マニーやるぞ!」
「了解!」
白檀はウェアライガに向かい、葵、マニーが紫炎をまとい、ウェアウルフに攻撃を仕掛ける。当然のことだが3人の敵ではない、5分もかからずに勝敗が決まり、冒険者が複数で対応していたオーク2匹も、葵が一撃で絶命させた。藪に消えたオーガ2匹も白檀が見つけ切り刻んだ。
「これは惨い…」
さらわれた女性戦士2名を藪で捜索するとすぐに見つかったがあまりにも悲惨な状況であった。犯された事で一人は自身で首を掻っ切って死んでおり、もう一人は腹に剣を刺したまま死んでいた。マノーリアが同性の死に思うことがあるようで口を開く。
「騎士になる時に、こんな死に方もありうると覚悟したけど…自分の覚悟が甘かったって思わされるわ…ゆっくり休んでください…助けられなくてごめんなさい」
マノーリアは、名も知らない2人の女性戦士の遺体を撫でながら涙を流している。2人の遺体を同じパーティーのメンバーが抱きかかえて、先ほどの防壁まで戻り埋葬する。不法侵入した冒険者救出は15名救出し5名が死亡したのだった。
お読みいただきありがとうございます。
引き続き次話をお読みいただければ幸いです。
よろしければ、評価とご感想をちょうだいいただければ励みとなりますので、よろしくお願いいたします。




