569-背中を任せる相手
魔族の群れは死を恐れずに進攻する。前列の魔族を肉壁にし、後列はそれを足場に前へ進む。何体の魔族が倒れようが、その亡骸に何かを思う者はいない。
「魔族が抜けてきました! 」
「門を開門せよ! 出撃だ! 」
城塞物見棟から声がかかり、東門の大扉が開けられる。
「抜けてきた魔族に対して攻撃を集中砲火だ! 前線を誤射するなよ! 喜べこの後オレたちは当分休憩だ! 」
城壁上の砲兵たちは前線が戦場に到着すると砲撃ができなくなる。休憩とは言っているが言葉通りに休憩をできるわけではないが、砲兵たちの次の出番は前線が突破されるか、膠着してからになるだろう。
「瑞希は剣じゃないのね? 」
「わたしは剣道もやってたけど薙刀の方が向いていたみたい。うちの祖父母道場薙刀の先生に貸してたからそれで薙刀も教わって、マニーそういうことだからペアわたしになるからね」
出撃した守星調査隊の馬車の屋根の上で、麻衣に訪ねられた瑞希は、麻衣に返答しながらマノーリアにも声をかけると、マノーリアは何か思考に落ちているのか瑞希の声が届いていないようだ。瑞希は改めて声をかける。
「マニー!」
「あ、ごめんなさい瑞希さん…… なに? 」
「わたしがペアになるって言ってるの! 」
「え、ええ」
瑞希は半眼でマノーリアを見てから、マノーリアの手を握り自分の胸元に添え口を開く。
「さっきも言ったけど、葵はここにいる。だからそんな顔しないで、葵は必ず戻ってくるから! そんなんじゃマニーが心配だよ。騎士長、頼むよ~ わたし初陣なんだから♪ 」
瑞希は、そう言ってマノーリアの手を離した自身の手をマノーリアの胸元に拳を当てる。この世界の騎士が行う健闘を祈る挨拶だ。
「瑞希さん…… 」
「まだ不安ならひとつ安心できる者を呼んであげよう エール! エールいるんでしょ! おいで」
瑞希は、葵の支獣であるエールの名を呼ぶ。主が死ぬ時が支獣もともに死んでしまうが、主が生きていれば、どんな攻撃を受けても一時的に姿を消すが、また現れる。すると瑞希の前にポンと翼の生えたコッカースパニエルのデフォルメ形態が現れる。瑞希は、エールを抱え込みモフモフする。
「エール! モフモフしたかったぁ かわいい! マニーを元気にさせて、エール」
「ワァン」
「よ、良かったぁ エールが生きている…… 」
エールは瑞希からパタパタと飛び立ち、マノーリアの胸元へと飛ぶこむ。マノーリアもエールを抱きしめて泣きそうな声が漏れた。支獣が生きているということは、主も生きていると言うことになる。それに安堵したマノーリアの頬の涙をエールがペロペロなめている。そこに瑞希がマノーリアを後ろから抱きしめる。
「わたし意地の悪い小姑にはならないからね♪ マニーを溺愛するわ♪ 」
「み、瑞希さん…… 麻衣さん助けて」
「瑞希調子に乗るな! そろそろ出番よあたしはバイクに移動するわ」
自動操縦で追随していたフライトバイクを馬車に横付けさせ麻衣が飛び乗る。麻衣を見送り瑞希が口角を上げて口を開く。
「それじゃわたしの腕前を見せてみんなを安心させてあげる♪ マニーだってビックリだからね」
「瑞希さん初陣なんだから、少し様子みてから」
「ずっーと葵の中でイメトレしてたし、わたしのこっちのカラダはイロイロな事に適応できるようにしてるから平気だよ。マニー行くよ! 」
瑞希はそう言って馬車が止まると馬車から飛び降りる。マノーリアも瑞希を追って飛び降りた。
「待って瑞希さん! 」
守星調査隊の馬車は全車が横向きに停車し、馬車を引いていた支獣たちも切り放される。馬車は固定砲台のように鎮座し後続の部隊の防御壁となる。前衛のアイ、ベルーフ、白檀、デイト、ナズナが、先頭の魔族に対して攻撃を開始する。その直上から梔子とカーラスとチョウノスケが空から斬り込む。そしてマノーリア、麻衣、咲、花と瑞希が後方援護攻撃を開始する。
「それじゃ行きますよ~ 」
瑞希が前衛を飛び越え魔族の群れへと飛び込む。
「瑞希ちゃん?! 」
「あらぁ~ 」
「瑞希! 無謀だ! 」
梔子とアイそれに白檀までもが瑞希の行為に危機感の声をあげるが次の瞬間。
「無炎乱舞 花筏」
瑞希に群がる魔族が足を払われるかのように倒れこむ、範囲攻撃のようで瑞希の周囲数十体の魔族が、その剣技に捕らわれた。
「無炎乱舞 花旋毛」
さらに瑞希は連続して剣技を放つと、倒れた魔族たちが一気に舞い上がり血の花を咲かせる。それはまるで地に落ちた花弁がつむじ風で舞い上がる様子だ。瑞希の剣技はマノーリアの物に酷似している。若干の違いはある強いて言えば、マノーリアが上段や中段からの剣技に対して、瑞希は中段か下段からの跳ねあげるような薙刀のさばきのような程度だ。瑞希の間合いに入りマノーリアが少し真剣ね声音で瑞希に声をかける。
「瑞希さん無理はしないで! 」
「マニーにわたしの実力見てもらわないと信用してもらえないかと思って♪ 」
「茶化さないで! 」
「でも、信じてくれた? 背中は任せるよ 」
「はい! わたしも瑞希さんに任せるわ」
ふたりはそう言って互いに背を向けて、魔族に対する。ふたりははじめてとは思えない連携で周囲に花を咲かせる。
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