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【祝! 完結】STRAIN HOLE ~よくあるフツーの異世界でフツーに騎士になりました。だってフツーでもそこそこ楽しめますよね? ~  作者: 橘 弥鷺


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579-やっと帰ってきたうちの主人公が僕のチート能力をやっと認めて出し惜しみしなくて良いって言ったので大好きなキャラクターたくさん召喚してみました。

「マジで吐きそう…… 」


 葵は胃のあたりを押さえながら、自分が信治に先程言った発言を後悔していた。信治の後方から飛び出していった本が光の帯へと形を変え霧散すると、次の瞬間何もなかった空間から、次々と信治が召喚したキャラクターたちが顕現する。信治の作った本型の武器であるヒーローズエンサイクロペディアに記載されたキャラクターたちなので、信治の好むアニメのキャラクターたちだろう。


「この期に及んで増援だと? くだらん…… 相手してやる」


 邪神はめんどうなように口を開くが自身のカラダに黒い霧を身に纏い改めて巨大化する。


「葵お兄ちゃん大丈夫? 胃薬もらってきたけど…… 」


 葵は後ろから声をかけられ、そちらを向くとナズナが小瓶を抱えて走りより、話を続ける。


「信治さんの召喚術が聞こえたから、ロゼッタさんの隊の薬師さんからもらって来たんだけど…… 飲む?」


 以前に信治がヒーローズライブラリーを行う度に、ナズナ胃薬と言っていたからか、真面目なナズナは急いで持ってきてくれたようだ。


「ありがとうナズナ一応飲んどくよ」

「一応ってお薬は本当に辛い時以外は飲むのはカラダに良くないよ! マニーさんからも葵お兄ちゃんに言ってください」


 ナズナが薬師として葵が薬を安易に飲もうとするのを止めたが、声をかけられたマノーリアが、クスクスと笑いながら返答する。


「葵くんはさっき"吐きそう"ってぼやいていたから胃の調子は良くないみたいよ」

「ナズナ、葵は自分で信治をけしかけたからそこまで気にすることないって」


 瑞希がナズナの肩を叩いて諭し、話題を変えるように口を開いた。


「ところで、麻衣が見たことない顔を見せているのは何? 」


 麻衣はフライトバイクの上で立って攻撃準備をしているが、その顔は笑みを我慢しているが、我慢できないみたいな顔で終始ニマニマと顔を歪めている。


「おおよそあの信治が召喚したキャラに麻衣の推しもいるんだろ? 知らんけど…… 」

「そう言うこと…… 麻衣あんなんで戦えるのかな」


 あっちの勇者やこっちの魔王が剣や魔法で突撃し、上空には、ロボットアニメのメカたちがビーム兵器で魔族たちへ攻撃をしかける。信治のチートは、世界観の違うヒーローたちだが、異世界の理が、この世界で通用することだ。剣でも魔法でも何でもありな上によくよく邪神付近を観れば、他のキャラクターより一際派手な少女たちが攻撃をしているのが、葵の視界に入り、葵は思わず声が漏れる。


「知っていたが、信治って大きなお友だちだったか」


 幼女向けの少女戦士たちも信治の推しのようで顕現させたようだ。葵の隣でその光景を見ていた瑞希が声を漏らす。


「懐かしい~! あの子達観てたやつだよね~ 良くアヤとユリとごっこ遊びしたよねぇ誰がピンクするかケンカしたよなぁ」


 自分たち世代のキャラクターのようだが、葵は覚えていない。ごっこ遊びの時、必ず父親と葵は敵役にされるからめんどくさい思いでしかない。それよりも、この状況をなにも感じない瑞希に、葵は羨ましささえ感じる。そこへ白檀が声をかける。


「葵でどうするんだ? 」

「一気に邪神へ攻撃をしかかけるタイミングを決めたいですね。信治のおかげでこれだけ時間に余裕できてますからね」


瑞希が戦うヒーローたちを見て独り言のように口を開く。


「このキャラたちが倒してくれないのかな? 」


葵はその言葉を拾って皆に話すように返答する。


「それができれば楽なんだけど、それで勝利する未来はなかった。必ずオレたちが邪神にとどめを刺す必要があるから、それまでに一気に邪神の力を削る必要がある感じです。だからオレたちだけだと足りないんで信治の力を使ったってとこです。後は…… 」


 葵が語尾が濁り言いにくそうに苦笑する。


「どうした? 」

「信治にけしかけたからどこまで信治がやるかですね。信治の顔を見てくださいよ」


 葵の言葉のまま皆が信治を見ると信治の目がギラギラと戦うヒーローたちに目を輝かせている。


「炭酸混ぜたポーションもうあんなに飲んでる…… 」


 ナズナが信治に頼まれたエナジードリンク風味のポーションの瓶が信治の周りに転がっている。


「おそらくまだ気が済んでないですよ信治は…… 」


 葵は苦笑しながら肩をすくめる。信治はさらにエナジードリンクの瓶をあおり、飲み干すと麻衣へと声をかける。


「麻衣さん本番はこれからって言ったよね! 僕からのプレゼントだよ! こんなサービスってやつ! 麻衣さん歌聴かせてあげなよ! 僕たちの歌姫の歌! これで最後だ! 」

「信治!? 」


 麻衣が信治の言葉に空を見上げると空が歪み、巨大な2隻の宇宙戦艦が現れると、どこからともなく歌が聴こえる。


「ウソ…… 」


 麻衣がいろいろな感情を滲ませた声を漏らし、改めて信治を見ると信治は親指を突き立てている。麻衣は信治に頷き空を見て口を開いた。


「ありがとう信治! いくわよ! あたしの歌を聴きなさい! 」


 麻衣がフライトバイクを浮上させながら、自身の歌を歌いはじめる。その歌は、麻衣が歌手時代に歌いたくても歌わせてもらえなかった自身の思いを詰め込んだ曲、A WORLD BEYOND HERだった。そして、その曲の名を授けられた飛行艇を麻衣に近づけながら、艦長の萌が麻衣に声をかける。


「麻衣さん! 今、前出るからWBHのステージ使って! 」

「ありがとう萌! あたしの思いを全部ぶつけてくる! 」

「頑張って! 麻衣さんの本気の思いを聴かせて! 」

「うん! 」


 WBHに麻衣がフライトバイクを着艦させ、ステージに向かおうと走り出すと、上空から2隻の宇宙戦艦がWBHと並走する。WBH全長は200メートル前後だが、1隻は2倍の大きさでもう1隻は4倍とそのサイズ感は桁違いで、WBHの姿は地上からでは見えなくなる。

お読みいただきありがとうございます。

次話も引き続きお楽しみいただければ幸いです。

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