543-ポッと出の魔人があまりにも強すぎるので、助っ人を召喚したのですが、必要演出をこなさないと介入してくれないようで大変です。
信治の作成した本型の武器は未だにそれだけでは機能しない。麻衣と信治が女神から得た力と葵がウルイドから得た力によって、新たな武器へと進化することによって、その機能を発揮する。信治の手にある本型の武器が形状を変えてドールハウスのような形となり霧散して信治の背後に大きな建物が現れる。
「ヒーローズライブラリー! 」
信治はさらに叫んだ。葵はその言葉に信治のチート召喚魔法が成功したことを理解する。今の状況ではいつものように信治に小言を言うつもりもない。目の前の新たに現れた魔人を倒し、誰の手でも借りてさっさと地上に戻るのが先決だ。しかし、今のところ信治によって召喚されたキャラクターが現れる様子はない。葵は念のため信治に尋ねる。
「成功してるんだよな? 」
「感覚では成功してるよ! おかしいな…… 」
「誰を呼んだんだよ? まぁいいこのまま援護を頼む」
「うん! 任せて」
何も起こらない事に信治も首をかしげるが、葵が仕方ないと気持ちを切り替えたことで信治もそれに応じる。
「小僧どもがこれで終わりだ! 」
ビットの攻撃を交わし葵に接近してきたアガリアレプトが槍を大振りする。葵と信治は大きく回避すると同時に石の散弾やマイクロミサイルのシャワーを浴びせる。
「相も変わらずだな! 」
「まずい! 信治! 」
アガリアレプトが葵と信治の攻撃を読みきっており、信治へと突進する。葵はアガリアレプトが信治へと接近するのを阻止するために石壁を発現させる。
「人間は下らん! 」
「何!? 」
「葵くん!」
信治への攻撃はフェイクだったようで、葵の至近距離にアガリアレプトが現れ槍を振るった。
「クソッ! 」
葵はかわしきれずにダメージを受けて吹き飛ばされる。
「人間は本当に愚かだな あの小僧を助けるつもりだったか? うん? まだ立ち上がれるか」
「お前らには理解できないだろうけどな…… それにここで負けるわけにはいかないからな…… 」
葵はよろよろと立ち上がり、腰にあるポーションアンプルに手を伸ばし飲み干すが、アガリアレプトの一撃はポーションで完全回復とはいかないようだ。
「まだ生意気な口を利けるようだな」
「おかげさまで…… 」
葵は改めてブロードソードをかまえアガリアレプトの猛攻を受け止める。信治がアガリアレプトの死角から攻撃を仕掛ける。
「鬱陶し小僧が! 貴様の攻撃は見きったわぁっ! 」
アガリアレプトが槍を頭上でグルグルと振り回し、信治の攻撃を防ぎ、信治に黒い炎で反撃をする。信治が黒い炎に包まれる。
「うあー! 」
「信治! 」
葵がすかさずアガリアレプトの懐へ飛び込む。
「ディスピア! 」
「ふんっ! 」
「ぐはっ! 」
アガリアレプトが葵の突き剣を槍で払い葵を蹴り飛ばされ、葵と信治は地面膝をつき肩で息をしている。
「さすがに四面魔神ってとこか…… 」
「ふんっ! 戯けたことをヤツらと一緒にするな そもそも我はサタナキアよりも強者であるからな貴様のような小僧が我に勝てるわけなかろうて」
「それはどうかなサタナキアだってお前に勝ったんだろう? ならオレも勝てるかもしれないだろう…… 」
「負け惜しみだなそろそろとどめをさして、サタナキアに土産として貴様の亡骸をくれてやろうではないか、さぞかし愉しげな顔をヤツもするだろうさ」
アガリアレプトはゆっくりと葵へと歩み寄る。葵は蓄積したダメージで立ち上がるのもやっとのようだ。数分でいいから回復の時間がほしいのが本音だろう。
「葵くん逃げて! 」
信治が身体を引きずりながら隣に浮いていたSUVに這い上がり、アガリアレプトへと攻撃を仕掛けるが、すでに信治の攻撃を理解したアガリアレプトは避けもせずにビットを槍で払い落とす。
「黙れ小僧! 」
「どぅはぁっ! 」
アガリアレプトは信治に更に黒い魔弾を撃ち込み信治は倒れ込む。
「これで後はお前だけだな…… 小僧」
葵はブロードソードをかまえるが、今の体力でアガリアレプトの攻撃を凌ぎきる自身はさすがになく、歯を食い縛るしかなかった。
「しねーー! 」
アガリアレプトが槍を葵へと向けて貫こうとした瞬間に突如黒い陰が横切る。
「何!? 」
アガリアレプトも寸前まで気配に気がつかなかったのか、不意をつかれたような気を抜けた声を漏らした。背後を振り替えるとそこには、いつの間にかボディスーツを身に纏い、フードを被った少女たちが立っている。
「主人公危機的状況で介入する謎の美少女たちムーブ来たぁー!! 」
更にその少女たちの後ろでポーションで回復したのか信治がテンション爆上がりして更にエナジードリンクのように不必要にポーションの缶を飲んでいる。ちなみに信治はポーションの味が気に入らないらしく、ナズナに特注で作ってもらった炭酸で割ったポーションを常備している。
「貴様たち何者だ! 」
アガリアレプトが台本のようなセリフを少女たちへと吐き捨てると、長い髪をなびかせて金髪碧眼のエルフの少女が口を開いた。
「わたしたちは陰にいきる者…… あなたたち教団に仇なすものよ」
「教団だと? 意味のわからんことを…… まぁいい貴様らも我が槍の餌食となれ」
信治のチート召喚魔法で召喚された少女たちによって、葵と信治は一命をとりとめた。地上から深く潜った洞窟の中、何故かどこからともなくピアノを奏でる音が葵の耳にも聴こえるのであった。




