534-サーベラスの欲求
デイトとサーベラスの一騎打ちは今なお続いている。一進一退の攻防戦は、一騎打ちとなったことでサーベラスの瞬間移動は、デイトの徹底した防御と警戒によって封じている。デイトとサーベラスはヘビーアタッカーである為、互いの一撃が重く、デイトの大剣とサーベラスのハルバートが弾け遭うだけで、距離を取っていても周囲へと鈍い波動を感じるほどだ。デイトが大剣をかまえてサーベラスへと突っ込み、サーベラスがハルバートで受け止める互いにそれ以上の対応ができないほどに接戦で緊迫した戦いの為、互いの攻防はシンプルなものになっており、まるで型の決まった演武のようだ。デイトが大剣を上段にかまえて飛び上がり重い一撃をサーベラスへと振るう、それに合わせ、地を這うように黒い影がサーベラスを払うようにあらわれる。
「なっ?! 」
サーベラスでさえ、それに気がつくのに遅れるほどに気配を消し、一瞬のでき事だった。サーベラスはデイトの攻撃を防いだものの、黒い影の攻撃を交わしきれずダメージを受けるが深傷には至らなかった。
「これも避けるの! デイトちゃん! 回復を! 」
デイトが声のする先には植物の檻のように自身を防御するエーテルがいる。サーベラスに斬りつけたのはカーラスで、サーベラスの手足には植物が絡みつきエーテルが拘束していたようだ。サーベラス程の強者には次は使えないかもしれないエーテル渾身の拘束術だ。サーベラスは黒い炎をカラダに纏いエーテルの拘束を焼ききり咆哮をあげる。
「クソが! 女神の眷属ども! 全員まとめて殺してやる! 」
冷静に戦っていたサーベラスが感情を露にし猛獣のごとく唸り威嚇し、カーラスへとハルバートを大振りに振り下ろす。カーラスは咄嗟に横に飛び交わし、かまえ直そうとした瞬間サーベラスがハルバートを軸にし、カラダを振り回しカーラスへと蹴りを喰らわす。
「ぐっ! 重い…… 」
カーラスが防御するがサーベラスのカラダを投げ出し体重の乗った蹴りに、吹き飛ばされ翼を羽ばたかせ衝撃を軽減させ着地するが片膝を地につけ肩で息をしている。軽装でスピードを活かすカーラスが受けとめるには、重い一撃だったようでそれなりのダメージは受けたようだ。
「カーラスちゃん回復するよ! 」
「させるか! 」
エーテルがカーラスへと回復しようと近づこうとするとサーベラスがエーテルへと突進する。エーテルがサーベラスから距離を取るために、サーベラスへと植物の障壁を作り出す。
「くだらん! 」
サーベラスはハルバートで切り裂き、黒い炎で植物を焼き焦がす。
「エーテル! 」
「邪魔だ! 」
エーテルをかばいデイトが強引に割って入りサーベラスのハルバートを受けとめる。さらにカーラスもサーベラスに攻撃をしかける。デイトとカーラスの連携した攻撃にサーベラスも防戦となり、その隙にエーテルがデイトとカーラスを回復させる。デイトがサーベラスへと声をかける。
「ここで死ぬのはサーベラスお前だ」
「黙れ! まだだ! 」
「カーラス行くぞ! 」
「ええ」
デイトとカーラスがタイミング合わせてサーベラスへの渾身の剣技を打ち込む。デイトとカーラスがエーテルに視線を送ると、サーベラスの周りを植物が覆いつくす。
「小癪な真似を! クソが! 」
サーベラスが咆哮をあげてハルバートを振り回す。
「疾風迅雷! 」
「プラネットグライド」
「ぐはぁー!! 」
カーラスとデイトの剣技をまともに受けて今までにないダメージを受けたサーベラスはフラフラと立っているのもやっとのようだ。デイトが大剣をサーベラスに突き出し急所突きの剣技を放つ。
「サーベラスとどめ! ディスピア! 」
デイトの大剣はサーベラスの左の胸元に突き刺さったように見えたが、サーベラスはしたたかに笑う。
「惜しかったな…… デイト・ア・ボット…… これでわたしはまた一段と強くなる。貴様たち眷属神3人からの攻撃を耐え忍んだからな…… すぐに回復してまた楽しませてもらうさ…… 」
サーベラスの左腕がどさりと地に落ちる。腕の長さだけでもデイトの身長くらいはありそうだ。デイトは青黒いサーベラスの返り血を浴びながら歯噛みしサーベラスの意図を察し、カーラスへと声をかける。
「カーラス! サーベラスを逃がすな! とどめだ! 」
カーラスもデイトの言葉に即応し剣技を放つ。
「電光朝露!」
カーラスの急降下の斬撃がサーベラスにとどめをさしたように見えたが、サーベラスの笑みは変わらなかった。
「遅かったか…… 」
「待ってろすぐに貴様たちを葬ってやるからな…… 」
サーベラスのカラダが滲むように消えていく。
「くそっ! 」
デイトが大剣を地にさして悔しがる。後一歩でサーベラスを仕留められたはずがなくなく逃してしまった。
三犬頭の悪魔サーベラスはそもそもは中級に属するケルベロスであったが、過去の大戦時に人間や統率に従わない魔族を殺しつくしてきた。その結果進化を遂げて、獣人のカラダと言語を得ることができた。それにより、ワァプラに見出だされ、ワァプラの忠実な家臣となった。サーベラスも魔族強者特有の一騎打ちにこだわる傾向があるが、ワァプラやサタナキア程ではない。サーベラスがそれ以上にこだわるのは更なる進化である。強者として生み出された魔族でないサーベラスにとって限界突破のような方法での進化は期待できない。闘いの中で進化することこそが強者であり続けるからである。人を殺す以上に自身の進化を欲しているのだ。
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