76-城塞都市での情報収集
街一体に高い城壁が設けられ、門以外からの街の中に侵入する事は困難と侵入者を思わせるだけの重厚な景観をしている。しかしながら、威圧的な印象はなく、街には活気があり、自由に人が行き交っている。また、港も併設されていることから、隣国オーシャンガーディアンより、水揚げされたばかりの海の幸が輸入され市が賑わいをみせている。ここはロスビナス皇国第二都市のシルドビナスである。皇国最南東に位置し、邪神が封印された島から国内では、もっとも近い場所に位置する。とは言っても、邪神が眠る島までは、何百キロも離れているので、見えるわけでもない。しかし、南からの有事の際には、皇国の防衛拠点となる街であり、首都ロスビナスシティが陥落した場合は、シルドビナスが首都機能を行うこととなっている。守星調査隊一行は予定を変更し、隣国オーシャンガーディアンの内情調査の為に、シルドビナスへ立ち寄ることとなった。シルドビナスの門へ到着すると、門の兵が慌てて常駐の軍と騎士団の長とシルドビナス知事に報告に向かう、無理もない守星調査隊の出発は早馬で報告されていたが、今回の調査地域はフォレストダンジョンであり、オーシャンガーディアンではないのだ。しかし、守星調査隊が門に到着したと報告されると、特にやましいことはないが、騎士団のトップと国の象徴である皇女が来ているのに、挨拶もなしというわけにもいかないのだ。白檀と環は気にしていないようだが、他者からのふたりの地位への威厳は、かなりのもののようだ。門で白檀より騎士団の施設を訪ねたいとの報告がなされた為、騎士団施設へと案内される。騎士団施設へ到着し、部屋に通されると、この街の常駐騎士団騎士長と軍の師団長そして知事と会う事となった。環が代表して挨拶する。
「急遽お訪ねしたことをまずは謝罪いたしますね。ご多忙の中お時間いただき申し訳ありません。」
「そ、そんな皇女様謝罪など…お会いできて光栄でございます。しかし、何用でシルドビナスへ?今回はフォレストダンジョンと伝令は伝わっておりますが…」
「はい、実は彼女はオーシャンガーディアンのポルトベッロ・マーレさんですが、ポルトベッロシティ統治知事のご息女であられます。彼女からオーシャンガーディアンの内情をお聞きして、調査した方が良いかと思いまして、こちらの街で変わった様子はございませんか?マーレさんみなさんにお話をしていただけますか?」
「わかりました。」
マーレがオーシャンガーディアンで起きている内情を詳しく話す。騎士長が口を開く。
「確かにこの数週間オーシャンガーディアン国民の陸路からの入国は少なくなりました。後は、我が国の者やフォレストダンジョンの国民が、オーシャンガーディアンの首都へは入れずに、ポルトベッロを迂回したと部下や兵達が聞いたと報告されています。」
白檀が報告を聞き質問する。
「首都への規制理由は?」
「はい、反政府組織が活発化している為だとか、強引に断られるわけではなく、関所の兵達は『迷惑かけてすまない』や『申し訳ない』と頭を下げて説得されたようでして…」
「兵達は知らされていない…知っていて善良に見せている…本当は反政府組織が悪なのか…」
白檀が独り言のように思考を口にすると、マーレが立ち上がり反論する。
「そんな事はありません!」
隣に座っているマノーリアがマーレを諭す。白檀もマーレを諭すようにしてマーレに声をかける。
「マーレ、俺達は情報をまだ収集している最中だ。しかし、オーシャンガーディアンは同盟国であり、政府が皇国へ支援要請があれば、政府側を支援するのが道理だ。しかし、政府が不当な事を行うのであれば、我々はオーシャンガーディアン政府を敵として、レジスタンスを新政府として認める事になるんだ。だからこそ、正しい情報の収集が必要だからな。ただ、そこの霊峰神殿神官のデイト様がマーレが正しいとさっきも言っていたからな、それを裏づける情報が欲しいんだよ」
「す、すいません…」
「うちの斥候隊3人娘が何かしら掴んでくるだろよ、そもそも、政府がこちらに何も言ってこないのも怪しいのは事実だ。皇国政府でなくても、国境にあるシルドビナスへは何かしらの情報を伝令してもいいだろ」
環が続けて尋ねる。
「海からの異変はありませんか?」
「大きな異変はないのですが、価格相場がこの街では値下がりしているようです」
葵がこの世界の政治なので黙って聞いていたがわかる話なので口を開く。
