74-魔女救出
その姿は異様だ。あれが何をする物なのか、見たことない者は、疑問符が消えないだろ。葵も理解をしているつもりだが、戦闘中に不謹慎なのも承知の上で、どうしても笑いそうのなる。痛いコスプレ高校生が、あの吸引力が変わらないハンディクリーナーを構えているのだ。葵達の世界であの姿でいれば、ご近所さんから「長月さんところの信治くん大丈夫?」と噂されるに違いないし、同級生に見られればいじめられる。しかし、当の本人は大真面目に目の前の寄生植物に立ち向かっている。本来は後衛の信治を全面に出すのは危険だが、あの掃除機、いや魔法吸引器のマジックバキューマーは、目の前の者の魔法を見境なく吸引する為、信治を全面に出す事となった。しかし、信治を守るのは簡単だった。葵、マノーリア、デイトがデイトの力を顕現させて、幾栄にも信治の前に岩の壁を作り出す。更に白檀が鳳凰の力で岩の壁の隙間に炎を張り巡らせる。後は、全員魔法による攻撃の準備をして待機する、いつウィッチイーターが攻撃がしてきても攻撃可能だ。白檀が信治に指示を飛ばす。
「信治!今だ、やれ!」
「了解!マジックバキューマー!」
信治がマジックバキューマーをかまえると、ゴーっと音を立てる。特に何も変わらないが、ウィッチイーターは異変を感じたのか暴れ始める。ウィッチイーターは実を信治に投げつけたり、蔦で岩の壁を破壊しようとするが、眷属神の壁の層は簡単には破壊できない上に、眷属神の炎が蔦に纏わりつく。
「魔力量多過ぎて全部はとりきれない、けど、精製すれば弾は作れるから、そろそろ僕の前に入ってもらって大丈夫!合図します!」
白檀が皆に指示を飛ばす。
「よし、全員戦闘準備!クー、咲、葵は救助を急げ!他は陽動かけるぞ!」
皆が武器をかまえて信治の合図をまつ。
「吸引完了!みんな弾丸作成までお願いします!」
「わかった!信治頼むぞ!」
葵が距離はあったが信治に拳を見せて健闘を祈りを捧げる。信治が親指を突き立てて返答する。
「絶対に失敗できない!みんなが信じてくれてる。絶対に倒してやる!」
白檀、マノーリア、柊が陽動をかけるために、支獣に乗り空に舞う、環、デイト、花が遠距離からの攻撃をして支援する。ウィッチイーターは魔力を吸引されたせいか動きが鈍くなっている。葵、梔子、咲が支獣ともにウィッチイーターの懐に入る。咲が葵と梔子に声をかける。
「この辺で、アイツをひきつけます」
「わかった!無理するなよ!」
「はい!お二人も気をつけて」
「咲、絶対に無理しないこと!」
「クーさんも!」
咲は自身の支獣のミィとウィッチイーターの蔦を自分達に引き付ける。
「ミィ行くよ!」
咲はショートソードで蔦を斬り刻む、ハリネズミのようなモンスターであるニードルモンスターの姿をしたミィが、毛を針のように飛ばしたり、ボールのようになって、蔦へダメージを与える。
「咲も強くなってる」
梔子が咲の戦う姿を見て安堵する。バティの成長が自分の事のように嬉しいのだろう。梔子が意識を戻して葵に告げる。
「葵!そろそろ行くよ!」
「よし!一回で決めるぞ」
葵は自身と梔子にグラビティコントロールをかける。梔子はウィンドウウォールを顕現させて足場を作る。ふたりはそれを使って蹴り、一気にウィッチイーターの花の根元へ垂直に飛ぶが、ウィッチイーターもふたりに気がつき、何本もの蔦がふたりを襲う。
「クラッシュロック!」
「シャープラッシュ!ダブルエッジ!かまいたち!葵!行って!」
「わかった!エール梔子を守れ!」
「ワァン!」
梔子は剣技で蔦を切り裂く、支獣のユキとエールが梔子を援護する。葵は花の付け根の膨らみに剣技を放つ
「クイックレイア!ランドスライド!」
茎の表皮が裂けて、中に人が埋もれているのが葵からも見えた。葵はダガーに持ちかえて、魔導師に纏わりついた植物の繊維を切ってていく、グラビティコントロールを魔導師にかけて引き出し飛び降りる。エールが気がつきふたりを背にのせて離脱する。
「クーもう大丈夫だ!救助した!」
「わかった!ユキちゃん離れよう!」
葵の声で梔子もユキになり離脱する。葵は次に陽動しているマノーリアに声をかける。
「マニー!救助した!彼女の容態を見てくれ!」
「わかったわ!」
環が馬車周辺に結界をはり、マノーリアが容態を確認する。治療師としてのマノーリアの姿を見るのは、葵も初めてだが、マノーリアの手際の良さは素人でもわかる早さだ。信治から声がかかる。
「できた!みんな回避して!30秒で発射するよ!4発撃ちます」
信治の声に白檀が皆に回避を指示する。花が皆が回避する間にロンクレンジライフルで援護する。
「マジックグレネード!」
信治が放った4発のグレネードランチャーの弾丸がウィッチイーターの頭上で炸裂する。2発のグレネードから
ウィッチイーターに高熱を浴びせ、残りの2発が瞬間冷却しウィッチイーターは凍りつく、魔導師を救助されていることもあり、ウィッチイーターは身動きをとれない信治が花に声をかける。
「花ちゃん、とどめよろしく」
「はい!」
花はロンクレンジライフルでウィッチイーターの喉元に3発撃ち込む。ウィッチイーターの頭であった花は散り息途絶える。
「討伐完了!」
信治と花も結界内に戻ってくる。魔導師の姿を見て信治が声を漏らす。
「魔女っ子少女キター!」
救助した魔導師の少女は、青みがっかた銀髪に黒いローブをまとい。ミニスカートにロングブーツを履いている。白檀がこの娘のだろうと、ウィッチイーターの亡骸から、ワンドと三角帽子も回収してきた。葵もロゼッタよりもこの娘の方が魔女っ子ぽいとは思うが、信治のテンションが上がっているのかは理解に苦しむ。魔導師の彼女を見ながら環が首を傾げながら思考している。マノーリアが気がつき環に声をかける。
「環さん彼女に見覚えが?」
「魔導師の方なのでおそらく3年前の結界魔法隊にいらしたと思うのですが…見覚えがあるのですが名前までは…見た目からすると、わたし達と歳は変わらないでしょうから、当時は魔法師か魔術師だったのでしょう」
3年前のストロングスピア防衛戦で結界作成に従軍した、神官や魔術師は多いが、女神の代行者である環やあざみ、さらに最年少で入ったが、既に魔導師の職能を得ていた、ロゼッタ達は魔法隊の中でも特級隊だった為、面識があった。マノーリアが環に声をかける。
「当時は沢山の方がいましたからね。容態も安定してますし、2両目にスペースを確保したのでそちらで休んでもらいましょう」
「そうね。付き添いは、マニーちゃんと柊さんとわたしで行いましょう。」
「わかりました。」
想定外の戦闘と救出を同時に行ったので、予定変更しここで、少し長めの休憩を取り、出発する事となった。
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冬童話2021投稿用に、連載中のSTRAIN HOLEの世界とキャラクターを使用して短編を書いてみました。
本編を読まなくても、完結するように書いておりますが、時期的なものや状況は本編とリンクさせておりますので、合わせてお読みいただければ、より楽しんでいただけるかもしれません。
【短編】姉妹のさがしもの
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