68-エルフとディーバ
国土の8割が大森林におおわれた、フォレストダンジョン、この国唯一の国境にある外交都市がある。人種が、単独で入国できるのはこの都市までだ。この都市以降の入国は、この国のエルフを最低1名は案内人として同行が義務づけられている。これは、政治的理由ではなく、この国の名にもなっている、フォレストダンジョン=大森林は、人種では無事に生還する事は皆無とされている。その為、ガイドと言われるエルフ達を案内人として同行させるのだ。この国の産業は林業や木工業とこのガイドが主な外貨収入となる。王都よりも経済的発展を遂げているこの都市は、フォレストダンジョンで最も大きい経済都市となっている。アマナと麻衣は、王都を出発して、2日かけてこの都市に到着した。アマナは、フォレストダンジョンの騎士で転移した麻衣の第一発見者だ。金髪碧眼に尖った耳をしている王道のエルフだ。麻衣は日本いや世界中から注目を浴びていた、人気アーティストで約1週間前に転移した。栗色の髪の毛先に赤のカラーを入れている。
「ツリーハウスとか木の穴の家とか、ファンタジーの村ばかりかと思ったら、王都とよりもまともな文明的な街があるのね。」
「森の中は必要以上に開発しないようにしているからね。この街は、フォレストダンジョンで一番大きい街だよ!他国の人も多くいるから、人種の人も多く住んでいると思うよ」
「人種?わたしみたいな人もいるの?」
「人種のほとんどは麻衣と同じ人耳で亜人耳の猫耳 犬耳 狐耳 狸耳 兎耳の人達がいるね。後はみんな御石をアクセサリーにしているかな?」
「御石?」
「生まれた時にみんなが持っている石でそれを使って人種の人達は魔法を使えるんだって、ロスビナスに行けばいろいろ教えてもらえると思うよ」
「まだまだ遠いんでしょ?」
「まぁね。この街を出ると隣のオーシャンガーディアンに入国して、その隣がロスビナス皇国でも首都ロスビナスシティはさらに北だからね。順調に行って10日間くらいかな?」
「10日…なんか暇潰しできる物でもないかな?」
麻衣は街の中をキョロキョロと見回して、何か暇潰しが出きるものを探している。
「麻衣には歌があるんだからいいじゃない!」
「そうだ!アマナなんか楽器ない?歌だけじゃ盛り上がらないでしょ!アマナだって楽器持ち歩いているし、わたしも欲しいな~」
麻衣はアマナに甘える。アマナは横笛を持っていて、今までの道中でも、麻衣の歌に合わせて吹いていた。アマナは肩をすくめながら、小さくため息をつく。
「しょうがないな~、まあ、旅費も沢山もらったし、あまり高くない楽器ならいいよ!けど、野宿があっても文句言わないでよね!」
「楽器あるなら全然平気!」
「どんな、楽器が良いの?」
「たぶん、弦楽器なら弾けると思う」
「そうなんだ。麻衣は歌だけでなくて、楽器も弾けるんだね~ あそこが楽器屋さんみたいよ」
「ほんとだ! いこいこ! 」
麻衣はアマナの手をつかみ走り出す。店に入ると楽器が沢山陳列されている。麻衣は弦楽器のところへ向かう。
「いろいろあるね~♪ あの~ 弾いてみて良いですか? 」
「どうぞどうぞ」
「麻衣は音楽が本当に好きなんだね~ 」
「音楽が一番!他にだって好きなことはあるわよ!けど、文化の違う世界で共通して楽しめるのはやっぱり音楽でしょ! わたしから歌をとったら何も残らないわよ!」
「これが良いかな? 」
麻衣がギターよりも小さくどちらかというと、マンドリンやマンドラみたいな形の小ぶりな弦楽器を手に取り弾いてみる。アマナと店主が目を丸くして驚く。
「お姉ちゃん、今まで弾いたことあるのかい? 」
「似た楽器はずっと使ってましたよ、でもこれは初めてですよ! アマナ? わたしの実力わかったかしら? 」
「確かに凄いよ! 」
店を出て麻衣はご満悦で、弾きながら歩き始める。鼻歌混じりで、歌い始めるのも時間の問題だ。アマナが麻衣に釘をさす。
「さすがに…… 歌わないよね? 」
「この状況で歌わずにいられない! 」
アマナの発言はトリガーとなり麻衣は歌い出す。歌いながら街の人達にアイコンタクトし、周りの人達も乗り良く手拍子をしたり、周りを虜にする歌声だ。さすがに、フラッシュモブ的な人達はいないが、ミュージカル映画のように麻衣は街をステージに熱唱する。周りの人達から拍手喝采される。
「満足した? 」
「やっぱり、歌サイコー! 」
「お昼食べて先を急ぐよ! 」
麻衣とアマナは、昼食をテイクアウトして馬車で食べながら移動する。街をぬけて街道に入りオーシャンガーディアンへ入国する。オーシャンガーディアンの首都を経由して、ロスビナスへ入国する予定だ。街道の途中で街道の分岐のところに臨時の関所があり、兵士達が確認をしている。兵士達がアマナ達にも確認しに来て尋ねる。
「エルフ殿この国には何用で? 行商ではなさそうだが? 」
「彼女が日本人で保護したので、ロスビナスシティへ向かうんです」
「そうか、転移者か……… それは急ぎのようだな…ちょっと待っていてくれ」
日本人の保護は、守星連盟が定める法律で世界共通である為、兵士が上官に確認して戻ってくる。
「エルフ殿申し訳ないな! 今、この国の情勢が危うく首都へ向かう制限がされている。申し訳ないが港町への街道からロスビナスへ向かってもらえるか? 」
「そうなんですね~ 迂回するんですよね? 」
「そうなるな…… 申し訳ないな1日ほどの迂回になるな」
「そんなに物騒なんですか? 」
「反政府組織がいてな、俺達もこうやって余計な仕事が増えているわけだ。エルフ殿に危害を加える事はないと思うが、道中気をつけてな! 」
「ありがとうございます。行ってきます! 」
印象の良い兵士に、アマナと麻衣は手を振り港町へ向け馬車を走らせる。2日ほどして港町へ到着する寸前で、騎士団がアマナと麻衣の馬車を止める。
「エルフ殿! 転移者を保護されているのはそなたか? 」
「そうです」
「わたしがそうです。霜月麻衣です」
「良かった。港町は少々情勢が悪いのでこちらに来てもらえるか? オーシャンガーディアン陸上騎士団が保護に助力いたそう」
「ありがとうございます」
「元老院議長も、そなた達に会いたがっている」
「偉い人がそう言ってくれているなら、間違いないね」
麻衣とアマナは、オーシャンガーディアン陸上騎士団と共に首都へ向かう事となった。オーシャンガーディアン国内の情勢不安が、ふたりに大きな影響を与えるのであった。
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冬童話2021投稿用に、連載中のSTRAIN HOLEの世界とキャラクターを使用して短編を書いてみました。
本編を読まなくても、完結するように書いておりますが、時期的なものや状況は本編とリンクさせておりますので、合わせてお読みいただければ、より楽しんでいただけるかもしれません。
【短編】姉妹のさがしもの
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