556-続く死闘
白檀とワァプラの力と力の死闘を脇にこちらでは、剣の実力に勝るサタナキアに対して、奇策で挑む葵の構図で死闘が繰り広げられていた。サタナキアは葵の動きを交わすと距離をとり笑みを浮かべ葵に尋ねる。
「なんだ? その異様な魔力は女神でもウルイドでもない新たな力だな」
「お前には理解できない力だろう。サタナキアもう負けるつもりはないよ」
葵は右手にかまえたブロードソードは、赤紫に淡く刀身を輝かせ、左腕のシールドガントレットにも刀身と同様に赤紫の淡い光が纏わりついている。
「おもしろい。 そうでなくてはな神無月来い! 」
サタナキアが挑発し、葵に伸ばした左手の指先を軽く動かして手招きする。葵はふっと笑いサタナキアへと斬りかかる。
「速いだけか? 」
「どうかな…… 来いエール! 」
「なっ!? 」
サタナキアは軽く葵の剣をかわすと、そこに葵の支獣のエールが飛び込んでくる。ゼロ距離からのエールの攻撃だが、サタナキアほどの強者がダメージを受けることはない。サタナキアはエールの爪をかわし懐へと入りエールへと剣を突き刺す。エールは霧散するが支獣であるエールは、葵の命がつきない限り問題ないがこれでエールの援護は当分期待できなくなった。
「ロックウォール! 」
サタナキアがエールをかわした先に石壁がそびえ袋小路となり、葵がサタナキアへと突っ込む。
「ロックブラスティング! 」
葵はサタナキアの足元へとブロードソード突き刺して爆裂を起こす。
「まだだガンパウダーブラスト! 」
サタナキアの周囲で小爆発が連発しておきる。
「ランドスライド! 」
続けざまに葵がブロードソードで剣技を放った。
「調子になるなよ! 神無月ぃ~ 」
サタナキアは葵の剣技を長剣で抑えて見せたが明らかにサタナキアはダメージを負っている。以前であれば互角の勝負とはいえ、サタナキアには余裕があり葵は必死で食らいつくような状況だっが今は違うように見える。サタナキアの表情に今までのような余裕はないのだが、サタナキアは口から青黒い血を流しながら笑う。
「人間はおもしろい! これだからこそやめれんな殺すことを! 」
サタナキアが猛攻へと転じる。葵の力が増したことを喜ぶように笑みを浮かべて長剣を振るう。葵はサタナキアの攻撃をかわす。生真面目に剣同士の戦いをすればサタナキアに勝てないことを葵も学んでいる。サタナキアと鍔迫り合いとなった瞬間に葵はサタナキアの顔面に左手を広げる。
「サンドブラスト! 」
サタナキアの顔面に砂の散弾が襲う。葵は瞬時に距離をとり仕切り直す。サタナキアが目を抑えて声をあげる。
「神無月ぃ~!!! 」
サタナキアは葵の奇策に苛立ちはじめている。サタナキアの隙が生まれれば葵にも勝算が出てくるのだが、葵の予想は外れた。
「楽しませてくれる! 」
サタナキアが長剣をかまえて葵へと突っ込む、葵はサタナキアの剣が来るとかまえるが、サタナキアはニヤリと笑い葵の腹へと膝を押し込んできた。
「ぐはぉぅ! 」
前にかがんだ葵にサタナキアは長剣の柄で背中殴りつけ、葵は苦しみながらも身体を転がし立ち上がり距離を取る。サタナキアが面白がるように葵に声をかける。
「やれると思ったか? 甘いな貴様が力をつけたなら、わたしもどんな手でも使うまでだ」
「手を抜いてくれていたってことかよ。ならうしろめたくやらせてもらうだけだ」
葵とサタナキアが合わせたように間合いを縮め、互いに致命傷を負わせられずに体力を削るような戦いが続く、一方で葵たち後方でマノーリアたちを足止めしていたファーマーは、マノーリア、梔子、アイによって追い詰められていた。
「来んでねぇ!! 」
大鎌をむやみやたらに大振りして、マノーリアを追い払おうとするが、マノーリアは容易く大鎌を弾きファーマーへと歩みを止めない。ファーマーは種を撒き肉壁をつくるが、マノーリアに代わり梔子が空からファーマーを襲った。
「ひぃー! 」
ファーマーが怯み逃げようと振り向くとそこにはアイがいる。
「いけない魔族さんあきらめなさ~い ここで終わりよ」
アイが剣技を放ちファーマーはまともに受けて吹き飛ばされる。
「このごじゃっぺども! しかたねぇここまでだな けんどもおめぇらが簡単に勝てるなんて思わねぇことだ。泣かしてやっかんな! 」
ファーマーはそう言うと腰の袋から一粒の種を投げたがいままでのように魔族が生まれない不発のようで何も起こらない。ファーマーは大鎌をかまえて、マノーリアへと振りかぶった。
「無炎乱舞 月光! 」
マノーリアも剣技を放ちファーマーはそこに崩れ落ちた。
「マニーちゃんお見事! 」
「マニーいきなり力が増したよね? 何で? 」
アイと梔子がマノーリアにかけより声をかける。梔子の質問に気恥ずかしそうにマノーリアが答える。
「葵くんが得た魔力を分けてくれたの色が近いし自分も融合できたからって…… 」
ふたりはなま暖かい視線を送り、マノーリアの肩をポンポンと叩き声をかける。
「ごちそうさまでーす」
「愛の力ねぇ~ 」
「ちょっとふたりとも! 」
ワァプラに続きファーマーを倒した。ファーマーを倒したことは大きい。他にも下位の生産系魔族はいるが上位魔族を産み出せるものはいないからだ。一般の騎士や冒険者でも中級以下であれば対応できるからだ。




