541-地下
「ここは…… 暗いな…… 」
葵は目をさますが周囲は暗く何も見えない為、光魔法を手のひらに顕現し周囲確認する。
「洞窟? 水攻めで地下水脈からも汲み上げた分、水位が下がってできた感じか…… とりあえず助かったな」
葵は周囲に明かりを照らすが光はとどかないほどに続く横穴が数本あり、葵の足元には透き通る水面が広がるが水深はかなりありそうだ。地下水の水位が下がってできた岸に葵は打ち上げられたようだが、周りには一緒に落ちたアガリアレプトもいない事が確認できたので一息ついた。
「水が嫌いとは言えさすがに溺死はしていないよな…… 」
魔族は水を好まないし下位や中位の魔族であれば、溺死するが、戦っていた相手はサタナキアと肩を並べる四面魔神のアガリアレプトであることを考えれば、決着が着いていないと考えるのが妥当だろう。
「疲れた…… 少し休んでから戻るか濡れているのも気持ち悪いしな」
葵は風魔法を顕現させ自身を包み身につけた魔装衣を乾かし、近くにあった岩に座り腰のバックから携帯食を取り出し口に放り込む。
「エール来れるか? 」
「ワン! 」
葵は自身の支獣を呼び寄せるとポンとデフォルメ形態のエールが顕れる。葵が落ちた時にエールは共に落ちなかった為、葵に呼び寄せられたことで顕れた。葵はエールに尋ねる。
「エールが来たってことはマニーは大丈夫なんだよな? 」
「ワン! 」
「そうか…… なら良かった」
葵はエールを撫でながら声をかける。支獣は主の精神から環によって創られる獣であるので、あえて指示を出さなくても主の判断を行動する。葵がアガリアレプトと落ちた時も、葵救出でなくマノーリアの援護の判断をエールはしていた為、葵とは行動しなかったのだ。葵が呼び出しすぐに顕れる事ができたことを考えるとマノーリアはサタナキアから回避できたか、他の仲間と共闘できているのだろうと推測はできるがあくまでも推測なのだ。葵は拳を強く握るマノーリアを守りきれていない葵は、不安を払拭できないのでエールと意識を同調する。
「麻衣たちに助けられたのか…… 良かった…… 」
マノーリアは苦戦を強いられたが仲間によって救助され、サタナキアたちS級魔族が後方に引いたことを葵も知ることができた。マノーリアの負傷もロゼッタのちりょ
「ひとまず合流しないとな…… このまま上に上がってもいいけどどのくらい流されたかもわからないからな」
デイトに授かった加護を使用すれば、岩を砕きグラビティコントロールで体を浮かせれば地上に戻ることは簡単だが、今がどの辺りなのかが不明である。
「エールわかるか? 」
「ワン!」
エールはパタパタと方向示すように飛んでいくので、葵はエールの後を着いていくことにした。数百メートルも歩くとエールが洞窟の天井を見ながら旋回する。
「この上なのか? 」
「ワン! くぅーん」
エールはそうだと言わんばかりに返答するが、その後で寂しげな鳴き声をあげた。
「クラックはデイト様のクレバスと同じだからある程度の時間が経つと塞がるからな仕方ない」
葵がアガリアレプトとの戦いで使用した能力のクラックはデイトのクレバスほど広範囲の地割れではないが、基本的には同じ能力であり、葵が塞ぐように発動するか、一定時間が経過すると元に戻るように塞がる。
「それじゃ この辺りを砕きながら地上に戻るか」
「ワン! !? 」
葵の言葉にエールが返答するが何かを感じたようだ。
「ガルルゥー」
エールが戦闘形態に体を変化させて葵の前に出て異変を感じた方向の暗がりに向かって威嚇する。
「アガリアレプトか? 」
葵もブロードソードを構える。暗がりからゆっくりと人影が葵たちの元へと近づいてくる。葵は手のひらにある光魔法で顕現した光の玉を人影へと投げ込み、人影へと走り込む。
「アガリアレプト! 」
「ちょっ! タイム! タイム! 葵くん僕だよ! 」
「信治!? なんでいるんだよ! 」
葵たちに近寄ったのは信治であった信治は頭をかきながら返答する。
「団長にはダメって言われたけど…… 葵くんを見つけに来た」
「当たり前だ! まだ戦闘中だろう? 」
「まぁそうなんだけど。今は僕たちは後退して休憩中」
「団長に黙ってきたのか? 」
「うん…… けど麻衣さんや萌さんは知ってるから団長には伝えてくれたと思う。最初は麻衣さんが行くって言ってたから止めたんだ。それで代わりに僕が来た」
葵は苦笑しながら信治に声をかける。
「ありがとな…… けど、ならすぐに戻るぞ! 」
「うん!」
葵は洞窟の天井に手をかざし岩を砕きはじめながら信治に尋ねる。
「ところでここまでどのくらい降りた? 」
「500メートルくらいかな? 」
「けっこう深いな地上に上がるのに30分くらいか、しかし、信治クラックは一定時間が経過すると塞がるって知ってるよな? 塞がったらどうしてたんだよ? 」
「僕の魔力の元は柊さんのだよ土魔法は使えるから葵くんほどじゃないけど自力で上がれるよ」
「そうだったな。信治が使ってるのあまり見ないからな」
「僕は葵くんみたいに魔力の操作は得意じゃないからね。錬金術で代用可能ならそっちを使ってるから」
葵と信治は地上に上がる為に雑談をしながら穴を掘っていると、またエールが警戒するように唸りはじめる。
「人間逃がすわけないだろう」
「やっぱり死んでないよなアガリアレプト…… 」
葵と共に谷へと落ちたアガリアレプトが葵たちの前に現れたのだった。
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