568-星形要塞防衛戦
「前方11時方向! 2、4、6番艦砲撃よーい! 撃てー! 続けて3、5、7番艦12時! 砲撃よーい! 撃てー!」
オーシャンガーディアンの艦隊が魔族の軍勢に向けて砲撃を開始。
「邪神軍を城塞に近づけるな! 城塞砲撃隊出番だぞ! オーシャンガーディアン艦隊に遅れをとるなよ!」
「了解! オーシャンガーディアン艦隊砲撃を抜け出した魔族を狙うぞ! 砲撃よーい! 撃てー! 」
東門城壁上に展開した砲撃隊が続いて砲撃を開始する。オーシャンガーディアン艦隊司令のカトラスから萌に通信が入る。
「こちらカトラス聞こえますか? 山田艦長」
「聞こえてますよ。けど、カトラスさんその山田艦長はやめてください」
「どうしてですか? 非礼がある呼び名でないと思いますが…… 」
「うーん なんかかわいくない! 」
「えー…… かわいくない…… え…… 」
萌の発言にカトラスが困惑する。萌はカトラスの通信理由を理解している為、それを無視して話を進める。
「弾着確認ですよね? 」
「え…… あ、そうですね」
「ビット射出しました。改めて報告しますね。それと飛竜隊出撃してください」
萌はカトラスに伝え、そのまま星形要塞に帰還後に同乗させた飛竜隊に出撃指示を出した。以前は輸送目的でWBHや空中神殿に飛竜隊が便乗したことはあったが今回は別の理由である。
「有翼魔族のいない今、我々の空だ! 思う存分飛んで作戦を成功させよ!」
WBHから飛び立った飛竜隊は飛び立つというよりは、滑空しているように見える。飛竜たちに騎乗する騎士のたちが、飛竜たちの腹にくくりつけていた物体を魔族の軍勢へと上空から落としていく、飛竜隊が落としたのは風魔法を内包した爆弾であり、その重量が飛竜たちにとっては重すぎることから、WBHから滑空するかたちをとった。着弾すると突風が顕現し魔族たちを吹き飛ばし、吹き飛ばされた魔族は東門に前に湖のように拡張された堀へと落ちていく。先程、カトラスへの必要な報告はこれだ。萌はカトラスへと報告する。
「カトラスさん堀へと落ちた魔族は東門石橋を境に左右約100ほどですね。対応お願いします。おそらく攻撃継続で1度に吹き飛ばせる数はそのくらいかと思います」
「了解した。騎士たち出撃急げ! 」
カトラスは萌に了承し、騎士たちへと出撃命令を下す。魔族は水を嫌う為、空爆を行って水中へと引き込む作戦へと移行、人魚や海洋人種たちアクアノイドが応戦する。水中を苦手とする魔族に対し水中が住まいであるアクアノイドたちが、総攻撃を行うわけだから、上位魔族以下が相手であればアクアノイドたちが負けることはない。水中に落ちなかった魔族は、更に追い撃ちをかけるように、眷属神サヨリの津波が押し寄せ引きずりこむ。
「魔艇の接近を遅延させます。第2飛竜隊出撃してください。護衛に眷属が着きますのでご安心を」
WBHよりも更に高い上空にいた空中神殿から、カーラスの指示で飛竜隊とカーラスの眷属である八咫烏、グリフォン、大鷲のストライクイーグルの混成部隊が滑空する。八咫烏の群れが先行して魔艇を撹乱し、魔艇は当然応戦してくる為その為の陽動だ。その隙をグリフォンに護衛された飛竜隊が爆弾を投下、こちらの爆弾は、土魔法で着弾すると周囲の地形がいきなり変化し、魔艇の進攻速度を鈍化させる。そこへ低空飛行でストライクイーグルたちが魔艇へと接近し攻撃を行う。先行する魔族と後方を分断し確実に撃退する一連の作戦だ。
「今のところ順調のようですね」
「ただ、進攻する魔族の軍勢をまだまだ削らなければこの城塞は落ちる…… 」
デイトがアマテウスに声をかけるとアマテウスは歯噛みするように答えた。人と魔族の力量差があるため、アマテウスをはじめとする神々や守星調査隊のような一騎当千の戦士はまだまだ足りていない。少ない強者で守ったとしても、他で突破されれば城塞は簡単に落ちる。しかも相手は魔族であり、人同士争いのような政治や外交努力で回避できることもない。
「邪神が接近する前に多くの魔族を殲滅を」
「御意」
アマテウスに一礼したデイトが去っていく、去り際にエーテルとすれ違いデイトが声をかける。
「エーテルここにいる皆の回復を頼む」
「うんわかってるよ! デイトちゃんいってらっしゃい」
エーテルはにこやかに返答して、アマテウスの隣へと向かうのが見えた。ナズナ以外の援護系代行者たちはエーテルの指揮に入り、城塞内から援護を行うが、ただ籠るだけでは勝てない。デイトが城壁の階段を降りようとすると、東門の大扉前には、この城塞精鋭が集められている。守星調査隊の馬車を先頭に竜族の戦士たちやハリーたち守星連盟の精鋭部隊とベルガモット率いる王国騎士団が並び、後方には、それを援護するベレッタたち帝国重魔装鎧部隊やフォレストダンジョン王国のエルフの騎士たちとロゼッタたち魔導師精鋭部隊が揃っている。急遽建造されたこの城塞に建物は必要最低限の物しかない為、城壁内は比較的広いと感じていたが、これだけの人と長期戦に備えての物資が山積みとなり狭く感じる。
「一連の作戦を抜け出してくる魔族がいたら出撃だ! 」
先頭の馬車の屋根から白檀が皆に声をかけている。何度も死地を潜り抜けてきた戦士たちに迷いなどない。
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