90-魔海島奪還作戦 前日
予定では明日作戦を決行する。魔海島対岸では矢倉や杭を打ち込んだり、塹壕が掘られたり、防壁が着々と準備されている。木材を加工して作られている物、切石やレンガを積んでいるもの、土嚢を積んだり様々だが、その全てに魔法を使用しており、作成段階の力仕事にも、耐久性向上に魔法を使用したりと魔法文明の世界である。
麻衣はこの陣滞在を許可される条件として、最低限の剣術と護身術の稽古受ける事となった。明日開戦となれば、明日以降稽古ができるかは疑問だが、それでも、全く知らないと、聞いたことがある、昨日教わったという方が、回避の術は得られるだろう。麻衣が稽古を受けるのであればと、葵、マノーリア、梔子、咲、花、アマナ、信治が参加することとなった。信治は環による強制参加命令だった。剣術はアマナや梔子が教えて、護身術は、カトラスが幻流水精励術をかいつまんで説明する。また、麻衣にもバルーンフルーツ社のマジックブレスレットが支給された。魔力を持たない麻衣は、廉価版の方だ。一通り稽古が終わり休憩中に葵がカトラスへ尋ねる。
「カトラスの剣は独特の形をしているよね?」
「水中の中でも使い勝手が良い形状だそうだ。わたし自身使用していて、気に入っている」
カトラスは自身の方刃の美しいカーブが特徴の剣を見てそう答えた。続けてマノーリアがカトラスに尋ねる。
「麻衣さんはどうかしら?」
「まあ、昨日、今日だけだが、筋は悪くない。あくまでも護身術として考えているので、充分修得できると思う、麻衣どうだ稽古は?」
カトラスは麻衣を呼んび、麻衣がこちらに近づき答える。
「こちらに来て、対して動いてなかったから、都合が良いわよ!」
マノーリアが麻衣に尋ねる。
「今までは何かしていたの?」
「ダンスは毎日レッスンあったし、スタミナつける為に、ジョギングしたり、後、キックボクシングのジムにも行っていたわよ、週2回」
「ジョギング…キックボクシング…?」
マノーリアがわからない単語を繰り返す、この世界の言語がどうなっているか、転移した日本人には良くわからない、文字や言葉が違うのはわかるのだが、日本語のように理解ができるのだ、せいぜい英単語の意味がわからない程度の事があっても、会話の流れやその意味を理解すれば、問題なく会話ができるが、こちらの異世界の人は和製英語や新語のような物は、言葉が理解できないようだ。葵がマノーリアに補足する。
「ジョギングは走り込みで、キックボクシングは武術のひとつかな?蹴りと拳だけで闘う競技って言えば良いのかな?」
「麻衣さんは歌い手だけでなく、武術の門下生だったの?そんなに線が細いのに!」
葵はマノーリアも充分線が細いのに騎士してるけどねとと思う。こちらの異世界は、魔力を人が宿しているので、筋肉量が少なくても強い。魔族の出現で、生物に女神が生命力の向上をした事が要因である。
麻衣が笑いながら答える。
「あたしのは、あくまでも体力作りだよ、誰かと闘うこともないしね」
カトラスが声をかける。
「その鍛練を行っていたから、覚えが早いとは思う。そちらの異世界では、モンスターがいないようだが、こちらでは身を守る術は必要だ」
「そうだね。そうだ、葵達は転移する前はあっちでどういう生活していたの?」
麻衣が話を変えて葵に尋ねる。
「俺は大学生で信治は高校生。俺は埼玉に住んでて信治は世田谷だって、そういえば、麻衣転移の寸前どうしてた?」
「寸前か…ちょうど移動のクルマの中で、首都高のトンネルに入るところで、記憶が飛んで気がついたら森の中で目が覚めた」
「うーん、やっぱり事故とかかな?」
「事故?」
「転移している理由が何かなって、今こちらに転移した人に聞くと、みんな事故に合う寸前に転移している可能性があるんだよね。まぁそれを知ったことで戻れる訳でもないんだけど」
「あたしがクルマの事故で葵と信治は?」
「俺はあっちの月で5月に電車に乗ってた。信治はマンションが火事になった」
「電車の脱線事故で行方不明の人ひとりいるって、信治の火事は世田谷のマンション火災でしょ?」
「麻衣も知ってるんだ?」
「あたしが住んでたの目黒だから近いでしょ、その日オフだったから、覚えているわ」
「なるほどね。てかっ、俺乗ってた電車脱線事故したのか?」
「確か、線路に何か置かれたとか…だった気がするわ」
「それは、犯人捕まえて欲しい話だな…鉄道会社にも文句言えないよなぁ、で、俺は唯一の行方不明者か…」
「そこまで、大きな話しになってないけど、信治のも葵のも未成年者が事故と災害で行方不明になるケースが特集組まれている事もあったわ、そこまで話題にはなってなかったけど…」
「麻衣がこっち来て話題になるんじゃないの?」
「多少は影響しても、すぐにみんな忘れるわよ」
そんな話をしていると、矢倉の兵士が緊急の魔法具を鳴らす。サイレンのようなそれは大きな音で警報を鳴らす。
「嵐がくる!大きな嵐だ!」
「気象文官は何してた!」
「至急、魔導師隊と神官を集結させろ!」
これから、魔族に戦いを挑むところへ、謎の嵐が発生したのであった。
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