553-無炎乱舞
「ワァプラとサタナキアであれば我々も援護を! 」
環が結界内に残る皆に声をかける。皆はコクりと頷き結界外に出ると、サタナキアが葵に剣先を向けて口を開いた。
「貴様らはここまでだ。神無月ここで貴様を斬る」
ワァプラは自身の獅子の顔の顎の毛を撫でながら笑みを浮かべて白檀に声をかける。
「お前を殺した後は、大陸を蹂躙する。まぁ後ろのやつらはその蹂躙する様子を見物させるためにいかすのも一興かもしれんな」
邪神と戦うウルイドの援護に結界外に出た葵たちの前に立ちはだかったのは、邪神覚醒を目論みそれを成功させ、邪神軍を率いてきた。軍師ワァプラと過去に邪神直系の戦士として生まれた四面魔神のひとりにして最強の魔神サタナキアだった。幾度となく葵たち守星調査隊の前に現れ、邪神軍を率いて苦難をもたらした2体の魔神であるが、今は、自身が定めた敵を求める魔族の欲求を優先しているようだ。白檀が大太刀をかまえ剣技を発動させる準備なのか大太刀に炎を纏わせ返答する。
「ここで終わるのはお前らだ。さっさと終わらせ邪神を倒す! 」
白檀が言いきると同時に剣技を放ちそれがワァプラとサタナキアとの最終決戦の口火をきった。
「葵くんと白檀お兄様の援護をふたてに別れて」
「させねぇ~よ! おめぇら一騎討ちの邪魔すんでねぇ。まとめておめぇらはここで足止めだぁ!ごじゃっぺども! 」
麦わら帽子とオーバーオールに大鎌の魔族のファーマーが現れ、葵と白檀以外の足止めをするように立ちはだかり、周辺へと種を雨のようにばら蒔き魔族を収穫する。梔子が舌打ちをひとつ打って皆に声をかける。
「ファーマーを倒さない限り、次から次に魔族を作り出すから、マニーとアイさんとわたしでファーマーに攻撃しよ!他の魔族はみんなでお願い! 」
「クーさん了解! 援護します! 」
「そー言うことなら任せなさい! マニー切り替えてファーマーを! 」
梔子に咲が返答し麻衣も賛同して隣にいたマノーリアに声をかける。マノーリアは葵の援護に行けないことに歯噛みしていたが、切り換えたように麻衣へと頷きで返し口を開く。
「ありがとう麻衣さん けどもう平気よ! 」
「さすがマニーね! じゃ魔族たち! あたしの歌を聴きなさい! 演者の眷属! 」
麻衣はフライトバイクのスピーカーユニットを解放し周囲をパフォマーの眷属たちで固める。
「クー! アイさん! 」
「さっさとあいつやらないとうじゃうじゃになっちゃうからめんどうよねぇ~」
マノーリアがクーとアイに声をかけると3人がファーマーへと走り出し、その速度とは相反するような声音でアイがゆるりと口を開いた。梔子が苦笑しつつもふたりへと声をかける。
「さっきの戦いでファーマーは防御を知らない感じだったから、一気に畳み掛けよ! 」
「こっちくんでね! 」
ファーマーが走りよってくるマノーリアたちに魔族たちをしむけるが、その魔族たちに向けて後方から攻撃が放たれる。数体の魔族が一撃の魔弾で貫通し倒れ伏せる。
「クーさん! 任せてください! 行って! 」
「ありがとう! 花! 」
後衛の花の必中によって魔族はクーたちに近寄れない。さらに道を作るかのように皆が加勢する。
「ウォーターウォール! 」
「プラントネット! 」
「ロックストーム! 」
咲が水の壁を作り出し、ナズナが蔦の網を発現し魔族を絡ませ、ベルーフが石の嵐を起こす。
「ファーマーもらった! かまいたち! 」
梔子が低空に飛んでファーマーへと剣を振るう
「ごじゃっぺが! 」
ファーマーは大鎌で攻撃を繰り出し、さらに梔子めがけて種をばら蒔きゴブリンを生むまさに肉壁にしている。
「やっぱり防御を知らないのかしらぁ? 万華鏡! 」
アイが妖術を重ねた剣技で横合いからファーマーを狙い打つ。
「鬱陶しい害虫ども! 」
ファーマーはまともやアイにゴブリンを投げつけ、大鎌を大振りするがアイはすかさずかわす。ファーマーの大鎌は唐竿のように刃がくるりと回り2撃めが来るため、アイも間合いを多くとって回避する。
「葵くんから受け取った力は無駄にしないわ! 無炎乱舞紫電! 」
マノーリアが新たに得た魔力によって剣技を放つ、それは今までの剣技ように紫炎を纏わず見た目は単なる剣技を放ったように見えるが、それは違った。マノーリアの剣技である紫電は、言わば残像によるフェイント攻撃で、見た目には演舞のような技だが実際はその前に敵へと攻撃がしかけられている。その攻撃速度が以前とは段違いだ。紫電という剣技がいままで対魔族でマノーリアが使用していなかったが、葵から得た新しい魔力によって魔族にも通ずる剣技となったのだ。マノーリアはファーマーの懐へと入り無防備な腹へと一撃を与えると、ファーマーは吹き飛ばされる。
「いてぇ~ おめぇきたねぇかんなぁ! おめぇみてなぁのは泣かしてやっかんな! 」
「泣くのはあなたの方よ! 横やりをいれたのを後悔させてあげるわ! 」
マノーリアはあらためて薙刀かまえてファーマーへと宣戦布告するのであった。




