64-Reスケジュール
この世界に来て一日中ベッドで過ごすのは、眠っていた昨日と今日だけになる。1ヶ月に満たないが、毎日旅、稽古、訓練、そして戦闘と、あちらの世界ではあり得ない生活をしてきたせいか、ベッドの上ですごす今日は、1日が長く感じる。見舞いに訪れた皆は既に帰り、部屋には、葵と付き添いをしているマノーリアだけとなった。付き添いと言っても、葵はほぼ完治しており、マノーリアは話し相手になる程度だが、自分をかばいケガをした葵に対して償いの気持ちもあるのだろう。高位魔族によるダメージはヒールで完治せず、神官による治療が必要になる。高位魔族によるダメージには呪いに似た影響もある事が、ヒールでは完治しない理由だ。今回の葵のケガは、通常の神官であれば全治1ヶ月の重症だったが、デイトと環から二度の癒しを受けることによって、2日間で完治するという、正真正銘の神業によるものだ。治療院と神殿の位置づけとしては、葵達の世界の病院で言えば、治療院が外科医で神殿が内科医で特に心療内科や精神科のような位置付けだろうか、ただしこちらの心の病のほとんどが、魔法や呪いによる物がほとんどであり、余談だが、信治も転移したばかりは、環が呪いや魔法による精神異常を疑ったらしい、信治の場合はこの世界にはない中二病という不治の病なのだが、女神の代行者でも原因が判明できなかった。
「葵くん、はい」
マノーリアがリンゴによく似たフルーツを用意してくれた。チェリーアップルというフルーツらしく、色はピンクに近い赤で、さくらんぼのように2つで1つの茎についている。そのままの名前だなと葵は思う。せっかく入院中なのでマノーリアに甘えてみる。葵は言葉を発せずにあーんと口をあける。マノーリアは若干照れたがキスほど抵抗がないらしく、素直にあーんをしてくれる。
「甘酸っぱくて美味しい!マニーあーん♪」
葵がお返しにと、マノーリアにあーんをする。マノーリアはされる方が、恥ずかしいようで照れている。
「2人しかいないから平気でしょ?あーん♪」
マノーリアは照れながら、チェリーアップルを小さくひとかじりする。葵の変態心を刺激したのか、妙な気分になる。次回は是非、バナナ的なフルーツをマノーリアにあーんしようと心の中で企てる。マノーリアが葵の心中を察したのか、半眼で葵に抗議する。
「今、エッチな事考えていたでしょ!」
「マニーがかわいいなって思っただけだよ」
葵はマノーリアとイチャイチャして過ごし、1日が過ぎていく。ほぼ毎日が命がけの生活だったので、なんとなく罪悪感も感じたが、生死をかけているからこそ、この小さな一時が幸福に感じることも実感した。
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翌朝、マノーリアが迎えに来て、葵は治療院からそのまま、調査隊室に向かう。葵が行くと全員が既に揃っていた。葵は皆に向かって挨拶する。
「みなさん!ご心配おかけしました。本日より復帰します!」
信治も座っていたので葵は信治のところに行って、改めて感謝する。
「信治!本当にありがとう!お前が来てくれなかったら、俺もマニーも死んでいたかもしれない!お前の勇気と正義に感謝する。これからもよろしくな!」
葵は深々と信治にお辞儀をする。
「葵くんらしくないことすんなよ!俺も葵くん達に助けられたし、お互い様だからそんなお礼とかい、いいよ!」
信治は断りつつも、照れているしどことなく嬉しそうだ。感謝されていることもそうだが、信治は葵に認められた事が大きいようだ。全員が揃い環が口を開く。
「今回の事件で高位魔族も目覚めた事が明らかとなりました。今回の魔族はサーベラスという悪魔だそうです。デイト様お願いいたします。」
デイトが続けて話す。
「サーベラスは悪魔の種子により復活したようです。悪魔の種子には何種頼かあります。今回のように人を苗床にする寄生、人の身体をそのまま利用する憑依、人を操る洗脳、人の欲望や野心を支配する契約があります。洗脳と契約は悪魔の種子だけでなく、中低位の魔族が人を利用する時にも使用します。街道の街やビナスゲートの一件も契約によって、人の欲を利用しています。」
デイトが話し終えて環が話しを続ける。
「高位の魔族と今後遭遇する事も視野にいれて行動する必要があります。わたし達の現在の力量で高位の魔族と対等に戦えるのは、デイト様、白檀さんとわたしです。唯一、咲さんと花さんのあのモンスターが効果があるかもしれませんが、あちらは最終手段としての使用でないとリスクが高いです。ですので、みなさんの技量のレベルアップもさらに必要になります。」
事実ではあるが、葵、マノーリア、梔子にとっては悲痛な評価だ。加護や助力、更に紫炎や魔力循環を得ても尚、邪心どころか高位の魔族を倒す事ができないのである。デイト、白檀、環の力は神の領域なので仕方ない。
「調査隊のルートを少々迂回することにしました。時間はかかりますが、魔族、モンスターと戦いの経験を積みましょう」
環の案はあえて結界がはられている街道を使用せずに、魔族やモンスターの出現率の高い道を選び、戦い経験を積む事だった。サーベラス出現により調査隊の予定が大きく変更された。
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冬童話2021投稿用に、連載中のSTRAIN HOLEの世界とキャラクターを使用して短編を書いてみました。
本編を読まなくても、完結するように書いておりますが、時期的なものや状況は本編とリンクさせておりますので、合わせてお読みいただければ、より楽しんでいただけるかもしれません。
【短編】姉妹のさがしもの
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