533-思いを馳せるウルイド
「デイト・ア・ボットお前はここで死ね 」
「過去よりも強者になったことは認めよう…… 」
サーベラスによって竜族の戦士ふたりは息を引き取った。サーベラスの狡猾な戦闘センスに対応できなかった。サーベラスはそもそも中位魔族に属するケルベロスであったが、過去の大戦時に人間を殺しつくし進化した。そして言語能力と思考能力を手にし、その頃にはワァプラに目をつけられ家臣となった。それからもサーベラスの戦士としての能力を進化をし続けて、S級の魔族同等の力を得るまでとなった。サーベラスは過去の大戦で力およばなかったデイトたち眷属神を倒したい欲求からデイトの一騎打ちを望んだが、エオローとラーグを倒したことで、その者たちと繋がる神は気づくのであった。
_____________
竜大陸王都
ウルイド自室
ウルイドは空をぼんやりと自室のバルコニーから眺めて息を一息つくと自室のドアがノックされ、軽い口調で答える。
「入っていいよ」
「お呼びでしょうか? 」
部屋に入って来たのは戦士長のティールでウルイドがここに来るように呼んでいたのだ。ウルイドはバルコニーから部屋に戻り、ティールをソファーに招き座るように伝え自身も対面のソファーに座る。
「エオローとラーグが死んだよ…… 残念だけどね…… 」
「王との繋がり切れた…… ということですか? 」
「そうだね」
竜族も両親がおり母親から生まれる。しかし、竜族全員がウルイドとは直接繋がっており、ウルイドは自分の創り出した種族の生き死にをずっと見てきている。遠くはなれた場所にいるエオローとラーグも、ウルイドと繋がりその繋がりが途切れるとウルイドには分かるらしい。
「惜しい戦士たちを…… 」
「ただね。ちゃんと魔族と戦ってだから悔いはないはずかな? デイトちゃんでも手こずる相手だからしかたない。しっかりと無に還してあげないと」
「王がワシをお呼びになったのはふたりの死を家族に伝える事だけではありませんよね? 」
ティールはエオローとラーグがちゃんと魔族と戦ったなら家族への報告は簡単だ。だが、ウルイドが呼び出したのは別の理由があると悟っている。
「まぁ ティールが想像通りかな。約束通りデイトちゃんたちをお手伝いしないとね」
「では、至急、種族総動員令を民たちに発令し旅の準備を」
アマテウスとの初期の契約はアマテウスたちが邪神を倒せなかった場合はウルイドによって、この星ごと破壊することとなっている。その場合は、竜族は老若男女関係なく全員で戦場へと向かうこととなっている。ウルイドが手をヒラヒラさせてティールの言葉を否定する。
「デイトちゃんたちが来た時に契約変更したじゃん。だから、変更後に全員で行くことにはしてないからさ」
「しかし、王よワシらは…… 」
「デイトちゃんたちがまだ全滅したわけでもないし、そもそもアマテウスだって目を覚ましてないんだよね。だから、僕とキミとウルとベオークでいいよ」
「王のともがワシらたった3人ですか? 」
ティールが目が点になり思わず聞き返す。
「今回はあくまでも助っ人だしね。まぁもし、本当に厳しいならそのまま無に還すけど…… 」
ウルイドが無に還すとは言ったものの何か言いずらそうにしている。ティールがあまり見ない王の表情に困惑しながら尋ねる。
「王もしかして、終焉の神の王が終焉させない事を気になさっているのか? 」
「いや~ なんか照れくさくない? 無に還すのが僕の役目なのにさぁ」
「ワシには王の感覚はわかりませんので…… 」
ティールもウルイドが何故照れくさいのかよく分からないので率直に返答する。
「だよね~ だからキミたちだけ着いてきてよ。ほら僕アマテウスの世界だとデイトちゃんたちに見えないかもだし、それにキミたちにも分け与えられなかった僕の力を受け継いだ葵くんのことも気になるしね~ 」
「王の希望であればそうしましょう」
「じゃ準備できたら声かけてね」
「御意」
ウルイドは軽い口調でティールに声をかける。その口調は近所コンビニにでも行くような口調だ。ウルイドは爽やかな笑顔でティールに言葉をつけ加えるように口を開く。
「ティール家族にはちゃんお別れするようにみんなに伝えてよね。キミたちは僕の言葉だと、その辺り雑にしたりするからさ、僕はよくわかんないんだけど、そういうの大切なんでしょ? 」
「王の命令以上に大切な事など…… 」
ティールはウルイドの民を代表する儀礼的言葉で返答するがそれがウルイドに対する嘘なのは明白だ。
「ほらね。僕がその辺の事疎いからあれだけど、もしそれでキミたちを連れてったら、逆にあっちの皆に変な目で見られるじゃん? たぶんね。だからちゃんとお別れしてきてよ。キミたちを僕が守れる保障はないし、そもそも邪神を倒せる保障もないからね」
「王の仰せのままに…… 」
ティールはウルイドに何か言おうとしたが頭を下げてウルイドの部屋を後にした。ウルイドは窓に向き直り、王都の街並みを見下ろし呟く。
「無を好むのは結局、僕だけだもんな~ であれば民たちの行き場所を作ってあげる方が良いのかな? アマテウスの言っていた感覚はこれの事なのかな? 」
ウルイドの存在は、無であることを維持する神であり、形あるものを終わらす事がウルイドの仕事ではない。終焉の神とはウルイド本人が名乗ったわけではないが、ウルイドの能力が他の神々にそう言わせたのだ。ウルイドに形あるものへの執着や情などはないはずだったが、自身の民を生み出したことで、本人でも今までにない感覚を覚えるにであった。
お読みいただきありがとうございます。
次話も引き続きお楽しみいただければ幸いです。
いいね、ブックマーク、評価、感想、レビュー何かひとつでもちょうだいいただければ、励みとなりますのでよろしくお願いいたします。
ぜひ、下の☆印にて評価してただければ幸いです。