「海軍と海上騎士団がいるからな航路はレジスタンス側にあるんだろ、オーシャンガーディアンの首都や内陸に商品が卸せない分がこの街に流れている…そんなところでしょうね。」
「そうだな。葵はどう思う?」
「まだ、わからないですけど、レジスタンスの為に単身で報酬がいいからと原生湿地で冒険者チームの同行して危険な目にあっているマーレさんが悪とは思えないですね。それに皇国の介入は悪人は避けたいですからね。支援要請して事情説明して『あんたが悪いよね?』って言われたくないから言えないでしょうし、国いや世界の象徴の皇女と鳳凰白檀を敵には回したくないですよ誰も」
「それもそうだが、お前も恐れられている1人だからな、ある意味俺よりも未知数だからなお前は!」
葵が加護持ちなのは数週間前に皇国そして守星連盟により、大陸全土へ発信されている。
「団長、嫌なこと思い出させないで下さいよ」
「都出る時は綺麗な娘達に鼻の下伸ばしてだけどね」
マノーリアが単調な声で葵に釘を指す。葵は話を変えないとマノーリアの機嫌勝手に悪くなると何か良い話題はないかと思考していると部屋のドアが開けられる。
「ただいま~戻りました~!」
「み、水~あ~疲れた」
「ふ、ふたりとも早いよーお水ください。」
斥候隊3人娘の梔子、咲、花が戻ってきた。3人ともに水を2杯ずつ飲み息を整える。環が梔子に尋ねる。
「マーレさんが言っていたのは事実で、オーシャンガーディアン政府はヤバイね。けっこう、危ない橋渡ってでも、レジスタンスを他国に知られる前に黙らせたいみたいね。」
「何をしようとしている?」
「ひとつは湾岸の街を魔族に襲わせるみたい、街道の関所は結界作成の手はずもかねているみたい」
この街の騎士長がテーブルを叩いて不快感を現す。
「ふざけている!外道も良いところだ!」
「今、眷属神サヨリ様の代行者のアネモネ姫が軟禁されていて、海の結界が弱まっているんだって、次の干潮の時にやる計画みたいよ」
「干潮の時に?」
マーレがあわあわと震えて泣き崩れる。泣きながら説明する。
「ひどい…悪魔の所業よ!おそらくアネモネ姫の命が危険な状況だわ!それに…」
口にするのもはばかれるのかマーレは口を閉ざす。デイトが代弁する。
「深海神殿付近の魔族を湾岸の街に誘導するのでしょう」
「深海神殿?」
「今では、魔海島と呼んでいますか?」
葵と信治以外が驚愕の顔を顔面に貼りつける。葵が誰となく質問してデイトが答える。
「今では、人が踏み入れられない死の島です。守星大戦時に、眷属神サヨリによって、魔族の軍勢を減らす為に、大陸から離すことで島となりました。それにより魔族の軍勢数十万を島に閉じ込め、周りを海流結界で島からも出られないようにしましたが、サヨリは力尽き眠りにつきました。そして、その深海神殿の門がその島にあるのです。サヨリの代行者のアネモネさんは人魚のようですね。海洋人種であれば陸上生活は問題ありませんが、人魚は尾びれを足にし肺呼吸での生活は、無理をしても一週間が限度です。」
皆が苦しい表情をする。梔子が更に続ける。
「これだけでも充分重いよね~」
「まだあるのか?」
この街の師団長が目を丸くし尋ねる。
「日本人が捕まっているみたい」
「守星連盟法違反ではないか!」
梔子は肩をすくめてため息をつく
「さすがに、日本人の人を救うのは無理だった。政府も分かっててやっているんだから、鉄壁の守備だったよ3人じゃ無理だった。たぶんアネモネ姫もそこにいる。」
梔子が下を向きながら首を降る、咲と花も自身の不甲斐なさを感じているようだが仕方のないことだ。マノーリアが疑問を口にする。
「何故日本人の人を?保護した方が政府の印象がいいんじゃないの?」
梔子が珍しくためらいながら言う。
「日本人を殺して、レジスタンスの仕業として公表するみたい」
葵が口を開く
「決まったな!俺はレジスタンスを新政府として担ぎますよ!」
全員が同意しうなずく、隣国の内乱への加入を決心する。皇女環と騎士団長白檀であった。
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冬童話2021投稿用に、STRAIN HOLEの世界とキャラクターを使用して短編を書いてみました。
本編を読まなくても、完結するように書いておりますが、時期的なものや状況は本編とリンクさせておりますので、合わせてお読みいただければ、より楽しんでいただけるかもしれません。
【短編】姉妹のさがしもの
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