67-冷静に今を振り返る
守星調査隊の準備は順調に進み、第一次調査の出発日まで、4日後に控えている。葵がこの世界に転移して1ヶ月が経過した。各自戦力アップの為に日々鍛錬にも身が入っており、短期間ではあるがその成果は出ており、攻守共に連携と援護がスムーズに行えるようになっている。唯一、まだ出発までの課題があるとすれば、信治の武器が、本人の納得のいく物に、完成していなかった事だった。環からは既に期日を待たずに合格の評価を得たが、本人が更に改良を続けている。稽古を終えて休憩している時に葵が信治のもとに歩みよりこえをかける。
「信治、まだ納得いかないのか?環さんも最初の武器としては、充分過ぎるできっていってるけど…咲や花の武器も本人達は扱いやすいって、言ってるから良いんじゃないか?」
「そうなんだけどね。まだ、何か足りないんだよ、何て言えば良いか、自分でもわからないんだけど、自分の使う武器がこれで良いのか~?みたいな…」
「飛び道具より、勇者的な剣が良いとか?そう言うことか?」
「イヤ、前の自分ならカッコばっかり気にしていたけど、別に剣が良いとか、錬金術がイヤとかじゃないんだ。錬金術師になれたのは、本当にラッキーだと思う。ましてや最高の師匠にも恵まれたし」
「数週間前の信治じゃ、言えなかった言葉だな!前に進めてるだけ、良しとするのもアリだと思うよ!いろいろ作ってみて、試して最後に納得するもの作れればさ!」
「そうだね。葵くん、僕この世界がテンプレ異世界とかフツーとか言ってたけど、そう見えていたのは、僕がそう見てたからなんだね。けっこうこの世界が好きになってきた気がする。」
「充実してる証拠だな!まぁ、前も言ったけど、フツーの異世界なんてないんだよ!この世界に来たことがそもそもあり得ない事なんだから」
「そうだね。後、どことなく、文明水準が僕たちのいた世界よりも低いと勝手に思っていた。けど、そもそも、こちらの世界は、成り立ちが違うから、発展の仕方が違うんだよね。」
「そうだな、文明や社会の成り立ちが、生活魔法を中心に全く違うな、男女格差も人の優劣もあちらの世界より、魔法や亜人耳の人達によって少ない気がする。少なくとも、ロスビナスとラストスタンドは、政治も社会も安定している。この世界を受け入れて、自分が覚悟決めれば、やって行けそうな気がする。」
「葵くん聞いても良い?」
「何を?」
「この世界に来る最後の時に何していた?」
「俺は電車に乗って強い睡魔に教われた。信治は?」
「家にいて、マンションだったんだけど…下の階で火事だったみたいで、避難しようと思ったら、そのまま意識がなくなった。」
「信治って元々どこに住んでた?」
「世田谷」
「世田谷…高層マンション火災…俺、そのニュース観たな、確か負傷者はでてないけど、ひとり行方不明者が…それが信治の事か?前に、デイト様があちらでどうなっているかは、わからないと言っていたからな」
「僕たちは、行方不明の扱いになっているけど、もし戻った時に生死が決まるってこと?」
「状況から考えると、その後で生きて発見されるのはないんじゃないか?戻るとすれば、その時からやり直すとか?女神ならその辺りもわかるのかもしれない…」
「いきなり、元の世界に戻されることはなさそうだね。菅原さんや山田さんにも聞いてもいいかもね。こちらに来た理由もわかるかもしれない。」
その後、訓練を終えて、菅原の店に行き菅原にも転移した頃の状況を聞いた。菅原はバイクに乗っていてカーブにさしかかるところで、意識がなくなったらしい、夕方施設へ戻り、食事の準備をしていると萌えが帰宅する。
「ただいま~、もうほとんど食事の準備終わってるね」
「今後、萌は寂しくなるだろうからな!たまには俺の味が恋しくなるぞ!」
「わたしだって、最近はかなり腕をあげたんだからね!ねぇ!柊さん?」
「そうですね。元々まったく作れない訳では萌さんもなかったですからね。自信を持てるようになってから、手際も良くなりましたよ!」
「逆に、わたしの味が恋しくなるように、出発まで作ってあげるよ!」
「それは、助かる。それじゃ明日から頼むは!」
「なんか、はめられた気がする…」
食事をしつつ葵が萌に質問する。
「萌さぁ、転移した時の事聞いても平気?」
「別にかまわないけど」
「この世界に来る直前何していた?」
「学校に行こうとしていて自転車に乗っていたら、交差点についた瞬間に、意識がなくなって目が覚めたらこの世界の道に倒れてた」
「やっぱり、事故とか命の危険にさらされた時にそうなるのかな?」
「葵くんも信治もそうなの?」
「うん、菅原さんもだ。信治のはマンション火災で行方不明なのは俺がニュースで見た。萌はどこに住んでいた?」
「宇都宮」
「交通事故じゃ、ニュースにならない可能性もあるね…もしも、新しい転移者が現れたらこれも聞いた方がいいね。」
「直哉さんにもあったら聞いてみる。5人しかいないから、なんとも言えないけどな」
「これからもわたし達みたいな人がいるのかな?」
「転移する理由がわからないからな?何人来るのか?どのくらいの頻度かもバラバラだしな、唯一、俺達3人が半年で、俺と信治は1ヶ月だからな頻度は高いのかもな…」
「新しく転移者来たら助けてあげないとね」
「こっちの世界の人達にばかり甘えていてもね」
「信治がそれを言うか?」
「まぁ、できるだけの事をしよう。俺達旅にでるけど、その間に何かあれば、萌よろしくな!」
「菅原さんもいるし、たまに柴崎さんとも商業組合で最近は話すから、大丈夫だと思う。」
「わたしの後任の担当官にも伝えておきますね。」
この異世界の転移の理由はわからない、運悪く命を落とす日本人もいる。あちらの世界では赤の他人だったが、もし、これからも、日本人が転移するのであれば、ひとりでも、助けられれば良いと3人は思うのであった。
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冬童話2021投稿用に、連載中のSTRAIN HOLEの世界とキャラクターを使用して短編を書いてみました。
本編を読まなくても、完結するように書いておりますが、時期的なものや状況は本編とリンクさせておりますので、合わせてお読みいただければ、より楽しんでいただけるかもしれません。
【短編】姉妹のさがしもの
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