561-女神アマテウスの覚醒
「……葵さん聞こえますか?…… 」
「デ、デイト様!? 」
「はい、おそらくあなたの剣も反応していると思いますが…… アマテウス様の意思で覚醒準備ができたようです。こちらでも白檀さんの剣が反応してます。準備を…… 」
重傷のデイトが念話で葵に声をかけるが、その声も息は荒くまだデイトが完治していないとわかるが、そのデイトがこうして念話を繋ぐだけに、邪神への抗う術がなくアマテウスの目覚めにすがるしかない事がわかる。
「わかりました。マニーありがとうもうひとりでたてそうだ」
「葵くん…… 」
肩を借りていたマノーリアに声をかけて葵はひとりで立つ、WBHにいる白檀も同様にワークの肩を借りてデッキへと出る。デイトも環の肩を借り白檀に続いた。WBHを出たカーラスたちが葵たちの元へと到着し、カーラスが葵に声をかける。
「葵さん邪神の気をそらせます。その間にアマテウス様を」
「了解」
「葵頼むよ! 」
「クー」
カーラスの横にいた梔子も葵に声をかける。その表情はいつになく真剣で、何かを覚悟したような表情にも見える。葵にはそれが受け入れられない女神アマテウスを覚醒させても、仲間の誰かが犠牲になるのは意味がない。それはマノーリアも一緒だったようでマノーリアが口を開く。
「クーわたしも一緒に」
「マニー」
「あなたたちだけで行かせるわけないでしょ! 」
後方から麻衣も声をかけ梔子たちのもとへ歩みより、葵の前を通りかかる時に麻衣は葵にも声をかける。
「そんなに時間が作れるとは思っていない。だからさっさっと女神を起こしなさい! わかった葵! 」
「わかったよ! 頼んだ」
皆が葵に声をかけ、咲、花、ナズナが葵の護衛の為に残り、他の皆は邪神の攻撃を止めるべく向かっていく、アマテウス同等のウルイドが倒せなかった相手にどれだけの時間を作れるかはわからないが、今は前に出るしか方法がないことを皆が理解している。葵は淡く光るブロードソードを鞘から引き抜き天へと掲げる。WBHのデッキでも白檀が大太刀を天へと掲げると、ふたりの剣から空へと光が立ち上ぼり、ひとつとなる。その光が空に羽衣を覆うかのようにゆっくりと広がる。
「環さんわたしは大丈夫です。あなたの力も捧げてください」
デイトが環に声をかけ環がそれに頷く、代わりに萌がデイトに肩を貸す。環は金剛杵をかまえ祝詞を唱えながら舞う。環からも淡く光が漂い空の羽衣へと混ざりあう。
「アマテウス様お願いします。お目覚めください…… これ以上の犠牲は出したくありません…… お願いいたします」
環は懇願するように空を見つめる。空に広がった羽衣がまとまるように淡い光が一点に凝縮して人の形を作り出す。
「鬱陶しい女神かっ?! 」
邪神が不快な表情をはじめて見せた。邪神もウルイドによってダメージを受けていた。それでも邪神に余裕の表情であったが、空に漂いはじめた光の羽衣もを見てはじめて不快感を表に出したのだ。邪神はアマテウスの覚醒を阻止するべく手をかざす。
「させるかっ!」
「ふんっ! 」
カーラスが邪神へと斬りつけるが、邪神は右手に黒い霧を集約させ剣の形状に変え、カーラスの刀を軽く払うとカーラスが吹き飛ばされる。
「落ちろっ! 」
カーラスと入れ替わるように梔子が斬り込むが、邪神は左手で梔子を平手で叩くように地面に叩きつける。
「地に下ろしたい。フフいいだろう相手をしてやる。ゴミども」
邪神は垂直に降りて地に足をつく、ベルーフやアイが突貫するが、邪神に攻撃すらあてることができない。麻衣とエーテルが邪神に音の障壁と蔦の拘束する。
「拘束? 逃げもせんよ好きにしろ! 」
「マニー今よ! 」
麻衣がマノーリアに声をかける。マノーリアが一定の距離で薙刀をかまえて剣技の準備をしていた。
「こい」
邪神も視認したようで挑発するようにマノーリアに声をかける。マノーリアは薙刀に魔力を注ぎ邪神へと突っ込む。
「なっ?! 」
マノーリアが渾身の剣技を放つが、邪神はマノーリアの薙刀を軽く掴み放り投げる。ウルイドによってダメージを受けたはずの邪神はそれでも圧倒的な強さだ。
「次はないのか? 」
「こいつ! 」
一番近くにいたベルーフが邪神へとハンマーを振りかぶる。
「くはっ! 」
ベルーフの腹部に邪神の膝が入り、ベルーフそのまま吹き飛ばされる。
「みんな離れて! 萌さんWBHの準備もいい? 」
「いつでもいいよ! 」
信治の声が聞こえ邪神の周囲にいた皆が散開する。次の瞬間。信治のSUVと萌のWBHからマイクロミサイルのシャワーと主砲の総攻撃が邪神へと浴びせる。
「そろそろよいか? 」
「きいてない…… 」
爆煙から邪神の声が凍りつくように聞こえる。信治の落胆の声だけがそこに落ちた。皆も渾身の攻撃が通らない相手と悟り苦悶の表情で立ち尽くす。
「ゴミども死ねぇ! 」
邪神が邪悪な霧を纏い周囲に放つと空から羽衣も垂れ下がるように光が落ちる。
「皆待たせましたね」
「アマテウス様…… 」
そこに現れたのは赤紫の髪をなびかせ槍をかまえる最高神のアマテウスがようやく覚醒し邪神の前に立ちはだかっていた。
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