77-電撃救出作戦発令
この世界には、女神アマテウスによって生みだされた人種以外に、眷属神デイト・ア・ボットがドワーフ、眷属神エーテルがエルフ、眷属神サヨリがアクアノイドとマーメイド生み出し、人種と多少異なるが言語による意思の疎通が可能である人種いる。全ての人型生物を総称して人間と呼ばれる。ちなみにアクアノイドは、海洋哺乳類を亜人化したが、水陸両方での生活が可能であるが、魚類が亜人化したマーメイドは、一週間程度であれば尾びれを足に変え、肺呼吸で生活できるが、それ以上の生活は危険とされている。学術的には、海洋人種と人魚と分かれているが、一般的には双方の人種を海洋人種と呼んでいる。人種間に争いはなく、共存共栄してきた歴史がある。唯一、蔑視されたのは、異世界から来た日本人だったが、その差別的風潮も今では、皇女環によって改善されたのだ。しかし、この世界にも自身が得た権力を固持する為に、他人を犠牲にしてもかまわないと考える者もいる。しかし、欲にまみれた者の末路は、本人が望むところではない。悪魔に取り込まれる者がほとんどであり、悲惨な結末を迎える。国の権力を掌握するものが悪魔に取り込まれれば、その被害は千万の人々の命を奪うこととなる。それを阻止する為に皇国守星調査隊は急遽任務につくこととなった。環によって、皇国第二都市であるシルドビナスの重役とロスビナスシティより関連文官達が緊急招集され今後の会議が行われていた。
「デイト様魔族の関わりはあると考えられますか?」
「現段階ではなんとも言えません…しかし、遅かれ早かれ取り込むでしょう。」
「次の干潮の日にちはいつになりますか?」
環が気象担当の文官に尋ねる。
「7日から10日後になります。完全に潮が引くのが10日後とお考えください。大型の魔族であれば7日の時点で海を渡ることに支障はないでしょう。」
「なるほど、時間はありませんね。海軍司令すぐに出港準備をお願いいたします。陸軍司令はシルドビナスへ派兵準備をお願いいたします。元老院にも皇女による指示と伝令をお願いいたします」
「承知しました。」
各重役が動きだす。皇女は本来は政治的な問題に直接関与しないが、政治権限もある為、有事の際は元老院議長と同等の命令を執行することが可能である。環と元老院議長の関係も良好な為、直接指示をだしても問題はない。元老院議長もシルドビナスへ向かうとの知らせもあったので、それまでの間は環が指示を出すことになった。武官文官への指示を出し終えた環をみて葵が尋ねる。
「俺達はどうしますか?」
「まず、新政府としてレジスタンス側との接触が必要ですね。納得のいく話であれば、新政府として皇国は支援をします。後は、アネモネ姫と日本人の方の救出も最優先事項となります。」
マノーリアが環に提案する。
「では、2チームに別れて行動しますか?」
「時間もありませんので、それが良いでしょう。」
人選の結果は、アネモネと日本人の救出隊が、葵、マノーリア、梔子、咲、花そしてデイトとなった。斥候の3人は地理を理解しているという事で適任であり、葵、マノーリア、デイトの攻撃力を加え、短期間での電撃救出作戦を実施する。これは、皇国がレジスタンス側に加担に関係なく、眷属神の代行者への冷遇と日本人殺害計画が、守星連盟法の違法行為となる事から、軟禁が事実である以上実施する。一方レジスタンスとの折衝は、当然の事ながらマーレ、環、白檀、柊、信治さらに皇国元老院議長や文官等を引き連れて、航路よりポルトベッロシティに入り秘密裏に会談を行うこととなった。
「では、各チーム大至急準備をお願いいたします。そちらのチームはマニーちゃん隊長お願いしますね」
「わかりました。環さん馬車は2台に分けますか?」
「わたし達は航路ですし、その馬車は目立ちすぎますが、マニーちゃん達で自由に使って下さい」
「では、そうさせていただきます。みんなミーティングしましょ!」
マノーリアの指示で救出隊のメンバーは部屋を移動して用意された別室でミーティングを行う。葵がマノーリアに尋ねる。
「明日、出発して夜には首都につくとして、元老院議長に会えるのは、明後日になるわね」
「途中の関所はどうするの?首都へは許可が必要なんだよね?」
「それは、皇女と皇国元老院議長連名の書簡持っていくわ!アネモネ姫と会談をしたいという内容よ」
「ビナスゲートの時と似た感じで良いのかな?全員で会う?」
「そうね。元老院議長と会うのは、わたしと葵くんとクーで良いと思うわ、その間にデイト様と咲ちゃん、花ちゃんにアネモネ姫の居場所を調べてもらいます。」
「元老院議長の出方を見るって事で良いんだよね?」
「そうね。ビナスゲートの侯爵みたいに簡単に敵意を剥き出しにしてくれたら楽だけど」
「アネモネ姫が首都にいるのは間違いないんでしょ?」
「あたし達が調査した時は迎賓館にアネモネ姫と日本人を軟禁しているって話だった。ただ、本人達は確認できていないけどね。かなり厳重な警備をしていたね」
「はい、クーさんの言うとおりです。おそらくアネモネ姫をレジスタンス側に救出させない為だと思います。」
「後、あたしの耳がわずかですが、水面を打つ音が確認できてます。魚の尾びれでバシャンって水面を打つ感じの音です。後は女性ふたりの会話する声もわずかですが、内容までは距離があって聞き取れないですけど…」
梔子、咲、花が偵察時の状況を説明する。説明を聞いた葵が口を開く
「アネモネ姫は人魚だから、水面を打つ音がするか…もう一人が日本人かな?けど、ふたりセットにする?」
デイトが葵の疑問に答える。
「転移した日本人は、武力に対して無力ですからね。魔法を覚えたばかりの子供でも、大人の日本人を押さえつけるのは容易いですからね。ふたりいても問題ないと判断して、監視しやすさを選択したのでしょう」
「ふたり一緒にいるなら、手間がかからなくて都合がいいな、デイト様、今回は手加減なしに手を貸して下さいね。」
「無論です。私欲の成就させる為に女神はあなた達を創造したわけではありません。他者の幸福を脅かす者は道を示す必要がありますが、今回の者も悔い改める心が残っているのか疑問です」
電撃救出作戦の大まかな流れを確認して皆準備に入る。マノーリアが皆に指示を出す。
「明日、明朝に出発しますのでそれまで解散!」
「了解!」
アネモネ姫と日本人転移者の救出は成功するのか…
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冬童話2021投稿用に、STRAIN HOLEの世界とキャラクターを使用して短編を書いてみました。
本編を読まなくても、完結するように書いておりますが、時期的なものや状況は本編とリンクさせておりますので、合わせてお読みいただければ、より楽しんでいただけるかもしれません。
【短編】姉妹のさがしもの
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