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【祝! 完結】STRAIN HOLE ~よくあるフツーの異世界でフツーに騎士になりました。だってフツーでもそこそこ楽しめますよね? ~  作者: 橘 弥鷺


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81-説得

線の細い痩せた体型に少し長めの金髪を後ろに流した髪型のその姿は、ハツラツとしたとか、凛としていると言った言葉は似合わず、なんとなく疲れている。もしくは何かに恐れている様にさえ感じる。その心情を隠そうとしているようだ。


「お待たせして申し訳ありません。元老院議長のサーディンと申します。」

「急な面会要求で申し訳ありません。サーディン元老院議長、わたしはロスビナス皇国騎士団騎士長如月マノーリアと申します。守星調査隊今回はこの分隊の隊長として参りました。」

「如月騎士長殿、お気遣いなく、皇女様と皇国元老院議長の使いであれば、他を優先する理由はないでしょう。で、皇女様と皇国元老院議長の書簡はわたしも目を通して良いものでしょうか?」

「皇女と元老院議長からは、サーディン元老院議長にもご確認いただいて良いと申しつけられております」


環の用意した書簡の内容は、守星調査隊設立にともない、各眷属神代行者を一同に集まり会談を行いたい旨の内容だった。現在存在する神の代行者は以下の通りだ。


最高神女神アマテウス/ロスビナス皇国 皇女 環


大地創造の眷属神デイト・ア・ボット/ビナスゲート共和国領自治区 霊峰神殿法国 神殿長 あざみ


海創造の眷属神サヨリ/オーシャンガーディアン海洋国 姫 アネモネ


植物創造の眷属神エーテル/フォレストダンジョン王国

女王 マンテマ


火創造の眷属神鳳凰と風創造の眷属神カーラス・テノーグの神殿は、あるものの代行者は存在しない、鳳凰に関しては白檀に神降ろし(憑依)しているので、代行者というよりも、鳳凰そのものである。デイト・ア・ボットも本人が目覚めているが、双方ともに公にはしていない。どの代行者も血統での襲名でなく、各国内から後任が各神器によって選ばれる。今回の救出作戦に関係なく、環は会談を検討していたので、この書簡も正式な打診のものだ。目を通したサーディンがマノーリアに答える。


「守星の為に代行者で集い会談を…素晴らしいお話ですが、アネモネ姫は残念ながら当分参加ができないでしょう」

「と、言いますと?」

「アネモネ姫は最近体調を崩されております。完治するまでは厳しいかと…」

「アネモネ姫が体調を…わたしは治療師の職能も持ち合わせております。もしよろしければ、僭越ながらアネモネ姫のご容態を診察いたしましょう」

「如月騎士長申し出感謝いたしますが、姫にも主治医がおります。残念ながら治療師の及ばぬ病のようで…」

「でしたら、わたしの隣におります。霊峰神殿より招いた神官のデイト様がおります。」


サーディンが少し顔が硬直したが断る理由を思いついたのか口を開く


「ご心配いただいて姫に代わり感謝いたします。しかし、姫は海洋人種アクアノイドですので、霊峰神殿の神官では…」


デイトが無表情にサーディンへ答える。


「サーディン元老院議長、ご心配にはおよびません。眷属神デイト・ア・ボットと眷属神サヨリは、大地と海を創造するにあたり、良き友であり好敵手でありました。互いを良く知り、共に守星の為に尽力した仲です。」


サーディンが軽く笑い返答する。


「ふ、まるで、そなたがデイト様でサヨリ様と契り(ちぎり)を交わしたような言い分だな…いや…失礼」


葵は正解その本人ですよと心中で思いながら、知らないとは言え、神様相手に良くやるなと思う。すると、デイトが今までにないが、冷静に殺気を放ちながらサーディンに尋ねる。


「何を恐れているのですか?魔族に取り込まれることですか?」

「ぶ、無礼な!」


サーディンはデイトの殺気を感じたのか怒りを露にしている。


「無礼だと…しかたありませんね。マノーリアさん教えてあげてかまいませんね?」

「予定外ですが…」

「葵さんも言っていたではありませんか、今回は、わたしの力を出し惜しみしないと」


デイトは本来の力を少しだけ解放し、サーディンへ尋ねる。


「茶番は終わりです。いくつ罪を重ねるのですか?民を導く要職にまでなったにも関わらず、その職務を果たさずに、まだ欲にまみれようと?悪魔に取り込まれる覚悟がないのに…今なら過ちを償うことができます。時間はありません。過ちを償う機会を与えます。」


デイトの少女の体の背に本来の姿が現れる。サーディンはその場で膝から崩れる。マノーリアがサーディンへ声をかける。


「アネモネ姫はどちらに?」

「迎賓館に…」

「サーディン元老院議長日本人の方も軟禁されてますよね…調べはついております。守星連盟法を違反しているご認識は?」

「はい、姫と同室にいます」

「後、陸軍と陸上騎士団の武装解除を命令してください」


うなだれたサーディンにデイトが聖水を渡す。


「人のままで罪を償うか、魔族に取り込まれ民から斬られるか、前者を選ぶならこれをお飲みください」


葵が皆に告げる。


「迎賓館に急ごう!」


葵達は急いで迎賓館へ向かう。サーディンは武装解除の命令を出し、さらに反政府組織としていた、ポルトベッロシティの組織を政党と認め協議に入ると声明した。オーシャンガーディアンの内乱は大きなトラブルとならずに沈められると思ったが、しかし、大きな犠牲を出すこととなった。


「アネモネ~!誰か~!」

「皇国皇女直轄守星調査隊の者です。入ります。」


葵達が部屋に入ると、麻衣が倒れたアネモネを横にして声をかける。マノーリアがすぐに診断する。


「まずい!応急措置を行います。デイト様わたしの力では…デイト様お願いいたします。」


デイトがアネモネに手をかざすが、デイトも無言で目を瞑り片方の拳を強く握り感情を押さえている。


「残念ですが…アネモネ姫の寿命の限界のようです」


アネモネ姫がデイトの声に気がついたように声を開く。


「サヨリ様よりも先にデイト様にお会いできるとは人生はわからないものですね」


代行者としてアネモネもデイトが本人であることを感じたようだ。アネモネが麻衣を呼ぶ。


「麻衣、せっかく出会えたのにごめんね。麻衣に海をみせてあげたかった…この国をきっと好きになれるよ~海がみたい」

「わ、わかったから、もう喋らないで…良いよ!」


麻衣はアネモネの両手を握り自身の胸の前に抱えて泣く、周りも何もしてあげられないと思ったが葵がデイトに尋ねる。


「デイト様、環さん達のいる場所なら移動できますよね?」

「はい、環さん達の現在位置は把握しております」

「アネモネ姫に海をみせてあげよう!」


葵達はアネモネと麻衣を馬車に乗せて、ポルトベッロへ向かう、とはいってもデイトの本来の姿の一歩の距離だが、目を閉じたら景色が変わってたという感じだ。



お読みいただきありがとうございます。

引き続き次話をお読みいただければ幸いです。

よろしければ、評価とご感想をちょうだいいただければ励みとなりますので、よろしくお願いいたします。

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