586-葵の願望
守星調査隊は星形要塞へと帰還し、各々が一時的に休息をとった。食事の時間となり、部屋に集まることとなった。
「里菜お手伝い? えーと偉い人たちも一緒なんだ…… 」
「あ、葵さん。はい、わたしはこれくらいしかできませんから…… 今後の大陸全体に影響する話にもなるとのことで、環さんが声をかけたみたいですよ。戦勝祝いもかねてます。葵さんたちはこちらへ」
葵たちが部屋に入ると、会場の準備を手伝っていた里菜に案内される。立食の形でテーブルが用意され、前線に派遣された各国の要人や守星連盟幹部の姿が見える。葵がその大人たちと知己な関係ではないにしろ、服装や雰囲気でわかるほどに、前線に場違いな人たちである。部屋の中央で環が壇上に上がり声をあげる。
「まずは、多くの犠牲に対し祈りを捧げましょう。そしてその多くの犠牲により、魔族との戦いに勝利したことをここに宣言いたします」
環の言葉に皆が祈りを捧げ、勝利宣言には勝鬨をあげ、それがやむと環はさらに話を続ける。
「しかし、この戦いによって最高神女神アマテウス様も命を落とされました。しかし、眷属神の皆様はご存命であり、今後の拠り所として人類を導いてくださるでしょう。しかし、眷属神様たちより重大お話がおありとのことで、皆様にもお集まりいただいた次第です。デイト様皆様にご説明いただけますか? 」
環がデイトに視線を向けると、デイトはコクりと頷き環のもとへと歩みより、環から引き継ぎ話し始める。
「我々女神アマテウスの眷属の総意として民の皆さんにご理解いただきたいお話です。そもそも我々が皆さんから神と信仰される存在でありながら、魔族との戦いにこれだけの時と命を費やしてしまいました。確かに創造主という意味であれば、確かに女神アマテウスと我ら眷属は、皆さんにとっての創造神であるのかもしれませんが、我々も皆さんとは別次元で生まれた存在であり、この緑星のある銀河と青星のある銀河ふたつの銀河を守護する務めています。しかし、女神アマテウスがいない今、この星を守ることはできても、他の星に住まう民たちを護れない由々しき事態です。ですが、女神は最後の力を皇女環さんとマルチパープルの如月マノーリアさんに授けて行きました。そして伝説が真実のモノとして具現化したのです」
この会場にいる人々からどよめきが起きる。大陸どころか、この星の話を飛び越え銀河の話をデイトしているのだ。守星調査隊の面々であれば免疫もあるが、各国の要人は慣れていない分理解に苦しんでいる。
「で、伝説とは…… いったいなんなんでしょうか? 」
会場にいた女性がデイトに尋ねた。デイトは声の方を見て頷き話を続ける。
「はい、我々の伝説では、神なき星に現れし超越の存在が銀河を救うとあり、その名をメサイアと呼ぶと言い伝えられています。我々の遥か高みに住まう存在のようです」
会場にいた要人のほとんどがポカンと口を開けている。目の前にいる眷属神たちですら自分たちの信仰する有人神であり存在することが奇跡に近いのに、その眷属神たちが仰ぎ見る存在にまったく想像がついていかない状況だったが、会場にいた要人の男性がデイトに質問する。
「では、そのメサイア様に皇女殿下か、もしくは如月皇国騎士団騎士長が女神の力を授かりなられたと? 」
デイトは横に首を振り否定し口を開いた。
「確かにお二人は女神の力で、民の持つ能力を遥かに上回り、我々同等の力を有したのは間違いありません」
眷属神同等の力を環とマノーリアは授かっているとのデイトの言葉に、会場が驚愕する。今まで加護や助力でも奇跡的な話にも関わらず。すでにその行きを超えて眷属神同等なことでも、ここにいる要人たちにとってみれば、それだけで大騒ぎになる話なのにそれ以上の者がいるという話に、誰もが思考が追いつかない。そのうち会場で卒倒して倒れる人間が出てくるのではないかと心配になるくらいだ。環が会場の雰囲気が騒がしくなったので、デイトから引き継ぎコホンと咳払いをしてから口を開いた。
「救世主となられたのは、皇国騎士団特務騎士の神無月葵さんです」
環は会場が自分やマノーリアに視線が向いていたのをこの一言で葵に向けた。葵は環を見て視線で抗議するが、環は会場の要人に見えないように、舌を出して微笑んでいる。
「やられた…… 」
葵は会場の視線を一気に浴びせられげんなりとする。そこに容赦なく、眷属神たちが、葵の前で膝をつきデイトが口を開く。
「葵さん。いえ、メサイア様。我々眷属はそもそも星を護守護として産み落とされた存在の為、アマテウス様やウルイド様のように、星星を移動する手段を持ち合わせておりません。今、ふたつ銀河を守護できるのはあなた様以外には存在しないのです」
「デ、デイト様お願いだからフツーに葵と呼んでください! そう言われてもオレにも実感がないのでよくわかんないですよ! 邪神倒せば平和になるんじゃなかったんですか? 」
「アマテウス様やウルイド様がいればそうだったかもしれませんが…… 」
「マジかー 」
葵は天を仰ぎ変な声を漏らしている。
「葵さんお力をお借りできませんか? 」
「イヤ、別にそれはいいんですけど…… 」
「何か? 」
デイトが葵の返答を促すが、葵はいい淀みながら視線が自然とマノーリアに向くと、マノーリアは優しい笑みを返してくれる。これはマノーリアも一緒に手伝ってくれるつもりなのだろうが、葵がデイトに即答しない理由は別にあった。葵が口を開いた。
「ここで言わないとダメですかね? フツーにハズいけど…… 」
「何なりと障害があるならば我々が尽力いたしますゆえ」
「そうじゃなくて、魔族との戦いが終わったらマニーと結婚するつもりだったから、銀河を守護するとかやるとマニー待たせたりしません? 」
デイトが目に天になる。自身も予想していなかった言葉にマノーリアが一気に赤面している。葵は開き直ったのか口を開いた。
「マニーのお母さんにも魔族との戦いの後的に行ってあったし、オレ、フツーの生活がしたいし、ちゃんとマニーにプロポーズしてこっち式の結婚式とかもやってあげたいし、フツーの幸せな新婚生活したいかなって…… 」
「フツーの…… 葵さんはすでに時の概念から逸脱した存在となり、過去も未来も移動が可能な存在なので問題ないと思いますが…… 」
「そこがまだ実感ないし…… ちゃんと人間としての人生謳歌してからでもいいですか? 過去に行けるなら」
「一概には言えません。時を操る者が敵として現れない断言できませんし」
葵が少し思考したのちに返答する。
「今はいないです。だから時間下さい」
「マノーリアさんも我々と同様の時間軸の存在になっているので、問題ないと思いますが…… 」
「そうみたいですけどみんながそうな訳じゃないから、フツーの生活してからで」
葵も折れようとしないが、そこに葵の願望を打ち砕く声がかかった。
「葵くんホントにいいの? そのパターン良くないよ~ 絶対よくない」
したり顔の信治がそこにいた。
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