66-演出効果
守星調査隊室は大社の一室にある。外には演習場ほどではないが、こじんまりした庭があり、軽い稽古ならできる広さだ。白檀が葵に尋ねる。
「いったい、何するつもりなんだ?」
「まぁ、効果が出るかわかりませんが、信治の錬金術のレベルアップと開発の幅を持たせる為ですかね?」
「かね?ってあまり自信があるわけでもないのか?」
「少なくとも、俺の常識では、効果はでないですけど…この世界の錬金術は、常識の範疇外なのでもしかしたらみたいな感じです。まあ、見ててください。」
葵はそう言って信治の方に行き、信治に尋ねる。
「信治さぁ、柊さんを抜きにして、誰がかわいいと思う?」
「い、いきなり何?」
「いや、柊さんとはキスしたりとかで、ぞっこんなんだろうけど…デイト様と花が一番好みで、次に咲、環さんかな?マニーとクーと柊さんは、どちらかというと緊張するタイプだろう?」
「葵くんの言うとおりです…」
葵はニヤリと笑う
「武装した時のロリっこパワードスーツに大剣持つ姿どうだった?」
「萌えです」
「やっぱり、信治はそっちか~、お前の錬金術でデイト様の萌えアップしたいとは思わないかね?信治くん」
「そ、それは、魅力的な提案だね。でも…」
「デイト様は神様だ恋愛対象ではない、萌え=信仰の高さだよ。デイト様で成功すれば、猫耳兎耳姉妹もプロデュースできますよ!信治くん」
「プ、プロデュース!」
「異世界の女性を美しくプロデュースできるのは、妄想族の信治くんだけですよ」
「葵くん、やってみるよ!」
葵の作戦は、この世界の錬金術はイメージ力と言うと響きが良いが要は妄想のリアルさだと葵は思う、なので、アニメやゲームをこよなく愛する信治は、いろいろな世界観をイメージとして持っている。それを形にすればいいだけなのだ。ただし、デイトを実験台にしたのは、信治が最もモチベーションが高くなると判断したためだ。ふたりに、デイトが声をかける。
「テストはまだでしょうか?」
「デイト様お待たせしました!さっそく、パワードスーツ出してもらって良いですか?」
デイトは地面から、漆黒のゴーレムを出現させる。
「後は、信治が錬金術を行います。信治基本的な操作とか、デイト様が面倒になることは、テストだからしないように」
「任せて!」
信治はゴーレムパワードスーツに手をあて、自分の妄想を錬金術で送り込む。信治はニヤニヤと自分好みのロリっこ戦士に必要不可欠な演出を送り込んでいるのだろう。ゴーレムの演出が済んだようで、信治はデイトに尋ねる。
「デイト様、武装する時その巫女服だと着づらくないですか?」
「特に気にしたことはありませんが、こちらの服はあざみさんからいただいた。神官服なので大切にしたいので着替えた方が良いですね。」
「何か他に服お持ちですか?」
「何種類かはあります。一番武装時に装備に適しているのはこちらでしょうか?」
デイトが地面に手をかざすとボディスーツのような服が出てくる。
「これ、いいですね。人前で着替えるのはいろいろとまずいので…これでよしっと!デイト様これで仕上がりました。一度パワードスーツ着てみましょうか?ちなみにゴーレムを出現させる時は『ディメンション チェンジ!』と言って見てください」
「わかりました。特に変わった様子もありませんが…」
一度ゴーレムを戻して、出現させるところからやってみる。デイトが信治に言われた通りにしてみる。
「ディメンション チェンジ!」
デイトの抑揚のない言葉響く、すると、幾何学的紋様が地面に浮かび、漆黒のゴーレムが出現する。ゴーレムから機械音的な声で「トランスフォーム」と言い、ゴーレムの体のが光が溢れ分解する。デイトはチラッとボディラインが見えるが、光に包まれて巫女服からボディスーツに着替える。まるで、日曜朝の幼女向けの美少女の変身シーンのような演出だ。そしてデイトの体に足からパーツが装着される。合体ロボ的な効果音と各パーツが磁力のような視覚演出がされている。そこから順に腕、肩、胸、最後にベッドギアを装着し剣を構えて、ディメンションチェンジが完了する。信治が歓喜の声を漏らす。
「これはすごい!萌えだ最高の萌えだ!できればBGMもつけたい…」
それを見た梔子とマノーリアが声を漏らす。
「ちょっと、信治が怖いんだけど…」
「確かに、今の信治くんの目が怖い、葵くん本当にこれで成功しているの?」
「俺もわからない」
梔子とマノーリアが半眼の眼差しで葵を見る。梔子が口を開く。
「葵、デイト様で遊んでないよね?」
梔子の指摘は半分は合っているが半分は心外だ。葵は全くデイトの変身姿を見ても萌えないのだ。
「これは、真面目な実験だよ。正解はデイト様しだいかな?デイト様どうですか?」
デイトが自分の手足を確認しながら声を漏らす。
「確かに同じ物なのに、パワーアップしている気がします。」
「マジか」
デイトの反応に主犯の葵も驚いている。神様もその気にさせる、信治の錬金術恐るべしと葵は思う。翌日、調子に乗った信治は、咲には弓形の武器、花には、ロボットアニメのロボットが装備しビームを出しそうな、花の身長位あるロングレンジライフルを作成した。武器の説明を信治がする。
「咲ちゃんのは、実際の弓でも魔法の矢でも撃てるように作った。花ちゃんのは魔力を圧縮して弾丸にするライフル、両方共に魔力を圧縮して使うから、魔力消費はかなり抑えてあるよ!それと…」
信治は完全に自分の趣味に走った武具も作ってきたが、咲と花がそれを見て絶句している。咲が信治に丁重に断る。
「信治さん、せっかく作ってくれたのですが…武器だけで大丈夫です…ハハハ」
葵が信治に尋ねる。
「いろいろ作ってみたから、自分の武器も良いアイデアが出るんじゃないの?良い気分転換になったろ?」
「うん、もう少し自分の武器考えてみるよ!」
煮詰まりかけていた、信治は改めて自分の武器製作に取りかかることとなった。
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冬童話2021投稿用に、連載中のSTRAIN HOLEの世界とキャラクターを使用して短編を書いてみました。
本編を読まなくても、完結するように書いておりますが、時期的なものや状況は本編とリンクさせておりますので、合わせてお読みいただければ、より楽しんでいただけるかもしれません。
【短編】姉妹のさがしもの
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