65-ネーミングセンス
高位魔族の出現により、守星調査隊は予定を大きく変更する。各眷属神との覚醒と加護の適正者の発見が、主な任務だったが、調査隊全員の戦力アップも課題となり、最短距離でなく、魔族やモンスターの出現率の高いエリアを移動し戦闘経験を積んでいく事となった。デイトが口を開く。
「高位魔族が出現する事は、今後も多いわけではありません。しかし、いつ現れても良いように準備をしていく必要があります」
信治がデイトに尋ねる。
「デイト様、何故、高位魔族の出現数が断言できるんですか?」
「高位魔族の出現が多いと言うことは、中低位の魔族は、もっと大地に蔓延っていることになります」
マノーリアが尋ねる。
「今の戦力で、高位魔族が現れた場合のフォーメーションはどうしますか? 」
デイトが答える。
「前衛に白檀さんとわたしが出ます。陽動に右に梔子さん、左にマノーリアさん、遊撃に葵さん、左右に咲さんと花さん、後衛は柊さん、信治さん、環さんとなります。咲さんと花さんはこの場合弓での攻撃をお願いします」
葵がふと思い至る。
「咲と花はアーチャーの弓技あったよね?命中だっけ?それって、クロスボウとか別の武器でも使えるの?」
咲が答える。
「はい、使えますよ。クロスボウでもバリスタも大丈夫でした。花は命中の上の必中まで修得してますよ!でも、さすがにバリスタを持ち歩くわけには…」
葵が環に尋ねる。
「環さん、この前、信治が作った武器みたいなの錬金術で作れませんか?」
環が指を顎にあて、小首を傾げながら少し考えて葵に答える。
「わたしには信治さんが作った武器は難しいと思います。おそらく信治さんは元々の存在する武器をイメージして作られていますよね?その元の武器がこちらの世界にありませんので、わたしにはイメージがわかないのです。」
「なるほど、じゃあ、信治さぁ!咲と花用にふたりの魔力を使って撃てる。スナイパーライフル的なやつ作れる?」
信治が親指を立てながら葵に答える。
「作れると思うよ!弓よりも攻撃力の高いの作れば良いんでしょ?しかもロングレンジ的なヤツかな?」
「咲は場合によっては、前衛に入るかもだから、あまり大きいと厳しいと思うぞ」
「じゃあ、咲ちゃんにはミドルレンジで扱い易い感じね!作ってみるよ!」
信治はかなり自信を持ったようで、会話にも覇気が出てきている。葵が信治に尋ねる。
「信治の武器は順調なのか?」
「まだまだ、納得言ってない、けど戦える武器にはなってると思う…」
「まだ、時間あるからな、納得するまでやれば良いんじゃない?」
咲と花が申し訳なさそうに葵と信治に尋ねる。
「魔力使う武器だと、もしもの時にあれが使えないかと…あれ、魔力フルで使わないといけないので…」
あれというのは、父親の形見のダガーを重ねると顕現するモンスターの事だ。その力は絶大で高位魔族とも対等に戦えるほどだ。咲と花の力が増せば更に強くなるという。欠かせない戦力だ。それを聞いていた環がふたりに答える。
「咲さん、花さん、それは心配しないで、あれを使用する場合は、わたしが魔力を全快回復をした上で、指示を出すわ、半端な時に使用するとあなた達を危険にさらすだけだから」
魔力を使いきると、肉体的疲労が蓄積し動きが鈍くなる。その為、使用後の身の安全を確保しない限り、使用は控えなければならない。梔子が咲と花に尋ねる。
「ねえねえ、咲と花さぁ、どうでも良いのかも知れないんだけど…ふたりのとっておきの奥の手なのに、『あれ』は味気なくない?なんか技の名前つけたら?」
咲と花が腕を組右上を見ながら思考する。
「変身?」
「変化?」
「化かす?」
「巨大化!」
「どれもしっくりこないですね~。そうだ!葵さんと信治さんの世界の言葉でないですかね?」
咲と花はあちらの世界に興味があるようで、ワクワクを全面に出して葵と信治に尋ねる。
「そうだな~トランスフォーム?」
「葵くん、それはロボットぽっくない?」
「そうだよな~ うーん変身的なやつね~」
「ヴァリアブルは?」
「それも、ロボットというか戦闘機というか?」
「戦闘機?なんで?」
「葵くん知らないのか…」
信治が若干上から目線で葵に説明する。何故そこで微妙に勝ち誇るのか?と葵は思うが聞き流す。
「あーそうなんだ。あのvはヴァリアブルなのね。そのアニメは父親と妹が見てて、俺も見てはまった。戦闘機がカッコいいし、歌もいい」
葵と信治の話が脱線し、戦闘機がロボットになり、歌姫が活躍するアニメの話しをしていると、マノーリアがコホンと咳払いをして話を修正する。葵はマノーリアと梔子が歌姫だったら、需要あるかもと心中で思う。
「どうでもいいこと考えない!」
マノーリアによまれていた。咲と花がふたりで何か話して結論が出たようだ。
「あの技の名前決めました!さっき葵さんが言った『ヴァリアブル』にします!」
「良いの?」
「はい!」
「なんで?」
「なんとなくカッコいいからです!」
信治が咲と花に尋ねる。
「名前は良いんだけど…その技を出すのに、その長い文書を読むの大変だよね?大切な言葉なんだろうけど…」
信治はそう言って、ストラップのような物を錬金術で2つ作る。ふたりにダガーにつけさせる。
「これで、ふたりが文書を読まなくても『ヴァリアブル』って言えば技が使えるよ」
「信治さんありがとうございます」
「い、いや、ほら街道で迷惑かけたし、ちゃんと守ってくれたお礼したいなって…」
信治は少し照れながら、咲と花にお礼をする。その姿は明らかに、猫耳兎耳美少女姉妹に照れている。柊との濃厚接触で、柊にぞっこんの信治だがおそらく、こっちのロリっこが、本来の好みなのだろうと葵は感づく、となると最年長でありながら、最年少の最強ロリのデイトもなのだろうが、さすがに神様には手を出せないだろうと思い至るが、葵のいたずら心に火が着く。デイトと目があう。
「葵さん。今、失礼な事考えていませんでしたか?」
「そんな事ありません。デイト様の力もイメージ力で強くならないかなぁ?って考えていたところです。ちょっと外でやってみません?」
「わたしの力を更に引き出せるのですか?」
「どうでしょう?試すだけでも良いんじゃないですか?」
「では、テストしてみましょう」
「信治、外に行くぞ!」
葵はデイトに何をするつもりなのか、外に向かう事になった。
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冬童話2021投稿用に、連載中のSTRAIN HOLEの世界とキャラクターを使用して短編を書いてみました。
本編を読まなくても、完結するように書いておりますが、時期的なものや状況は本編とリンクさせておりますので、合わせてお読みいただければ、より楽しんでいただけるかもしれません。
【短編】姉妹のさがしもの
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