572-邪神の黒い霧
邪神の攻撃によって東門周辺での乱戦となった。門には放り投げられた魔艇から魔族が現れ門の突破を狙うが、星形要塞の形状が魔族のいく手を阻む。
「弓兵部隊各個に撃て! 」
「魔導師隊焼き払え! 」
「魔族を中に入れるなよ! 死守だ! 死んでも食い止めろ! 」
門から外に伸びる左右の城壁上から、魔族に対して一斉迎撃が浴びせられる。遠距離攻撃のできる部隊がかき集められ、門を突破を食い止めるために士官の怒号が飛び交う。
一方、湖のように広大な堀の対岸では、空中神殿が墜落した周辺でも、カーラスと眷属たちを中心とした部隊が魔族との乱戦を繰り広げられている。
「後方かカーラス様たちに手分けして加勢をしますか? 」
環が白檀へと声をかける。白檀も一瞬思考するように目を伏せる。門を突破されれば星形要塞は、要塞内での戦場となり、被害もさらに広がるのは当然だが、それ以上に後のない今、要塞内に魔族を侵入させるわけにいかない。しかし、カーラスたちを加勢しなければ、カーラスたちは進攻してくる魔族たちに囲まれ、分断される。カーラスの眷属たちの中には対地戦闘を苦手とする対空に適したモノもいる為、数の割には戦力はそこまで多くない。とは言え、飛べるカーラスたちは、撤退が可能であるのだが、今から進攻してくる魔族たちには邪神がおり、すんなりと後退させてくれる相手ではない。その時、瑞希が口を開いた。
「団長…… わたしたちに選択肢はないですよ…… 邪神の攻撃がもう届くところまできてるから…… 一部は門に加勢してわたしたちは前に出るしかない…… かな」
瑞希の表情は固く、無理に笑顔をつくっているのがわかるほどには余裕はないようだ。アマテウスが同意するように口を開く。
「神無月瑞希の言葉に同感だ。わたしが前にでなければ、この砦に被害が出る。わたしは堀の前に出る」
アマテウスはそのまま歩き始める。デイトとエーテルがそれに続くとアマテウスがデイトに声をかける。
「デイト防壁を可能な限り作ってくれ、少しでも魔族の進攻を遅らせるのです」
「御意! しかし、アマテウス様お一人で行かせるつもりもありません」
「デイト…… 」
「わたしもです。デイトちゃんと一緒に」
「エーテル…… 」
アマテウスが立ち止まり、デイトとエーテルへと振り向く。そこに守星調査隊の面々も駆け寄り、白檀が口を開く。
「この日のために用意してきたんだ。恐れることはない」
「アマテウス様わたしたちをお守りいただくお気持ちは嬉しいですが、ともに戦わせていただきます」
白檀に続くように環もアマテウスに声をかけると、アマテウスは苦笑し返答する。
「ご覧の通り強敵です。あなたたちの神の言葉としてはお粗末な言葉になりますが、生きて帰れる保証はありませんよ」
その言葉に梔子が口を開いた。
「ここで逃げたら後悔しかないですよ! アマテウス様」
「そうね。何のために力を授かった力よって話じゃない」
麻衣も笑いながらそれに続く。他の面々も頷き改めて皆が心を引き締める。アマテウスが皆に声をかける。
「では、最後の戦いとなる。皆の者参る! 」
皆が走りだし、デイトが後方に周り、いくつもの防壁を顕現させる。これによって魔族は破壊するかよじ登るしか東門への到達は困難だ。
「悪あがきを」
どこからともなく声が聞こえた。次の瞬間前方から霧の大蛇が突貫してくるのが見え、白檀が声を張り上げた。
「全員避けろ! 」
黒い霧の大蛇は、そのまま一直線にデイトの防壁を破壊し戻って来る。それを見た白檀は舌打ちをして気持ち漏らすように声が漏れる。
「ちっ! いったい何なんだあの大蛇は」
「たぶん、邪神のあまりの魔力なんだと思う。でもなんで魔艇から離れないんだろう? 」
白檀の独り言に瑞希が返答する。瑞希の言うとおり、黒い霧の大蛇は、必ず一部分は旗艦の魔艇から這い出ているようになっている。そこから太い大蛇になったり、2匹になったりするのだが、尾は旗艦に入ったままだ。
「次は確実に死んでもらうアマテウス! 」
アマテウスが槍を構えると、いきなり目の前に大剣をもった邪神が現れた。
「させるか! 」
アマテウスと鍔迫り合いとなった、邪神にデイトが大剣を振り上げた。
「ふん」
邪神はアマテウスを受け流しデイトの大剣を弾く。
「まだだ」
次に白檀が斬りかかり、梔子、マノーリア、瑞希が続く。
「だからなんだ? 」
すべての攻撃に邪神は対応して見せた。そして邪神は邪悪な笑みを深めて話を続ける。
「まだまだ諦めぬかなら知るが良い! 我が力を! 」
邪神がそう言うと邪神の身体に大蛇が絡みはじめる。
「なんなんだ」
「余興はまだまだ続くのだ。楽しんでくれよ」
邪神の身体が黒い霧に包まれて姿が見えなくなっていくのであった。
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