550-抗うものたち
眷属神たちが瀕死の重傷を受けることとなり、守星調査隊は、戦場へと急降下し救出を行った。更に囚われたカーラスの姿に激昂した信治が無謀な突貫を仕掛け弾切れするまで撃ち尽くした。確かに信治の暴走によって魔族を一定数減らせたが、邪神軍の兵に過ぎない。邪神をはじめとする脅威となるS級魔族は健在である。しかし、邪神やワァプラとサタナキアが戦場にいたとは言え、眷属神たちが深傷を負いすぎているように見える。その状況を知る者たちが環のもとへと合流する。
「皇女様助かりました。我々が手を出せる状況ではなかったのでちょっとデイト様の指示で後方に下がり指をくわえて待つことしかできずにおりました」
「リーフ団長」
皇女に声をかけたのは、北部より王国軍を率いるラストスタンド王国騎士団団長でマノーリアの従兄のベルガモットであった。副官のマンダリンを従えて事情を説明に来たようだ。その後に共に北部より東部に進軍した霊峰神殿自治区神殿長のアザミと、南部方面より進軍した。フォレストダンジョン王国の女王のマンテマと実妹のアマネとオーシャンガーディアン海洋国陸上軍を率いる姫マーレも歩み寄る。
「ベルガモットお兄様いったい何があったんですか? 」
マノーリアがベルガモットへと尋ねる。ベルガモットは歯噛みしながら東部の戦況を説明する。
「竜族の戦士ふたりが犠牲になったが、眷属神様三方によってサキュバスの女王婀娜を倒し、三犬頭の悪魔サーベラスは逃がしたものの瀕死に追いつめ、魔艇撃破の為に進軍したのですが…… 」
「邪神が現れたのですか? 西部方面からワァプラやサタナキアを引き連れ東部方面へと向かうことはこちらでも把握してましたが…… 」
環が知る限りの邪神の動きを擦り合わせ、ベルガモットが頷き続きを話す。邪神たちが現れたことによって、改めて眷属神が全面に出たが、邪神やワァプラとサタナキアはあえて眷属神3人への攻撃を直接行わず、弄ぶかのように守星軍の騎士や兵に襲いかかった。それを阻止するために、一度騎士たちを後退させ眷属神たちと眷属神の眷属が前に立ちはだかる時には、眷属神は魔族に囲まれ後方からの援護は魔族に阻まれ、挙げ句に拘束されたらしい。
「邪神たちの術中にはめられ、我々は眷属神様を救出することすらできずにいた。邪神が凶悪なだけでなく狡猾であることも思い知らされた…… 」
環がベルガモットの話を聞いてさらに尋ねる。
「現在の東部方面の戦力は? 」
「北部南部あわせて1/3が損耗し、多くは上位の騎士や兵と冒険者に被害が出ています」
眷属神と竜族の戦士を失いさらに一般の騎士や兵士も戦力となる上位の者が負傷している状況では今後の戦況はかなり厳しいとベルガモットも苦笑する。環が口を開く。
「西部方面もあまり変わりません…… 今は魔艇の進攻は谷が崩れたので停滞しているだけです。リーフ団長一部の戦える部隊だけ再編成し、残りは西部方面部隊と合流するのはいかがですか? 谷の対岸を迂回すれば魔族の攻撃はないはずです」
「しかし、これ以上戦力を削るとなると」
「邪神はわたしたちが想定したよりも脅威です。早い段階で東の砦の防衛準備をしなければロスビナスシティまでの進攻を防げないかと…… 」
「わかりました。マンダリン後方に下がり再編準備を準備完了後、即行動に移れ、マンダリンは合流部隊の指揮に回れ、わたしは守星調査隊の援護にはいる」
「了解」
マンダリンはベルガモットに敬礼しすぐさま後方の部隊へと戻る。環が皆に声をかける。
「白檀さんと葵さんの援護を! 相手は邪神です気を抜かないように」
「了解」
環と麻衣の造った結界から梔子、咲、ベルーフ、ナズナ、アイ、アマナが飛び出し、次にマノーリア、麻衣、ベルガモット、ジンジャー、花が戦場へと向かう。環の周囲にはマンテマ、マーレ、アザミの眷属神の代行者が全員集まり、後方から援護を行う。
「人間どもがまだまだ楽しませてくれるか、ワァプラ、サタナキア貴様らの一騎打ちはあやつらが生き延びたらの余興だな、悪いが今はわたしが楽しむ番だ」
「御意」
邪神がワァプラとサタナキアに笑みを漏らし愉しげに、白檀と葵の攻撃を交わしてみせる。
「全員でかかってこい! 楽しませてくれよ」
邪神は笑みを深くし、挑発するように手招きをするのだった。
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